新時代の幕開けに際し、どんなウマい話があるだろうと考えたところ、思い浮かんだのはこの方、世界一のHorse Lover・エリザベス女王。

いつの時代も世情に流されること無く、変わらぬ馬への愛情を体現し続けてきたのです。

女王が初めて馬に乗られたのはわずか3歳のとき。そして、4歳のお誕生日には祖父・ジョージ5世から”First Pony”を贈られ、ペギー(Peggy)と名付けられました。以来、馬への情熱は高まるばかり。

ところが、10歳にして王位の推定相続人となると生活は一変。一家の住居もバッキンガム宮殿へと移り、乗馬のチャンスもすっかり少なくなってしまいました。

それでも、休日ともなれば妹・マーガレット王女と共に乗馬を楽しみ、颯爽と海岸を駈ける姿も残されています。

 

 

そして、女王の馬を語る上で忘れてはならないのがバーミーズ(Burmese)。

1969年に王立カナダ騎馬警察から贈られたこの牝馬は女王の寵愛を受け、18年間に渡りパートナーを務め、女王の誕生日を祝う公式式典(Trooping the Colour)をはじめとした様々な行事で、女王自ら騎乗する姿が残されています。

中でも、世界にその名を轟かせたのが、レーガン大統領との「馬上会談」。1982年、英国を訪れたレーガン大統領をウィンザー城に招いた女王は、乗馬での城内散策を提案されたとか?!

「上流階級の嗜み」を試された?!レーガン大統領は、これを卒なくこなし、この一枚は全世界を賑わせ、バーミーズは「世界一有名な馬」となったのです。

 

 

また、女王は「子育て」にも積極的に馬を採用。忙しい公務の合間をぬって、ウィンザーを訪れては、子どもたちは馬と触れ合い、馬術の習得やホーススポーツに勤しみ、心を育みました。

今でも女王を筆頭に馬好きの揃う英国王室。かつてはチャールズ皇太子も母と共に馬で城内を巡り、懸命に母を手伝い、ポニーに頭絡を着けたアン王女は、後に馬術のイベンティング競技で英国王室初のオリンピアンとなりました。

 

 

エリザベス女王の馬エピソードを辿れば、まだまだ話題は尽きません。

競馬をこよなく愛し、世界有数の馬主としても知られる女王。公務の前には「熟慮の時間」として、競馬新聞に目を通されるのが日課だというのは実しやかな話。300年来続く、ロイヤルアスコットは、今なお毎年6月の第3週目に英国王室主催で開催され、女王自らウィンザー城から馬車で臨場する華やかなパレードは、豊かな馬文化を誇る英国の象徴でもあります。

自国を振り返れば、日本の今上天皇もまた、かつては学習院の馬術部主将を務められたほどの名騎手。世間にはあまり公表されていませんが、実は美智子さまも乗馬を嗜まれ、ご一家揃って打毬の試合をされている姿なども記録されています。

国も文化も違えど、長くいつまでも楽しめるのが馬の醍醐味。

93歳にして今も乗馬を楽しまれているエリザベス女王と同じように、今上天皇がお忙しい公務から解放された新時代にはぜひまた、乗馬を楽しんで頂きたいものです。

 

 

 

 

MILKY KORA

馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。