* Tara iti New Zealand(設計 Tom Doak)

オーストラリア、ニュージーランドを中心とした周辺の島々までを含むパシフィックオーストララシアンとアジア全体を併せたTOP100コースのランキングが発表されました。

2021年度世界TOP100コースランキングではこのエリアから選出された作品はオーストラリア・ニュージーランドからはRoyal Melbourne West Courseを筆頭に計9コース、アジアは日本の広野、川奈、そして韓国のNine Bridgesの3コースのみ、つまりパシフィックアジアだけでTOP100コースの選出を行えば、88もの名コースが改めて紹介されるわけです。

この企画の最大のミッションはそれによりゴルフツーリズムの活性化、ゴルフマーケットの拡大に繋がることです。

それではTOP10から順を追って解説していきましょう。

* Mackenzieの大作 Royal Melbourne West Course

TOP10

1. Royal Melbourne(West) オーストラリア

2. Kingston Heath オーストラリア

3. Tara Iti ニュージーランド

4. Hirono    日本

5. Barnbougle Dunes  オーストラリア

6. Kawana(Fuji) 日本

7. Te Arai(South) ニュージーランド

8. Royal Melbourne (East) オーストラリア

9. Victoria GC オーストラリア

10. New South Wales オーストラリア

オーガスタナショナルの設計者Alister Mackenzieが名手Alex Russellをパートナーに造り上げたRoyal Melbourne GC West, Eastの2コースとNew South Walesが予想通りに堂々のトップ10入り。

更に世界TOP25の常連Kingston Heath GC, そしてクラシック時代の作品では一時世界TOP100コースから落ちていたVictoria GCがMike Claytonの設計チームによるレストレーションで昔の姿に戻り、TOP9位にランクされました。

Victoria GCはRoyal Melbourne, Kingston Heathと同じメルボルン郊外サンドベルト地帯の名門コースとして、1985年から1997年まで世界TOP100コースに君臨していましたが、コースの老化からか、99年からはVictoriaの名はTOP100のリストから消えていました。

しかし2019年Mike Claytonの設計チームによるレストレーションでその評価は急上昇、26年振りの世界TOP100への返り咲きがあるかもしれません。

そこに今世紀に入り名匠Tom Doak設計のTara Iti,とタスマニア島のBarnbougle Duneが登場、共に3位,5位のランクを付け、更に今年開設されたばかりのCoore & CrenshawのTe Arai South Courseが加わり、今回のTOP10コースは形成されました。

TOP11~25

11. Cape Kidnappers ニュージーランド

12. The Club at Nine Bridges 韓国

13. Shanqin Bay 中国

14. South Cape Owners Club 韓国

15. Cape Wickham オーストラリア

16. Barnbougle Lost Farm オーストラリア

17. Paraparaumu Beach オーストラリア

18. Ellerston オーストラリア

19. Tokyo GC 日本

20. Royal Adelaide オーストラリア

21. Naruo 日本

22. Peninsula Kingswood(North) オーストラリア

23. Himalayan ネパール

24. St. Andrews Beach  オーストラリア

25. The National(Moonah) オーストラリア

このクラスではニュージーランドのTom Doakの名作Cape Kidnappersが最初に登場します。

切り出した何本ものクリフ地帯の中、巧みに18ホールをルーティングした彼の才能と業には世界中の専門家たちが驚嘆しました。

更に中国のShanqin Bayを挟むように韓国のNine BridgesとSouth Cape Owners Clubが続きます。Kyle Phillipsの名作South Capeは地形の高低差を活用し、18ホール全てから大海原を望めるとはいえ、ややテラスザホールタイプのレイアウト感もしますが、クラシック設計の戦略性が垣間見れる名ホールが続きます。

世界ランキングでも僅差で100選入りを逃してきましたが、今回改めて世界中の読者にその存在が知られる事でしょう。

* South Cape Owners Club

フォーブスにも名が載るファンダーメンバー達僅か16名の出資で開発された中国のShanqin Bayではありましたが、習近平政府が行なったゴルフ場建設に絡む賄賂、腐敗撲滅政策から他のプライベートクラブ同様に環境に好ましくない等との理由で、海岸線に面した17番ホールのフェアウェイに何百本もの低樹木が植林をされ使用が不可となりました。

クラブ側はテンポラリーなPAR3を設け18ホールの構成を維持しましたが、政府は更にゴルフ場が特定の富裕層の贅沢の場であってはならないとプライベートクラブに対して平日はセミパブリックとして一般にも開放するよう要請しました。これによってShanqin Bayは新オーナーのもとで新しい体制作りが行われます。

2015年ゴルフ場開発で政府関係者に賄賂がばら撒かれたStone Forest G&CCなど107ものコースがまるで見せしめかの様に破壊されていきました。当時その無謀とも思える対策を知らされた欧米のゴルフメディアは、中国のゴルフ場に背を向けることになります。

そして世界TOP100に君臨していたShanqin Bayも2019年にはTOP100から姿を消す結果となりました。その後、東京五輪でのゴルフ競技を機に、中国政府のゴルフ場への考えもだいぶ緩和され、Shanqin Bayも17番ホール全体を内陸部に25~30ヤードずらし、グリーンを再設計し再生への道を歩み始めます。

* 再構築されたShanqin Bay 17番ホール

ネパールのHimalayan GCの23位には驚かれる方もいらっしゃるかも知れませんが、英国陸軍に 30 年間勤務したR.B. Gurang少佐が 1994 年にこのコースを設計しました。 コースをレイアウトするときの主なテーマは、自然に敬意を払い、可能な限りゴルファーにそれを体験させる事でした。川や峡谷の端の音と視覚で感覚します。 峡谷を流れるビジャヤプール川の清流は、ヒマラヤの麓アンナプルナ山脈の雪解け水を峡谷の縁に運びます。 それは最高の「アドベンチャーゴルフ」です。ゴルフシューズよりも登山に適した靴が必要かも知れません。芝の薄いグリーンはほぼサンドグリーンの状態に近いものもありますが、ここにゴルフへの人間のロマン、ノスタルジーを感じます。

*Himalayan GC

TOP26~50

26. Yokohama(West) 日本

27. The National(Gunnamatta) オーストラリア

28. Kasumigaseki (East) 日本

29. Newcastle オーストラリア

30. Lanhai Int’l(Yangtze Dunes) 中国

31. Metropolitan オーストラリア

32. Ono GC 日本

33. Hoiana Shores ベトナム

34. Kauri Cliffs ニュージーランド

35. Abiko 日本

36. Lake Karrinyup オーストラリア

37. Whistling Rock(Temple/Cocoon) 韓国

38. Ayodhya Links タイ

39. Ocean Dunes オーストラリア

40. Osaka 日本

41. Woodlands オーストラリア

42. Mission Hills( Hainan-Blackstone) 中国

43. Kooyonga  オーストラリア

44. Yarra Yarra オーストラリア

45. Nikko CC 日本

46. Peninsula Kingwood(South) オーストラリア

47. Stonehill タイ

48. Commonwealth オーストラリア

49. FLC Quang Binh(Forest Dunes) ベトナム

50. Pine Beach(Pine/Beach) 韓国

* Coore & Crenshawの改造により生まれ変わった横浜CC 西コース

26位の横浜CC西コースを筆頭に、28位にオリムピックコースとなった霞ヶ関東コース、32位に小野、35位に我孫子、40位に大阪、45位に日光と6コースも日本のコースがランクされています。

横浜はCoore & Crenshawが改造を担当した事から専門家からは注目を集めました。霞ヶ関CC東コースの故Logan Fazioによる改造はそれまで東コースのファンだった専門家たちをかなり落胆させる結果となったようです。但し、途中監修に来られた父Tomの伐採をそれ以上行わず、Tree Lineを保ち戦略性に加える指導は霞ヶ関東を救った感はします。

日本からのヒットは大阪GCの40位入選ではないでしょうか。全長僅か6,402ヤードながら大阪湾を望むスロープラインを活かした18ホールのルーティング、設計の妙味は上田治最大の傑作とも言えるでしょう。昨今川田太三氏のアドバイスによる海岸線ホールの一部の伐採もランドスケープを壊さず行われ、完璧に近いものです。

アジア諸国はゴルフコース設計でもPGAツアーのレジェンド達が崇められている為、プロトーナメントを意識した作品が多く、それらは自然の地形のスロープラインを無視し重機をフル稼動させ造られる作品が多いだけに、クラシック思考なコースと比べ設計的にアカデミックな特徴が少なく、評価判断に悩む作品が多いことも事実です。それだけに大阪GCのような戦前からのクラシック作品はアジアで貴重な存在とも言えます。

2003年に世界TOP100コースに初登場したニュージーランドのKauri Cliffsですが、2015年を最後にそのランキングリストから姿を消しました。Kauri Cliffsの質が落ちた事ではなく、それ以上に素晴らしいコースが世界中に誕生した事に他なりません。今回のパシフィックアジアでは34位にランクされていますがもう少し上の評価でも良かったのでは?と感じます。

* 大阪GC 1937年に開設された上田治の大作

* Kauri Cliffs ニュージーランド

TOP 51~75

51. Ballyshear タイ

52. Titirangi ニュージーランド

53. Sentosa(Serapong) シンガポール

54. Kinloch  ニユージーランド

55. FLC Quy Nhon(Ocean-Nicklaus) ベトナム

56. Jack’s Point ニュージーランド

57. BRG DaNang ベトナム

58. Barwon Heads オーストラリア

59. The Bluffs Ho Tram  ベトナム

60. Royal Canberra  オーストラリア

61. Dunes at Shenzhou(East) 中国

62. Grange(West) オーストラリア

63. Mission Hills(Hainan Lava Fields) 中国

64. Lake Malaren(Masters) 中国

65. Jagorawi (Old)  インドネシア

66. Shanghai Links 中国

67. Koga GC 日本

68. Oarai GC 日本

69. Arrowtown ニュージーランド

70. Shimonoseki GC 日本

71. FLC QuanaBinh(Ocean Dunes) ベトナム

72. Myotha National ミャンマー

73. Stone Valley ベトナム

74. Jack Nicklaus GC 韓国

75. The Lakes オーストラリア

ここでの注目は2022年にグランドオープンしたタイのBallyshear Golf Linksでしょう。戦中に消えたニューヨークロングアイランドの幻のリンクス、Lido GCの再現を図ったコースで、Lidoは米国ゴルフ界の父C.B.Macdonaldが後世に伝えたリンクスからのテンプレートホールを18ホールに散りばめたアカデミックな作品です。Ballyshearの名称はMacdonaldが生前住んだロングアイランドの豪邸の名で、それは彼の祖父の故郷スコットランドの村の名でもありました。アジアの中でクラシック設計の定義が学べるコースとして、今後更に注目が集まってくれることを願う次第です。

このクラスではベトナムからThe Bluffs Ho Tramが59位にランクアップされていますが、高低差50mの巨大な砂丘地帯にレイアウトされたこのコースですが、ホールを行って戻ってくる4番, 15番のおかしなルーティングさえなければ世界でもTOP100にランクアップされるだろう逸材のコースです。

* BanRakat Club Ballyshear Golf Links #14 PAR3 “Short”

TOP76~100

76. Amata Spring タイ

77. Victoria Golf & Country Resort スリランカ

78. The National(Old) オーストラリア

79. The Dunes オーストラリア

80. Hokkaido Classic 日本

81. 13 th Beach(Beach) オーストラリア

82. Waverley ニュージーランド

83. Cathedral Lodge オーストラリア

84. Lonsdale Links オーストラリア

85. Kasumigaseki(West) 日本

86. Saujana(Palm)  マレーシア

87. Laguna Lang Co ベトナム

88. Haesley Nine Bridges 韓国

89. Dunes at Shenzhou(West) 中国

90. Blue Canyon(Canyon) タイ

91. Royal Hong Kong(Composite) 香港/中国

92. Glenelg  オーストラリア

93. Port Fairy オーストラリア

94. Nicklaus Club Beijing  中国

95. Royal Queensland  オーストラリア

96. The Australian オーストラリア

97. Anyang CC 韓国

98. Joondalup(Quarry/Dune) オーストラリア

99. Siam CC(Old) タイ

100. Portsea オーストラリア

日本の北海道クラシックが80位と霞ヶ関CC西コースが85位にランクされています。

ここでの注目は84位に入ったオーストラリアのLonsdale Linksでしょう。1922年にポートフィリップス湾の入り口とビクトリア湖に挟まれた僅か43エーカーの土地に7ホールが造られた事に始まり、その周辺の土地を買収し
てはホール数を伸ばしていき、2022年にクラブ創設100年を迎えるにあたり、Ogilvy/Cooking/Meadの設計家チームにコースの大改造を依頼、完成されたのがクラシック設計の定義となるテンプレートホールを集約したコースとして2020年に再オープンされました。地元でも大変な話題を呼び、現在は世界中からコースマニアたちがここを訪れています。

* Lonsdale Links #2 Biarritz Hole オーストラリア

* 北海道クラシック 80位 Tree lineの素晴らしいニクラウスの作品。

TOP100 国別
オーストラリア 39、 日本 15、 中国 10、 ニュージーランド 9、ベトナム 8、韓国 7、タイ 6、ネパール・シンガポール・インドネシア・ミャンマー・スリランカ・マレーシア 各 1

日本から選出された15コース。
4. 広野GC

6. 川奈(富士コース)

19. 東京GC

21. 鳴尾GC

26. 横浜CC(西)

28. 霞ヶ関CC(東)

32. 小野GC

35. 我孫子GC

40. 大阪GC

45. 日光CC

67. 古賀GC

68. 大洗GC

70. 下関GC

80. 北海道クラッシック

85. 霞ヶ関CC(西)

Text by Masa Nishijima

Photo by Masa Nishijima, Gary Lisbon, Joann Dost, A.Kaneko,

Lonsdale Links, David Lee.