数あるホースイベントの中でも、「特別」な馬術大会といえば、アーヘン!

年に一度、ベルギーやオランダと隣接するドイツ・アーヘンの街に、世界中から時を彩る人馬が集結し、最高峰のパフォーマンスを競う国際大会で、土地の名前がそのまま大会の呼称として親しまれています。

正式名称はWorld Equestrian Festival – CHIO Aachen。

CHIOとは、Concours Hippique International Officiel=複数のネーションズカップを含む国際大会を意味し、馬術大国ドイツが世界に誇る、世界一の馬の祭典として、100年以上も続いてきました。

どれほどBIGなイベントかをご紹介すると

●一年に一度の大会期間は10日間。

●競技はジャンピング、ドレッサージュ、イベンティングに加え、ドライビングにヴォルティングの5種目。

●その全てでネーションズカップを実施、中でもジャンピングとドレッサージュは最高レベルの5スター。

●全世界から集まる馬の数は1,000頭超。

●10日間で動員される観客の数は35万人。

●賞金総額€3.9million(約6億2千万円)

●大会運営予算€20million(約32億円)

●報道関係者600人

●世界140ヶ国以上でテレビ放送

さらに、

●2023年のトップレベルスポンサーには、メルセデス・ベンツ、ロレックス、アリアンツ、トルコ航空が名を連ね、

●2023年のオープニングセレモニーに招かれたのはPrincess Royal=アン王女。

ちなみに、アン王女は1971年、イベンティングのヨーロッパ選手権で優勝。

また、1976年にはイギリス代表としてモントリオールオリンピックにも出場し、長年に渡り、FEI(国際馬術連盟)の総裁を務めるなど、世界のセレブリティを代表する馬術家の一人。

などなど、アーヘンを知らずんば馬術家にあらず!と言っても過言ではないほど、アーヘンは特別なのです。

アーヘンの歴史は古く、カール大帝の時代まで遡る・・・と聞けば、少々こじつけのようにも思いますが、当時から馬のレースや騎乗技術を競う催しがこの地で行われていた記録が残っているのだそうです。

時代はずっと下り、近代、アーヘンの礎となったのは、1898年、Laurensberger Rennverein(=ローレンスベルガー・レンフェライン)の設立。この地域の地主や工場所有者、酪農家などが協力し、地域全体の活性化を目指したフェスティバルの開催がきっかけでした。

その後、現在の場所に恒久的な競技施設を建設し、1924年に初めての”アーヘン”を競馬と馬術の併催で実現。この時既に2万人の観客を魅了したとされているのですから、その規模は相当な物だったのでしょう。

アーヘンは瞬く間に周辺諸国へと広がり、3年後には国際競技を実施。1929年に初のネーションズカップを実現させると、初開催から10年余りでヨーロッパ全土から各国を代表する人馬が参戦し、10万人を超える観客を動員する大イベントへと成長しました。

以来、100年。馬のメッカとして世界中の馬乗りたちが憧れ続けてきたアーヘン。第二次世界大戦では敗戦国となったドイツでしたが、僅か2年後にアーヘンを再開。この時既に会場にはアメリカやイギリス、オランダの国旗が掲げられ、正々堂々と熱戦が繰り広げられたことは、ドイツがスポーツとしての馬術を牽引してきたことの象徴でもありました。

また、馬術の競技施設としても他に類を見ない規模を誇るアーヘン。

複合的なスポーツ施設として整備された広大な公園内には、CHIOのために解放される芝生のメインアリーナをはじめ、競技専用アリーナ、ドライビングアリーナ、インドアアリーナ、さらに、クロスカントリーコースも敷地内に有しているので、一度会場を訪れれば、歩いて場内を周り、複数のトップクラスの競技を観ることができます。

加えて、CHIOの開催中は、レストラン、地域の特産物やインテリア、馬具ショップまで300のテントが並び、競技は見ずとも「馬のいる空間」を楽しむ人たちで一日中賑わっています。

もちろん、日本からも熱心な馬術ファンが会場を訪れ、最高峰の人馬の競演を堪能するのです。

余談ですが、サッカーのクラブチーム、アレマニア・アーヘンの本拠地もこのスポーツ施設内にあり、日本人選手が所属していた当時は、日本からのサッカーファンの姿も見かけました。ただ、サッカー場を遥かに凌ぐ規模の馬術競技場など日本では考えられませんから、きっと驚かれたことでしょう。

7月2日に幕を閉じました2023年のアーヘンについては、また別の機会に。

ただ、もう既に2024年のチケット販売は始まっています。

https://www.chioaachen.de/en/

何度も行かれている方は、ぜひ来年も!

そして、馬に少しでも興味があれば、ぜひこの機会に馬術の聖地・アーヘンを訪ねてみてください!

「馬って素晴らしい!」必ずそう思わせてくれる馬の祭典です。

MILKY KORA

馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。