全英オープン特集Royal St. George’s GC Part.2

 

 

 

トーナメント設定

PAR 70、最大7,189ヤード

アウト PAR 35(PAR5 =1, PAR 4=6, PAR3=2)3,620ヤード

イン PAR 35 (PAR5=1, PAR4=6, PAR3=2) 3,569ヤード

* プレーオフは16、17、18番ホールを使用。決着が付かなかった場合は18番を繰り返す。

 

 

オリジナルに復元された名物ヒマラヤバンカー

 

さあ、今年も男子最後のメジャー大会、全英オープンが始まりました。

今回のSandwichのコースでリンクスマニアにとっては二つの衝撃的な箇所を見る事になります。それはまず4番ホール、プロの飛距離ではターゲットラインとなる名物ヒマラヤバンカーの形状が1920年代の姿に復元された事です。

写真上がそのオリジナルで、中の写真はこれまで我々が見てきた枕木を縦にしたバルクヘッドしたヒマラヤバンカーです。

そして下の写真が現在のオリジナル復元をテーマに作成されたヒマラヤです。その大きさは縦の長さ40フィート(深さとご理解下さい)、幅は最大25フィートの巨大なバンカーです

コースに存在するバンカーの大半が所謂ポット型を形状する芝土を積み上げた

ソッドウォールタイプのもので、リンクスでは風雨による侵食を防ぐ為に、バルクヘッド型との2通りの造成方法をとってきました。

 

しかし復元されたこのヒマラヤとその尾根に存在するバンカーは砂面をエッジに向けて上げたサンドフラッシュタイプで、しかも一番手前のバンカーのようにエッジをJaggedさせた形状にマニアたちからは賛否両論の意見が出ているようです。担当したのはここ10年全英開催コースのリノベーションを担当するMackenzie & Ebertの設計チームで、彼らは日本では広野GCのリノベーションを担当した事でも知られています。

前回全英が開催されたRoyal Portrush GCでもまた広野でもこのJaggedしたバンカーエッジのバンカーを登場させていますが、これはクラシック時代、まだ芝の管理もままならない時代に造られたスタイルで、実はあのオーガスタナショナルでさえ完成した当時は芝をエッジに貼り付けJaggedしているかのような感じでした。しかし管理が難しくなるに伴いその補修作業、技術も向上し、現在のシャープな形状へと進化していきます。エッジラインをJagged(ギザギザにする)させる事で自然美を醸し出そうとする作風は今世紀に入りブームともなりましたが、やはり管理上手間が掛かりすぎる為、現在ではあまり取り入れられていません。造成を担当するシェーパーたちの感性にもよりますが、やりすぎは決して褒められたものではありません。

さてもう一つのバンカーは5番のアゲンスト時におけるランデイングエリア左手に広がるバンカーというよりは自然の砂地を露出してみせるヴェストエリアです。これはコース内にティイングエリアの周辺などにも数箇所見られます。

かつてサンドウッチのリンクスランドにはこのような砂地は至るところに存在していました。有名なのは3番ホールに存在していた巨大な砂地サハラでした。

このホールは、芝も生え揃わない巨大な砂丘地帯を超えるブラインドのパー3で、砂丘を越えた打球はランをしてグリーンへ乗っていきました。打球の行方が見えないまさにイマジネーションショットの世界だったのです。この砂丘地帯を当時横断不可能と言われたサハラ砂漠に因んでサハラと名称しました。これが発端となって、当時英国のリンクスコースでは、巨大な砂地が広がるエリアをサハラと名称するようになります。

サンドウィッチのリンクスを昔の姿に少しでも復元したいと思うならサハラを再現して欲しかった気もします。

さて今回の全英はダレンクラークが勝利した2011年度の前大会よりトータルヤーデージで22ヤードほど短くなっています。更にラフのファーストカットエリアをゾーンによっては前回よりも広げています。しかしサンドウッチのリンクスの特徴は高低差僅か10mにも満たない砂丘地帯でありながらそれをフルにレイアウトに活用されていることです。1887年の開設時から変わらないのはその砂丘地帯を縫うようにルーティングされたフェアウェイのうねり、起伏です。それらは深い溝(Swale)を造り出し、そこからのアプローチはグリーンがブラインドになるケースも多々あります。そして最大の特徴はフェアウェイの縦の起伏ライン(Contour)がそのままグリーンの方向に向かっていくホールが多く、グリーンには縦のはっきりしたContourラインが存在し、それを軸に左右前後に横のアンジュレーションが交わります。波のようにうねる横の起伏ラインの場合も縦同様にグリーン面では横のContourラインが2段グリーンを形成しています。戦後フランク・ペニングによって改良されたサンドウッチのリンクスに縦長グリーンが多く存在した理由はフェアウェイの縦と横の起伏ラインを活かした設計になっているからです。縦のラインはフェアウェイセンターに打っても起伏によっては左右に転がりファーストカットにいくケースがあるようにグリーンでもその縦の起伏によって乗ったはずの打球が左右のバンカーに転がり落ちる事もあります。これはこのコースの最大の特徴といえるでしょう。

* 縦(上)と横(下)の起伏ラインをグリーン面にも活かした設計。

* 7番ホール、フェアウェイからグリーンへと縦のContourが何本も流れている。

*13番ホール、7番同様にコーストラインに並行してレイアウトされたホール。

やはり縦の自然のContourを活かしたホールである。

* 起伏を横にしてレイアウトされた6番、オーガスタナショナルを設計したAlister Mackenzieがアイデアを提供したホールとして有名。

*海へ向かう方向にレイアウトされた11番パー3. こちらも自然のContourを横切ってレイアウトされている。このホールは日本でも同じみのC.H. Alisonが基本設計している。

 

サンドウィッチのホール図ですが、キーとなるホールには解説を入れていきたいと思います。

* FWバンカー手前のランディングエリアにキッチンと名称を持つSwaleが存在し、そこからはグリーンはブラインドになる。03年の大会では初日タイガーウッズが右サイドの深いラフに打ち込みロストとなり7打を叩いた。グリーン左サイドは良いが右サイドは外へのスロープが強いので注意。

*グリーン右手前に深い溝があり、ショートするとボールはそこに転がり落ちてしまう。

*開設当時グリーンは今よりももっと左サイドに配置されて、左の連なる起伏部分はサハラの名称を持つ砂地が露出し、グリーンはブラインドになっていた。

*03年の大会まではPAR5に設定されていた。有名なヒマラヤバンカーをキャリーするとエリシアンフィールドと呼ばれるサンドウィッチのリンクスでは珍しいフラットなエリアを攻略ルートのターゲットにする。グリーンは高台にあり、フロント部分は傾斜が強く、特に左サイドは2mの高さのダウンスロープとなり、ショートすればラフに転がり落ちるケースもある。11年大会ではバーディの倍の数のダブルボギーが出た。前半の難関ホールとなる。

*砂丘を越えて海岸線に向かうホール。フェアウェイはセパレートしているが03年の大会ではラフが浅く、強いフォローの風が吹けば、ドライバーを選択したプレーヤーも多かった。ランディングゾーン左の広いサンドエリアは19年に造られたもの。

*Alister Mackenzieがアイデアを提供したとされる浅いダブルプラトーのグリーン。グリーン後部はパンチボウル状の面でブーメランな転がりをする。砂丘に囲まれたその美しさからMaidenの名称を持つ。

 

*砂丘を超えていく為、ランディングエリアはブラインドとなる。グリーンに向かって縦の起伏が連なるだけに、左へのドッグレッグポイントがバーディ、イーグルを獲る為のキーとなる。

 

*内陸に向かいながらFWは砂丘ではっきりと2分割され、絶妙なラインにドッグレッグされている。

40ヤードの縦長グリーンはフロント部分にある縦の厳しいContourがオンした打球をバンカーに転がり落とす事もある。グリーン奥がフラットで風さえなければ前部よりも攻めやすい。

 

 

*公式にはアナウンスされていないがグリーンとサイドバンカーの形状から間違いなくAlister Mackenzieが手を加えたホールと言われている。

* 9番グリーンのMackenzieの特徴を表した箇所。グリーンサイドバンカーとそのエッジの高さで構成されたグリーンの傾斜。

 

*グリーンは砂丘の高台にあり、グリーン手前のスロープと左サイドはバンカーに転がり落ちる危険もある。

*グリーンは中央右サイドから攻めるのがベストで、センターから左はその傾斜からバンカーに流れ落ちる事もある。Alisonが基本設計したホール。

*フェアウェイセンターに強い起伏を持つホール、大きな砂丘を斜めに向かって打つイメージ。仮にセンター起伏を超えると強い勾配からボールは左サイドのラフに転がり落ちる。グリーンは左サイドの傾斜だけを注意。

 

*コーストラインに沿ってレイアウトされた縦のContourが打球のランを生むホール。03年に造られた3つ縦に並ぶバンカーには注意。グリーンは縦のContourによって2分割され、前々大会でタイガーは左サイドバンカーからチップインバーディを決めた。

 

*隣接するPrinces GCとの境界線に沿ってレイアウトされ、右サイドはOBとなる。330ヤード地点にスエズ運河の名称を持つクリークが流れ、その奥には

マウンドの壁がある。11年大会からその壁の高さは低くされたが、それ以前はスエズ手前の2打目地点からグリーンを確認することは出来なかった。グリーンは80年代にドナルド・スティールによって砲台状に床上げされモダンなスタイルになっている。

*左右のバンカーを超えるには300ヤードキャリーが必要。それを超えフェアウェイ左サイドを攻めるとランでかなりの距離が稼げるホール。但し一つ間違えれば深いラフが待ち受けている。

* 7つのバンカーに囲まれたショートの理論で設計されたAlison作のホール。センターはフラットだが右サイドの傾斜はキツく、バンカーに転がり落ちることもある。

 

*フェアウェイは横の起伏が波のように連なり、グリーンへと繋がっている。

11年大会から左のグリーンサイドバンカーは削除され深いHollowを形成している。グリーン左サイドは強い傾斜でそこに転がり落ちる。Alister Mackenzieが設計のスケッチを残したと言われるだけに確かに彼の作品らしい雰囲気を醸し出している。

 

* 11年大会からフェアウェイバンカーは増えたがグリーンサイドバンカーを3つ減らした。ただしかつて幾度かの悲劇を呼んだグリーン左奥のDuncan’s Hollowは健在である。

 

 

過去、14回のThe Openにおける覇者。

The 140th Open in 2011. Daren Clarke
The 132nd Open in 2003. Ben Curtis
The 122nd Open in 1993. Greg Norman
The 114th Open in 1985. Sandy Lyle
The 110th Open in 1981. Bill Rogers
The 78th Open in 1949. Bobby Locke
The 73rd Open in 1938. Reg Whitcombe
The 69th Open in 1934. Henry Cotton
The 63rd Open in 1928. Walter Hagen
The 57th Open in 1922. Walter Hagen
The 51st Open in 1911. Harry Vardon
The 44th Open in 1904. Jack White
The 39th Open in 1899. Harry Vardon
The 34th Open in 1894. JH Taylor

 

 

 

 

Text by Masa Nishijima

Photo Credit by Masa Nishijima, Royal St. George’s, R&A.

The Society of Golf Historian, etc.