谷津田での作業は田んぼ内だけでは収まりません。

周辺の水路や山、斜面の整備も含まれます。

そもそも、谷津田とは何でしょうか?

 

図を見てもらえれば、おわかりの通り、谷津田は多様なミニモザイク環境がたくさん集まって出来ています。

林や森があり、水路やため池、山や草地等々があります。

現在の区画整理された田んぼはコンクリートの畔と水路で仕切られ、生産を第一に考えられていますが、灌漑のない時代は、天水と湧き水に頼った谷津田が主流でした。

そのためにお米を作る=周辺の整備をする必要があり、周囲の住民には密なコミュニティがありました。

すなわちそれが里山でした。

人が手を入れることで、自然がますます多様に豊かになる「Satoyama」は優秀なサスティナブルモデルとして、今や国際語になっています。

一見、カントリークラブとはなんの関係もない話のように見えますが、真のカントリークラブは、ゴルフ場という草地のみならず、周辺の森や池といったミニモザイク環境の集合体であり、周辺住民を巻き込んだコミュニティがあったりと、里山との共通点がたくさんあります。

長い間、人の手が入っていなかったクラシック田んぼの周辺も例にもれず荒れていました。

水路には、折れた竹や枝が複雑に倒れこんでおり、落ち葉が水をせき止め、田んぼ際や山の斜面は篠竹や雑草でびっしりと覆われていました。

東京クラシック田んぼの西側は、和泉神社の山の斜面ですが、そこも杉林と竹林が混雑し、蔦が絡み合った暗い場所でした。

水路の朽ち枝葉を拾って燃やし、斜面の草木を刈りました。

刈った竹木はチッパーでチップにします。

それは、もつれた糸をほぐすような地道で気の遠くなる作業です。

作業をしていると、時折、散歩に通りかかった地元の人達が話しかけてくれました。

ほとんどがお年寄りです。

やな刈り(斜面の草刈り)をしている時、地主のおじいさんが来て、ニコニコしながら話しかけてきました。

「ありがとよぉ。きれいにしてくれて。おれはもうできないからよう。」

周りがきれいになっていくと、散歩に来て、懐かしそうに昔話をするお年寄りもいました。

「その先の川底から、ほれ、湧き水がいつもわいてるよ~。」

「昔は、川から魚も登ってきたよ。ウナギとかよく弁当に入ってたなぁ。」

「やつめうなぎとかな。沢蟹やモクズガニもいたよ~。」

「でももう、川とつながっていないから、魚はあがってこれないなぁ…。」

どこまで昔の風景を戻せるかはわかりません。

もっと素敵な風景を取り戻せるかもしれません。

東京クラシッククラブが真のカントリークラブとして、周辺の住民と手を取って、里山の再生をしていけたら素敵だと思います。

そして、その日本の原風景が何にも勝る宝として、心の豊かさにもつながると信じています。