東京クラシッククラブには、クラブを象徴するような動物が2種類います。

一つはロゴマークにもなっている馬。

もう一つは、森にすむオオタカです。

馬は、人とのパートナーシップやロイヤリティを表しているとすれば、

オオタカは、野生や自由を表しているように思えます。

そして、両者は共に気高さの象徴です。

今回も、詩人でありネイチャーガイドの大島健夫氏がオオタカについて熱く語ってくれました。

 

オオタカ      

学名 Accipiter gentilis

オオタカは、里山の生態系の頂点に君臨する生き物です。

鋭い嘴と強力な脚の爪で、ハト、キジ、カモの仲間などの鳥類、リスやノウサギなどの哺乳類を捕食して暮らしています。時にはサギの仲間やカラスのような大きな鳥さえ獲物にしてしまうのです。そして成長したオオタカを捕えて食べる生き物は、少なくとも千葉県には存在しません。オオタカが高い木の梢や鉄塔などから地上を見張るその姿は、まさしく食物連鎖の最上位から、他の全ての生き物を見下ろす姿でもあるのです。

かつて、開発や、剥製・飼育目的の乱獲により、オオタカは絶滅の危機に瀕した時代がありました。

1993年に「種の保存法」が施行されると、オオタカは「国内希少野生動植物種」に指定され、保護されるようになりました(現在は解除)。食物連鎖の頂点に立つオオタカは、生きていく上でたくさんの小動物を捕食し続けなければなりません。つまり、オオタカを守るためには、オオタカの餌となるような動物全てを守らなければならないのです。オオタカの餌となるような動物全てを守るということは、されらの動物全てが健全に生きていけるような環境を整え、守り続けなければならないということです。

「国内希少野生動植物種」への指定が解除されたことからも分かる通り、近年、各地でオオタカの個体数は回復しつつあります。しかし、その未来は決して安泰ではありません。なぜなら、今後は第一次産業従事者人口の減少に伴い、これまでより一層、里山の管理不足の問題が重くのしかかってくるからです。

人の手が入らなくなり、枝打ちや下刈りがされなくなってジャングルのようになった林では、オオタカは獲物を見つけることができません。植物が繁茂して藪となった耕作放棄地では、狩りをすることができません。そして、そのような荒れ果てた里山では、当然のように、オオタカの餌となる動物たちも暮らしの場を失ってゆきます。

農耕地、薪炭林、水場、草原。人の手が入ることで多種多様な環境が何千年にもわたって維持されてきた里山とは、この国に生きてきた人々の叡智と農の営み、そこに生きる生き物のライフサイクルが幸福な形で融合した、世界に誇ることのできる生態系モデルです。

東京クラシックのフィールドに、オオタカが暮らしていること。何年にもわたって生息し続けていること。それは、かつての豊かな里山と同じように、オオタカを養うことのできる環境がそこにあることを意味しています。

よく手入れされた明るい林とグリーンは、昔そこにあった薪炭林と草原、あるいは薪炭林と農耕地の組み合わせのように、オオタカの狩りの舞台となっています。そこには同時に、オオタカの餌となる動物たち、そしてその餌となる昆虫たちの命が輝いています。

里山の衰退、そこに形成された生態系の衰退をどのように食い止めるか。それは全国的な問題です。環境に配慮したゴルフ場というフォーマットが、もしも新たな時代の里山の一つの形態となれるとしたら、そこには希望を感じずにはいられません。この国が経済成長の道を走る中、ゴルフ場建設のような開発が圧迫し、削り取ってきた里山の生態系を、今後、まさにそのゴルフ場が引き継ぎ、守ってゆくことができるのではないかという希望。

東京クラシックのオオタカは、その希望の象徴です。

写真:オオタカの巣

タイトル画像:上田隆氏撮影