長かった灰色の梅雨空も終わりを告げ、今度は一転して夏空が広がっています。
豊かな水の恵みを大地から、天からは太陽の恵みをいっぱい受けて、稲はすくすくと成長しています。

日本の里山は、海外でも”Satoyama”と国際語として通用します。
破壊することなく、自然と人間の営みが見事に共生しているモデルだからです。

日本の里山、田んぼに大きく依存している生きものもたくさんいます。
その代表が赤トンボです。
赤トンボの仲間をはじめ、多くの種類のトンボは、田んぼで生まれ、田んぼで育ちます。
もし日本に田んぼがなかったら、日本のトンボの種類は半分以下になってしまうでしょう。

田んぼは、お米という「食料も生産できるビオトープ」として、多種多様な生き物を育てます。
今回も、泉地区で生まれ育ち、詩人・ネイチャーガイドでもある大島健夫氏に、田んぼの生き物についてお話ししてもらいました。

 

コオイムシ

コオイムシ
学名 Appasus japonicus
タガメをそのまま小さくしたような姿をしたコオイムシは、肉食性の水生カメムシです。鎌のような前脚で獲物をとらえ、尖った口を突き刺して獲物の体内に消化液を送り込み、中身を溶かして吸い取るという恐ろしい生態を持っています。
名前の「コオイムシ」というのは、漢字で書くと「子負虫」となります。この虫の場合、子を背負うのは雄の方で、雌が30個から40個ほどの卵を雄の背中に産みつけ、雄はそれを背負ったまま、孵化するまで守るという生態を持っているのですが、これは、雄が約一か月の間、飛べないことを意味しているのです。
コオイムシは、農薬などの汚染に弱く、全国的に減少しており、環境省のレッドリストにも「NT(準絶滅危惧)」として記載されています。千葉市内でも、その姿を見ることのできる田んぼは貴重な存在となっています。

 

ハグロトンボ
 学名 Atrocalopteryx atrata
ハグロトンボは、平地から低山地の植物の多い水路や河川で発生するトンボです。成虫は初夏から梅雨の季節以降に姿を現す、夏の水辺のトンボです。雌は漆黒の体をしており、雄は胴体に青緑色の光沢があります。
このハグロトンボ、近づくのは比較的に簡単なのですが、いざカメラを目前まで近づくと、「ふわあっ」と飛びます。トンボの仲間はわりとみんな「ギュイーン」という飛び方ですが、ハグロトンボは昔のプロペラ機が離陸するような、瞬発力を感じさせない飛び方です。私はこの「ふわあっ」という感じが好きで、その時の前翅と後翅を互い違いにゆっくり動かしたりしている様子を見ると、何だかホッとします。
地方により、ハグロトンボは「神様トンボ」と呼ばれることがあります。昔の人たちはこの黒い姿に、どこか常ならぬものを見ていたのかもしれません。

 

この調子でいくと、稲刈りは、恐らくは9月末か10月になるでしょうか。

お米の成長のみならず、そこに住む住民との対面も楽しみになさってください。