「トウモロコシ大丈夫?倒れてない?虫にやられてない?」
自らを百姓と称し、カントリージェントルマンの代名詞とも言える白洲次郎氏がこう言ったかどうかは定かではない。
けれども、携帯電話の向こう側から聞こえるM氏の不安げな声は本物だ。
花の都大東京で、何億ものビジネスを動かす彼の弱り切った顔を想像して、私は思わず微笑んだ。
ギラギラと照りつける真夏の太陽。
何もかも焼き尽くす太陽の光をエネルギーに変えて、太陽そのもののように黄色く、今にも弾けそうなトウモロコシは、いきいきと実を結ぶ。
葉から蒸散して、土中の水を浸透圧により吸い上げ、自らを冷却し続けて身を守る。

高齢化による農業者の不足と、それに伴う休耕地の増加。
イノシシや鹿、キョンなどの野生動物による食害。
言わずと知れた低賃金・重労働。
それにも関わらず、新規就農希望者、そこまではいかなくとも、家庭菜園をやってみたいという人達は、あとをたたない。
彼らのほとんどが、どうせやるなら、オーガニックでやろうと思っている。

オーガニックとは何だろう?

オーガニックの定義はいろいろあって、物質では有機的で炭素を含むもの、農作物では無農薬・無化学肥料栽培という事となっている。
語源は「内臓」を意味するorganやoriginが語源という人もいるが定かではない。
Organicの認証は世界中にあり、有機JASという日本の認証も作られた。
今でこそ、オーガニックといえば、高級で難しいものというイメージがついてしまっているが、もともと産業革命前は、化学肥料も農薬もなかった。
化学肥料、例えば硫化アンモニウム等のアンモニア成分が蒸散して虫を呼び、それらを殺す為に殺虫剤が使われるようになった…という話を地元の農家のおじさんに聞いたことがある。

organic

冷たく暗い真空の宇宙に浮かぶちっぽけなオアシス「地球」。
宇宙のガスが何億年もかけて固まり、真っ赤に燃える熱い土の塊ができた。
やがて土が冷え、蒸気が雨になり、海ができた。
太陽の光から、緑が生まれ、動くものが生まれた。
全ての生命は、等しく宇宙のちりに、太陽が命を吹き込んでつくられた。
全て同じ元素からつくられていて、ただ、配列が違うだけ。
物質は循環し、その摂理を取り入れたのがオーガニックの考え方。

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東京クラシックでのクラインガルテン(貸し農園)も、もちろんオーガニック。

オーガニックとは、有機的な人のつながりであるとも言える。
太陽の下で、家族全員、何の心配もなく、土の上に腰を下ろし、もぎたてのキュウリやトマトをかじる。
とれ過ぎて食べきれない作物は、ご近所におすそ分けしたり、日曜日の朝、マルシェに出店してみたり。
畑で顔を合わせれば、農業談議に花が咲く。
普段、着飾った紳士・淑女も泥にまみれて汗をかく。
笑顔と青空、生のままでおいしい自然の恵み。

自らの手で土と向き合い、季節の風を感じながら、信頼できる食べ物を育て、しかるべき時・場所に備える。

それこそが真のカントリー・ジェントルマン/レディの集まるクラブである!

…と私は思うのです。

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12552612_10153824985227103_1403910558415761035_n-320x320三成 拓也

関西外国語大学を中退後、オーストラリアに渡り、Permaculture、牧場の馬文化に出会う。
20代前半、アフガン、カンボジア等の紛争地帯をはじめ、フリージャーナリストとしてアジアを巡る。
沖縄で乗馬クラブに住み込み勤務。沖縄と米軍基地のインストラクターに本格的な乗馬を教わる。
ニュージーランドでWwoof(Willing worker of Organic Farm)で有機農家をまわるかたわら、乗馬トレッキング・ガイドをする。野生馬を捕らえての調教を手伝う。
結婚後、建築・土木の現場監督、有機酪農牧場での勤めを経ながら、アフリカ・ウガンダで、天理大学のプロジェクトの一環でバイオガス・トイレを建築。
千葉県御宿町で、廃牛舎をリノベーションして、直売所、カフェ・バー、ステージ等のイベント・スペースを立ち上げ、運営する。
現在、東京クラシックのアクティビティ部門を担当。