「あ〜、疲れた〜」
と言わんばかりに、大あくび。

けれども実はこれ、顎のストレッチなのだそうです。

頭蓋骨の構造上、馬の呼吸器は鼻。
馬は口は呼吸しないというのが基本です。

一番の理由は誤嚥を防ぐこと。
馬は鼻と口の奥に二つの蓋(弁)のような物があり、鼻から取り込んだ空気を肺へと送るためと、口から入れた食物が鼻等へ入らないようにするために、道筋を明確に区別しています。
人はこの二つの蓋が離れた位置にあり、時に食べ物が気管に入り、苦しい思いをすることが起こってしまうのです。

中には「はぁ〜」と、馬がため息をついている姿をご覧になった方もおられるかもしれません。けれども、馬がどれほど口を大きく開け閉めしても、実際に通る空気の量はごくわずか。いわゆる「呼吸」として、酸素を体内に取り組むには至らないのです。

さらに、馬は犬のように舌を出し「ハァハァハァ」と体温を調節したりもしません。
そして、この特性は、またもや人にとって好都合でした。
人は馬にハミを噛ませ、より高度な制御を可能にしています。
もし、馬が口を開けて呼吸をしていれば、口に含んだハミが安定せず、人と馬の歴史すらも変わっていたと言っても過言ではないでしょう。


最後にもう一つ、解剖学的には、顔が長く鼻が大きい馬ほど呼吸系路広く、空気がスムーズに流れるのだそうです。
これは、速く長く走る馬にとって確実に有利なはず。
次の競馬の機会には、馬の鼻に注目して勝負するのも一興かもしれません。

 

 

 

MILKY KORA

馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。