9ホールコースとPAR3コースの価値。

※The Hills GC The Farm 9

ゴルフ先進国におけるゴルフ人口の減少化を止める方法として様々な事が思考されています。例えば英国ではR&Aが女性ゴルファーを増やす活動を積極的に行い、米国ではキッズゴルファー達をいかに飽きさすことなく、次のステップに進めさせるかがUSGAのテーマの一つともなっています。南半球の豪州では季節が北半球とは逆になる為、昔からプロのトーナメントは限られたシーズンに集中し、自国のツアープロたちの多くは戦いの場を海外に求めていましたが、決してゴルフビジネスが停滞しているわけではなく、人口の減少も北半球ほどではありません。 しかしどの名門もキッズプログラムを持ち、スクールにその場を提供しています。 ニュージーランドの宝石商として世界にその名が知られるマイケル・ヒルズは故郷クィーンズタウンの郊外、アロータウンの美しい丘陵地帯に自らのプライベートクラブを建設、インターナショナルメンバーを除いたメンバー数も僅か200名に設定し、設立から10年をかけて家族が三世代でゴルフを楽しむプライベートな環境を誕生させました。それが今年ニュージーランドオープンを開催したメインの18ホールとは別に造られた9ホールのパー3コース「The Farm Course」です。ファームとはユニークな名称ですが、けして農場の中にあるコースではなく、次世代のゴルファーを作り出す目的でこの名称が付けられました。 設計はConfidential Guideの共著でもあるDarius Oliverです。 以下がホールのヤーデージです。(注、ニュージーランドはメートル標示です。)

#1 200m〜20m

#2 175m〜80m

#3 165m〜70m

#4 200m〜70m

#5 120m〜75m

#6 140m〜70m

#7 120m〜20m

#8 180m〜20m

#9 180m〜70m

ティーインググランドはティーマークは置かれど、最大距離から最小距離まで、この間であればどこからでも自身の技術、練習に合わせて打って良い、つまり1ショットのPAR3ホールでもあり、ピッチ&パットのホールの要素も兼ね備えた9ホールコースになっています。例えば1番は200~20mと標示されていますが、自身が120m, 50mから打ちたければそこから楽しまれても構いません。ここにゴルフを親子三世代で楽しむコンセプトがあるわけです。

※6番はティからグリーン面がブラインドとなる。傾斜を活用して打球をセンター付近に転がすハーフパイプグリーン。 スノーボードやサーフィンで使われるハーフパイプの用語は、今やゴルフにも活用されている。

 

そしてこのThe Farm Courseの素晴らしい点は、世界の名ホールの戦略性、リンクスからクラシック時代に伝えられた名ホールの攻略レシピをアカデミックに伝えていることです。そして皆様方に是非理解してほしいのは、ミスショットのペナルになるバンカーが存在しないことです。このコースの目的はミスへのペナルを代償とせず、ショートゲームの妙味、リカバリーの許容範囲を広く考えていることです。子供たちも遊びながらにして、名コースには必ずとしてあるテンプレートなクラシックホールの攻略理論を学んでいきます。世界中のコースマニアたちはThe Hills GCのメンバー家族を羨ましく思うでしょう。そして子供達が飽きない、退屈しない時間で終えられる9ホールの構成であることも素晴らしい。次代を担うキッズゴルファーへのカリキュラムは完璧に整っています。

※7番ホールは名門メリオンGC9番PAR3が伝えたクリークとグリーンコンプレックスの一体化した戦略性をここで 伝えています。上の写真からはティーインググランドの長さがお分かりになるでしょう。

 

Ballyneal GCの第二コース、マリガンコース( Mulligan Course)が伝えるもの。

コロラドとネブラスカの州境に位置するバリーニールGC(Ballyneal)は2006年に開設され、翌年のコースランキングでは世界TOP82位に登場し、以来その地位を保ち続けている名コースです。元々第二コース建設の計画はあったのですが、リーマンショックなどの影響からそれは打ち切られ、一昨年メンバーの有識者たちが資金を出し合い、アカデミックな12ホールのパー3コースが誕生しました。設計はメインコース同様にTom Doakが担当しています。

12ホールの構成は65ヤードから190ヤードまでのパー3で、PAR36, トータルヤーデージは1490ヤード。メインコース同様にティーマークはなく、自身がその日定められた範囲の箇所にティーアップするオールドリンクスの時代の光景を再現しています。

マリガンコースと名称されたのは二つの意味があります。バリーニールが開設された当時、最初のキャディとして登録され、そのヤーデージの正確さから歩くGPS人間とまで評されたチャーリー・マリガン。彼はすぐに若手キャディを育てる役目も担当し、キャディマスターとなります。しかし2016年に71歳で他界、クラブコミッティーはこのパー3コースに彼の名を刻みました。 またもう一つの理由は、皆様もご存知の打ち直しのマリガンからです。あらゆる所からショットをトライし楽しむそんな意味も込められています。 GMのデーブ・ヘンズリー氏は「メインの18ホールを終えて、様々な反省ポイントをマリガンの12ホールで修正する。メンバーにとってそれがバリーニールでの1日のルーティンになっているようです。」と語る。

 

※バリーニールGC メインコースのスコアカード。これを初めて見た人は誰もが目を疑う。

※セントアンドリューズ・オールドコースのグランドレベルグリーンをテーマにしたTom Doakのグリーン。

※マリガンコースには親子連れのメンバーは数多く見かける。

 

パインハーストリゾートのピッチ&パット(Pitch & Putt)コース。

パインハーストリゾート(Pinehurst Resort)は全米オープンも開催された#2コースに隣接する#4コースの改造に踏み切った際、10エーカー分の用地にキッズゴルファー育成をテーマにしたピッチ&パットのショートコースを造成しました。設計は#4コースの改造を担当したGil Hanseです。コース名のThe Cradleは子供にはゆりかご、大人にはゴルフゲームの始まり、発祥を意味するものです。 ここでコース用語について説明しましょう。

Par3コース、ショートコース、ピッチ&パットの使い分けです。

まずピッチ&パットは、The Cradleのヤーデージをご覧になってお分かりのように、大人がウェッジとパターでショートゲームを楽しめるものを指します。 それ以上の距離、例えば150~200ヤードのホールがあれば、それらはPAR3コースと言います。スコアカードにショートコースと表示されておりますが、米国では6~12ホール内のピッチ&パットの距離にあるものを一般的にショートコースと呼びますが、これが英国になりますと米国でいうPAR3コースもショートコースと呼ぶ対象となります。米国ではキッズプログラムのスタートはパットから始まり、その後、バンカーを含まないグリーン周りのゲームから教えます。パインハーストではThe Cradleのグリーンフィは$50ですが、17才以下の子供たちは無料となっています。

日本でも300ヤードドライブのパワーゴルフばかりが注目されますが、ゴルフの基本はこのThe Cradleのコンセプトにあるピッチ&パットの楽しさ、ショートゲームの奥深さを学ぶことではないでしょうか。ゴルフはリカバリーのゲームです。 日本のゴルフ場でもこれらの開発はできるはずです。 例えば芝のドライビングレンジがあるならば、打席からターゲットにしている幾つかのグリーンを活用して1ループのピッチ&パットのコース造りは可能なはずです。 大半のゴルフ場のドライビングレンジは1日中使用されていません。全ての組みがスタートした後の昼時の2~3時間くらいは空いているはずです。その広大な土地を活用しない手はないはずです。

 

※日本でもトップクラスの東京クラシックのドライビングレンジを見て、ピッチ&パットを楽しみたいと思われる方も多いはず。

Text by Masa Nishijima

Photo Credit by Darius Oliver, The Hills GC, Ballyneal GC, Pinehurst Resort, Jim Colton, Ella June, Tokyo Classic Club, Masa Nishijima