連載 GOLF Atmosphere No.124 / 欧州版TOP100 Golf Courses of the World と全英オープン特集 2025年度ワールドランキングを発表。
2003年、TOP100 Golf Courses of the British Islesの著者として知られる英国人コースコメンテーターKeith Baxter氏を発起人に、17名のコース専門家たちが集いスタートした英国発信のWe版TOP100 of the World(世界TOP100コース)のランキングサイトです。当時世界TOP100コースランキングの元祖たるGOLF Magazineの親会社Time Wanerグループのスポンサーの関係から小生も発足時のランキングの査定法などアドバイズする傍ら、インターナショナルコンサルタントとしてKeith Baxter氏が勇退される2017年までお手伝いをさせて頂きましたが、Magazineの親会社が8 AMグループになった事から彼らのアドバイザー役は終え、立場上、距離を置くようになりました。しかしながら評議委員達も増え、レビュー記事を数多く投票する一般のコースマニア達にも投票権を与えるなどし進化していく彼らから届く世界コースランキング及び、各国、各地域別のコースランキングのアナウンスには常に注目は致しております。
今年も彼らの世界TOP100コースがアナウンスされましたのでお伝え致します。
本年度のコースランキングは以下の図に記されておりますが、ランキングを表に記す時、米国とは異なり欧州版は100~1の順で紹介されていますのでそこは注意してご覧下さい。
注目はMagazine, Digestのコースランキングの本山が揺るぎなきナンバー1コースにランクしているPine Valley GCがここでは2位に甘んじ、トップにはCypress Pointがランクアップしています。又、大胆な評価と感じたのは日本の広野が何と14位にランクアップし、16位のAugusta Nationalよりも高い評価を受けている事です。
それではTOP10から解説していきましょう。
1.Cypress Point USA
2.Pine Valley USA
3.Royal County Down Ireland
4.Shinnecock Hills USA
5.National Golf Links of America USA
6.Royal Melbourne West AUS
7.Andrews Old Scots
8.Oakmont USA
9.Royal Portrush Dunluce Ireland
10.Muirfield Scots
Magazineと比較して大きく異なる点は、Royal County Downに続き、本年The Openが開催される同じ北アイルランドのRoyal PortrushがMuirfiledよりも上の9位にランクアップされている事です。Magazineでは9位のAugusta Nationalの平均スコア79.34に対し、Royal Portrushは16位の70.66とスコアで9ポイント近くの差があります。ちなみに彼らのランキングサイトではAugusta Nationalのランクはトップ10にはなく、16位です。
Augusta Nationalはメンバーの同伴なくしてプレーする事が出来ませんし、メンバーの大半はジョージア州には在住していない事から、マスターズ開催時以外は、コースを視察する機会に恵まれない事もAugustaの評価を下げている要因かも知れません。
次にTOP11-25位を見てみましょう。
11.Sand Hills USA
12.Trump Turnberry Ailsa Scots
13.Merion East USA
14.Hirono Japan
15.Royal Dornoch Championship Scots
16.Augusta National USA
17.Kingston Heath AUS
18.Los Angels North USA
19.Royal St. George’s England
20.Fishers Island USA
21.Tara Iti NZE
22.Sunningdale Old England
23.Friar’s Head USA
24.Chicago USA
25.Barnbougle Dunes AUS
ここはMagazineとほぼ同じ評価と言えるでしょう。ただRoyal St. George’sの評価が非常に高く、欧州発信のランキングでは英国のMackenzie & Ebertのチームによるリノベーションが高く評価されているようです。MagazineではRoyal St.George’sの名物4番のヒマラヤバンカーの枕木を外し、戦前の開設時当時の姿に復元した事がむしろ評価を落としていました。
次にTOP26-50を見てみましょう。
26.Pacific Dunes USA
27.Pebble Beach USA
28.Prairie Dunes USA
29.Ballybunion Old Ireland
30.Riviera USA
31.Crystal Downs USA
32.Lahinch Old USA
33.Winged Foot West USA
34.Carnoustie Championship Scots
35.Shanqin Bay China
36.California GC of SFO USA
37.Patrick’s Links Ireland
38.Old Town Club USA
39.San Francisco USA
40.Somerset Hills USA
41.Sunningdale New England
42.North Berwick West Scots
43.Kingsbarns Scots
44.Ardfin Scots
45.Morfontaine France
46.Oakland Hills South USA
47.Cape Wickham AUS
48.Camargo USA
49.Enodoc GC Church England
50.Santapazienza Brazil
このTOP50までのランクで驚くのは、かつてはTOP10にあったPebble Beachが前回の16位から27位にランクダウンしている事です。彼らのその評価理由は分かりませんが、Magazineでは前回95位とTOP100に返り咲いた中国のShanqin Bay, 前回TOP100選から落ちたCape Wickhamが47位と好評価を受けています。面白いのは49位のイングランドのSt.Enodoc GC Churchコースと50位にランクアップされたブラジルのSantapazienzaです。MagazineではどちらもノミネートクラスではありますがTOP100には入っておりません。
次にTOP51-75をみてみましょう。
51.Shoreacres USA
52.Swinley Forest Engalnd
53.CapeRock Ranch USA
54.Castle Stuart Scots
55.Seminole USA
56.Utrechtse GC De Pan Netherlands
57.Pinehurst #2 USA
58.Bethpage Black USA
59.Oak Hill East USA
60.The Lido Sand Valley USA
61.Royal Lytham & St.Annes England
62.Maidstone USA
63.South Cape Owners Club Korea
64.George’s G&CC Canada
65.Royal Porthcawl Wales
66.Sleepy Hollow USA
67.Myopia Hunt Club USA
68.New South Wales AUS
69.Kawana Fuji Japan
70.Cruden Bay Scots
71.Eastward Ho! USA
72.Ganton England
73.Fairmont Jasper Park Lodge Canada
74.Portmarnock Championship Ireland
75.Garden City USA
このクラスはTOP50にはなれないが次点として高く評価する作品である事をパネリスト達は深く認識しなくてはなりません。つまりTOP50とこのクラスにはランキングのボーダーラインがひかれなければならない、それだけの価値の違いがあるはずです。例えばMagazineではTOP50位内の常連であるフランスのMorfontaine, 米国のSeminole, Shoreacresの3つの名門コースがTOP50から落ち、このクラスにある事は様々な意見を生むことでしょう。逆に前回Magazineではたった一票の評価により落選したと噂されたオランダのUtrechtse GC De Panが56位と高く評価されています。このコースはTOP50-100位までのカテゴリーを正しく知る意味でも大変重要な要素を設計の中に秘めている作品です。日本では広野の高評価とは逆に川奈が69位と何と23もランクダウンしています。彼らは川奈を大変高く評価しているグループだっただけに、その理由を聞けば、意味のない箇所での伐採によるランドスケープのダウン、あとは五人乗り乗用カートを走らす為のカートパスの設置だそうです。この意見は的確なポイントをついていると感じます。今年11月にMagazineでも世界TOP100をアナウンスしますが、多分川奈の評価はここ同様に落ちるのでは?と予測されます。
76.Ballyneal USA
77.Trump International Scotland Old Scots
78.Bandon Trails USA
79.Bandon Dunes USA
80.Lofonten Links Norway
81.Inverness USA
82.Royal Birkdale England
83.Rock Creek Cattle Company USA
84.Cabot Cliffs Canada
85.George’s Hill Red & Blue England
86.Haagsche Royal Hague Netherlands
87.Whistling Straits Straits USA
88.Royal Aberdeen Balgownie Scots
89.Andrews Beach USA
90.Royal Cinque Ports England
91.Paraparaumu Beach NZE
92.Te Arai North NZE
93.Prestwick Scots
94.Peachtree USA
95.Naruo Japan
96.Yas Links UAE
97.Te Arai South NZE
98.Cape Kidnappers NZE
99.Yangtze Dunes (Lanhai International) China
100.Valderrama Spain
彼らのランキングをトータルで拝見し、カナダの作品の評価がMagazineのそれとは異なることです。MagazineではCabot Cliffs, Cabot Links, St.George’s G&CC, Highland Linksの順で評価されていますが、ここではトップにSt.George’sが64位で入り、次に73位にJasper Park Lodge, Cabot Cliffsは84位に甘んじています。
ランキングはパネリスト達のトータルアベレージですから様々な意見が行き交うでしょうが、いずれにせよ、どちらも世界のトップクラスのコースである事には間違いありません。
併せて昨年暮れに発表されたアジアTOP100コースランキングもご紹介しましょう。北海道クラシック36位、東京クラシックが50位にランクアップされています。注目すべき点は、TOP11までのランキング表に日本からは6コースが入選してますが、かつてはアジアの2位だった川奈が、中国のShanqin Bay, 韓国のSouth Cape Owners Clubに抜かれ4位になっている事。かつてLanhai Internationalのニクラウスの作品が豪州のマイク・クレイトンの設計チームにより大改造され、なんと6位とサプライズのTOP10入り。我孫子GC、横浜CC西コースがついに東京GCを抜いてその上にランクされている点、MagazineではTOP100の常連であるNine Bridgesが100選どころかアジアではTOP10位までの評価であることが注目されています。
以下がアジアのTOP100コースランキングになります。日本から25コースが入選を果たしたのは、アジアのゴルフ先進国としての面目を保った感も致しますが、驚くのはゴルフ場開発ブームが起きたばかりのベトナムから何と10コースが入っている事です。
1.Hirono Japan
2.Shanqin Bay China
3.South Cape Owners Club Korea
4.Kawana Fuji Japan
5.Naruo Japan
6.Yangtze Dunes China
7.Abiko Japan
8.Yokohama West Japan
9.Tokyo GC Japan
10.Nine Bridges Korea
11.The Bluffs Grand Ho Tram Vietnam
12.Ayodhya Links Thailand
13.Hoiana Shores Vietnam
14.Ono Japan
15.Kasumigaseki East Japan
16.Sentosa Serapong Singapore
17.KN Links Cam Ranh Vietnam
18.Mission Hills Blackstone China
19.Kuala Lumpur G&CC West Malaysia
20.Dunes at Shenzhou Penninsula East China
21.Spring City Lake China
22.Oarai Japan
23.Anyang CC Korea
24.Koga Japan
25.Sheshan International China
26.Spring City Mountain China
27.Jack Nicklaus GC Korea
28.Nikko Japan
29.DaNang GC Vietnam
30.Taman Dayu Indonesia
31.Woo Jeong Hills Korea
32.Laguna Lang Co Vietnam
33.BaNa Hills Vietnam
34.Ryugasaki Japan
35.Sky Lake Lake Vietnam
36.Hokkaido Classic Japan
37.FLC Quy Nhon Mountain Vietnam
38.Fujizakura Japan
39.Sentosa New Tanjong Singapore
40.Ria Bintan Ocean Indonesia
41.Jockey Club North Hong Kong
42.Damai Indah Bumi Serpong Damai Indonesia
43.FLC Quy Nhon Ocean Vietnam
44.Dunes at Shenzhou Peninsula West China
45.Shimonoseki Japan
46.The Country Club Philippines Philippines
47.Wellington Griffin & Wyvern Korea
48.Jian Lake Blue Bay China
49.Whistling Rock Temple&Cocoon Korea
50.Tokyo Classic Japan
51.Shanghai Links G&CC China
52.Royal Jakarta West&South Indonesia
53.Takanodai Japan
54.Elena Makiling& Banahaw Philippines
55.Himalayan Nepal
56.Jade Palace West&East Korea
57.BRG Kings Island Kings Vietnam
58.Kasumigaseki West Japan
59.Pondok Indah Indonesia
60.Saujana Palm Malaysia
61.Gokarna Forest Nepal
62.Anvaya Cove Philippines
63.Amata Spring Thailand
64.Weihai Point China
65.Alpine Thailand
66.Rancamaya G&CC Indonesia
67.Katsura Japan
68.The Mines Malaysia
69.Haesley Nine Bridges Korea
70.Dongzhuang Beach Linksland China
71.Karuizawa Japan
72.Pine Beach Pine&Beach Korea
73.Nasu Japan
74.Trinity Club Korea
75.The Shee Kingfisher&Egret Taiwan
76.Empire Brunei
77.DLF G&CC Gary Player India
78.Hakone Japan
79.La Vie est Belle Old Korea
80.Siam CC Old Thailand
81.Reignwood Pine Valley Golden Bear China
82.Clearwater Bay Hong Kong
83.Delhi Lodhi India
84.Phoenix Japan
85.Kota Permai Malaysia
86.Myotha National Myanmar
87.Manila Southwoods G&CC Philippines
88.Pinx Korea
89.Victoria G&CC Sri Lanka
90.Taiwan G&CC Taiwan
91.Pineapple Valley GC Thailand
92.Blackstone Icheon Korea
93.Taiheiyo Club Gotemba Japan
94.Sherwood Hills Philippines
95.Sagewood Yeosu Gyungdo Korea
96.Blue Canyon CC Thailand
97.Jagorawi Old Indonesia
98.Blackstone Jeju Korea
99.Ibaraki West Japan
100.Thai CC Thailand
Text & Photo by Masa Nishijima
Data & Photo by TOP100 Golf Course of the World
全英オープン特集
GOLF Atmosphere No.56 復刻改正版
ジ・オープン、北アイルランド至宝リンクス、
ロイヤル・ポートラッシGCで開催。
さあいよいよ7月17日から20日にかけて、今年最後のメジャー大会、ジ・オープンは、グランドスラマー、ロリー・マキロイの故郷、北アイルランドの至宝リンクス、ロイヤル・ポートラッシュで開催されます。
2019年、68年ぶりにここ北アイルランドのロイヤル・ポートラッシュGCで開催されましたが、そこから僅か6年、ロイヤル・バークデール、カーヌスティ、ミュアフルドなど、他のロータコースのスケジュールを飛び越えてポートラッシュに決定しました。
首都ベルファストから北に約90km、火山活動で生まれた4万近くもの石柱群が海岸線に連なる世界遺産ジャイアンツコーズウェイ(Giant’s Causeway)があります。そこからブッシュミルズの村を経由して海岸線ルートを走り、ポートラッシュの町に着く3km程手前のカーブを曲がると突然視界にこの宝石のようなリンクスコースが現れてきます。
その時、誰もが「おー!」と叫ぶほどの美しさであり、それはリンクスマニアたちのゴルファーたちにとっては感動の瞬間でしょう。

※北アイルランドの世界遺産 Giant’s Causeway
さてここで少しロイヤル・ポートラッシュの歴史についてお話ししましょう。
ポートラッシュの街は19世紀当初から北のリゾート地として注目され、多くのセレブ達が訪れる中、街の東に続くリンクスランドにゴルフコースを求める声があがり、クラブは1888年、ベルファストの名士たちによって設立され、9ホールが完成した後、その噂を聞きつけた地元の名士たち含め70名のメンバーが入会をします。丁度その頃、ベルファスト周辺では球聖オールド・トム・モリスを設計家として招き、ロイヤル・カウンティ・ダウンGCの建設も進められていた頃で、ポートラッシュもこれを機会にトム・モリスに設計を依頼、コースを18ホールに拡張するに至ります。

※ リンクスの球聖Old Tom Morris
1891年にはメンバーの数も250名に増え、その予算から二つの18ホールを持つクラブに成長します。その後、ブッシュミルズ街道の北東部のリンクスランドを得たことから、1929年、名匠ハリー・コルトを招聘し、レイアウトの変更など大幅なコース改造計画がスタートします。ここで2つの18ホールコースはダンルースリンクス(Dunluce Links), ヴァレーリンクス(Valley Links)の名称を持つことになり、1932年に完成に至ります。ところが7年後の1939年にそれまで街中にあったクラブハウスをコース敷地内に移設する事から、それまでの1番と18番のホールを壊し、新たに現在の10番、11番ホールがコルトの指示のもと、ヘッドプロのP.G.スティーブソンにより増設されました。
戦後の1946年にコースは大きな修復作業を行いますが、コルトの設計とレイアウトは2015年、ジ・オープン開催に備え、マッケンジー&エバートの設計チームがコースをリノベーションするまで大きく変わることはありませんでした。

※2015年までのレイアウト図 フェアウェイをグリーンに表しているコースがジ・オープン開催コースのダンルースリンクス
上の図は2015年に改修・改造が行われる以前までのレイアウトです。
ダンルースリンクスも7,143ヤードあり、PAR72を71にすればアイリッシュオープンまでは十分対応できる器にありました。しかしジ・オープンともなるとギャラリーの数は半端なく世界中から訪れます。スタンドの数、更には世界中からのメディアを迎え入れるセンターに、ショップなどの特設会場を設ける用地が必要となります。
主催のR&Aとクラブ側、更にコース担当の責任者であるマーティン・エバートとの協議の結果、17, 18番を使用せず、ヴァレーリンクスの5, 6番ホールのある用地に新しい7, 8番のホールを建設し、16番ホールを最終の18番にする事で決定しました。

※図 Valley Links 5 ,6番の用地に7, 8番を造成、海岸線に沿った低地となる。
しかし改造計画を発表する数週間前にまた大きな問題に直面します。それはR&Aに属するゴルフ史家達の苦言から起こりました。旧17番ホールのフェアウェイ右にあった巨大な名物バンカー通称「ビッグナリー(Big Nallie)」を失ってしまう事であった。コルトが残した遺品とも言われ、クラブメンバーたちからも愛されていたバンカーでありました。

※ 旧17番ホールに存在したBig Nallie Bunker
マーティン・エバートはこれと同じ規模のものを新しい7番ホールの右に造る事を提言、ティからダウンヒルラインでバンカーを捉える点がオリジナルとは異なるが、その出来栄えはオリジナルに等しい威圧感ある存在となっています。

※ 丸で記したところが7番ホールの新しいBig Nallie Bunker

・前大会時のダンルースリンクスのスコアカード、今大会は4番が20ヤードほど延長された以外は、全体的に5~10ヤード程度の変更があったのみ。
以上が、ジ・オープンの改造、改修によって行われたレイアウトの変更です。
Ebertの設計チームは、コルトのオリジナル性を生かした14のグリーンの改修、内、7, 8番を含む5つのグリーンはロケーションを変えて新しく造られました。新しく増設されたバンカーは10、それとオープンに備えた8箇所のティボックスを設けました。
2ホール分の用地をダンルースに提供したヴァレーリンクスのレイアウトは、新しく#15, #17番をPAR3、そして最終18番をPAR3からPAR4に変更しています。
ロイヤル・ポートラッシュの特徴。
ポートラッシュの最大の特徴は、高低差23 mの地形の中にレイアウトされたドッグレッグホールです。2,5,8,9,10,11,15,18番の8ホールがドッグレッグラインにレイアウトされていることです。エバートはここに最大の注意点を払い、ティの移動、バンカーの増設を行いました。
北方のリンクスに吹く風は地面から吹き上がるもの、地面に叩きつけるもの様々です。この風の読みがドッグレッグホールには必要なようです。一つ間違えればペナルなハザードが待ち受けています。
ホール解説(ヤーデージは本年度大会)
#1番 420ヤード PAR4
オープニングホールのタフさではオーガスタナショナルに引けは取らないホールになるかも知れません。距離は無くとも2段状のグリーンはフロントの勾配がキツく、またサイドも同様です。的確なアプローチショットが求められます。ピンが手前に切られた日はボギースタートで良しと納得する選手たちが出てくるでしょう。
#2番 575ード PAR5
最初の浅いドッグレッグホールです。
ドッグレッグポイントの奥左手317ヤード地点に新しいバンカーが設けられ、
手前にレイアップするか、その右を狙うのか、2オン狙いのターゲットになるでしょう。フェアウェイは海に向かい縦のスロープが波のように流れ、エバードによって復元されたコルトのオリジナルグリーンもスロープが縦のコンターライン(Contour Line)を形成しています。
#3番 176ヤード PAR3
ハリー・コルトならではのサークルグリーン(円形状グリーン)は四方にスロープが流れる所謂馬の背グリーン、タートルバックグリーンと呼ばれるタイプの形状です。前後より左右に落とされないよう注意が必要です。
#4番 502ヤード PAR4
ホール名は1947年の全英を制した地元のFred Dalyに敬意を表したもの。リンクスマニアたちから最も人気の高いホール。その一番の理由が、グリーンが砂丘のマウンドに囲まれたセミブラインドのクラシックなパンチボウル状のグリーンコンプレックスであること。
#5番 372ヤード PAR4
クラブがアウトのシグネチャーホールと称するホール。グリーンは海岸に面し、コースの最も右端に位置します。オープンティからは90度右にドッグレッグするだけにラフの砂丘を越え、どのポイントまで近づけるか注目です。グリーンはアングルを持った縦長グリーンだけに風によってはドライバブルを狙う選手もいるでしょう。
#6番 193ヤード PAR3
内陸へのアップスロープに配置されたノーバンカーの美しいPAR3. グリーンは縦49ヤード、幅もあるが自然のコンターを絡めたアンジュレーションは複雑。
ホール名にはショートホールのミケランジェロと称えられた設計家ハリー・コルトの名が付けられている。
7番 607ヤード PAR5
マーティン・エバート設計のニューホール。ティショットは砂丘の谷間に向かって打ち下ろしていく。280ヤード地点に旧17番ホールにあったBig Nallieのレブリカ版バンカーがある。
8番 434ヤード PAR4
左ドッグレッグのこのホールは、ティからダイアゴナルラインでナチュラルサンドハザードとラフの谷間を超えていくショットが要求されます。どこまでグリーンに近づけるか、但しフェアウェイは300ヤード地点から先が狭くスロープが左右に流れるのでリスクを伴います。グリーンは砂丘の高台に配置されたプラトーグリーン。絵になるホール。
9番 432ヤード PAR4
ここも浅い左ドッグレッグラインがフェアウェイをダイアゴナル(Diagonal)に捉えさすタフなホール。右サイド310ヤード地点に新しいバンカーが設けられている。グリーン手前の二つのバンカーがコルトのデザインの特徴。
10番 450ヤード PAR4
ノーバンカーのホール(リンクスではけして珍しくはない)。凹凸のある砂丘地帯に囲まれたフェアウェイは340ヤード地点から右にドッグレッグし、縦44ヤードの細長いグリーンに正対する。ロングヒッターにアドバンテージを与えているが、このドッグレッグポイントへの風の計算、それよりも確実に手前にレイアップし、ハザード超えでグリーンを狙う攻略法を選択するか。選手たちの攻略法に興味尽きないストロングホール。
11番 475ヤード PAR4
ここも右へのドッグレッグポイントが攻略の鍵を握るでしょう。全英を二度制したパドレイグ・ハリントンはダイアゴナル(Diagonal=斜め対角線)に攻めるフェアウェイは狭く、グリーンを視界に入れるまでの距離を求められるティショットは世界中で最もタフな条件にあると述べています。更にグリーンは砂丘の一段上にある為、最終日、トップ争いをする中で折り返し点のキーとなるホールでしょう。
12番 532ヤード PAR5
全英に備え、オープンティを11番グリーンのすぐ左に設け、ホールは50ヤード伸ばしました。ポートラッシュでは珍しくストレートにレイアウトされたホールですが、300~330ヤード地点、フェアウェイ右サイドの2つのペナルバンカーは避けなければなりませんが、スロープが左から右に流れている為、転がり落ちる危険があります。また砲台状の台地に置かれたグリーンは、11番同様にフロント部分の勾配は厳しく、間違ってもGally(横長の溝)のある右手前には打たないよう細心の注意が必要。
13番 199 ヤード PAR3
縦長で斜めのコンターライン(Contour Line)が複雑なアンジュレーションを形成するグリーン。左右手前は4つのバンカーでガードされ、ここもピンが手前に切られた日は攻略が難しくなる。コルトの美感性が今も生きているホール。
14番 466ヤード PAR4
60ヤード後方にさげられたオープンティは、12, 13番グリーンの間に配置されています。フェアウェイのスロープが右から左へ流れる中、右310ヤード地点のバンカーの先のフェアウェイ左手335ヤード地点に新しいバンカーが設けられました。砲台状の36ヤードの縦長のホグスバック(Hog’s Back=雄豚の背)形状のグリーンは前後が厳しい傾斜となっている。左手に外せば、バンカーに転がり落ちるので絶対に注意。ポートラッシュで難度の高さはトップ3にランクされるグリーン。
15番 429ヤード PAR4
海岸線に向かう浅い左ドッグレッグホール。ホール左手の砂が露出したヴェストエリアが印象的なホール。フェアウェイ右サイド300ヤード地点に設けられたバンカーをターゲットに攻略ルートを考え出すホール、慎重にレイアップすれば、わずかな高低差であってもグリーンは確認できない。フォトジェニックなホールの一つ。
16番 236ヤード PAR3
谷越えでしかも打ち上げとなる236ヤードのPAR3、距離が足らなければ谷間へ下る崖の深いラフにはまる。アイリッシュオープンでは多くの選手たちがグリーンセンターから左サイドにターゲットを置き、吹き荒れる風に対抗してきた。ホール名のカラミティ(災難=Calamity)はティに立った瞬間にそれを感じさせる。世界のTOP10 PAR3ホールに選ばれ続けている名ホールだ。

#16 恐怖のPAR3 “Calamity”
17番 409 ヤード PAR4
砂丘のアップヒルなラインから打ち下ろし、300ヤード地点から更にダウンヒルなスロープがグリーンに向かう。打球のランによってはバンカーに転がり落ちるケースもある流れのスロープ。ティショットにミスが出やすいホール。
18番 474ヤード PAR4
最終18番もドッグレッグラインで締め括る。フェアウェイ右手280ヤード地点のバンカーを境に右へドッグレッグする。左はOBラインがスタンド手前まで続くが、フェアウェイ右サイドからだと砂丘がグリーンをブラインドにするケースもある。これまでは16番ホールであったが、タフなPAR4が最終ホールに設定された。
さて大会4日間のチケットはすべてソールドアウト。この間、237,750人の観客が予想されます。それはタイガー人気で239,000人のギャラリーを集めた2000年のセントアンドリュース大会に次ぐ数字です。
Text by Masa Nishijima
Photo by Larry Lambrecht, Mackenzie & Ebert, R&A, GOLF.com
Royal Portrush GC.