米国でトレンドになっているそれらのホールとは。

 

ウィスコンシン州Sand Valley Golf Resortの第4コースとして今年グランドオープンするSedge Valley GCが造成の段階から大変な話題を呼んでいます。Sand Valley2017年にBandon Dunes Golf ResortのオーナーズディベロッパーであるMike Keiser氏のご子息Michael JrChrisの二人の兄弟が開発、運営を担当しスタートしました。第1コースはCoore & Crenshawの設計で一躍全米TOP100コースの仲間入りを果たすと2年後の2019年には第2コースとしてDavid Mclay Kidd設計のMammoth Dunesが発表された。そして昨年5月にはかつてロングアイランドにあったC.B.Macdonaldの作品、戦中の1942年にロストリンクスとなったThe Lido Golf Club100%復元したThe Lido Sand Valleyを発表しました。それはゴルフコース研究家、史家たちにとって夢にまで登場していたC.B.Macdonaldの世界でした。オリジナルの図面と写真をAIにかけ、その土地の高低差から18ホールのレイアウトまで全て同じに造られました。復元の設計責任者はTom Doak, 造成は彼のパートナーであるBrian Schneiderが現場監督となって完成に導きました。昨年の世界TOP100コースでは堂々の68位にランクアップされました。

 

* The Lido Sand Valleyの全景      Photo by WiscoGolf

 

そして今年度はLidoの造成とほぼ同時進行していたSedge Valleyがいよいよグランドオープンを迎えます。設計を担当したTom Doakは、砂地をやたら露出した現代風の第1、第2コースとは異なり、100年前の英国ヒースランド地帯の時代に遡り、Swinley ForestRye GCなどクラシックコースの設計コンセプトをそのままに映し出したような作品に仕上げました。PAR68のコースはトータルヤーデージも最大で6,200ヤード程度しかありません。Sedge Valleyは昔あったボギースコアが似合っています。しかしそれでいてスクラッチゴルファーとアベレージゴルファーがホールマッチで楽しめる設計アイデアが組み込まれています。これがハーフパーホール(Half Par Hole)の設計理論です。Tom Doakがコース研究家たちに再度思い起こさせたハーフパーホールの歴史的価値、それらは名コースを創り上げる上で、どれだけ重要な存在であったかを再度認識させるものでしょう。

 

* Sedge Valley GC Sand Valley Golf Resort.     Photo by Sand Valley Golf Resort

 

ヤーデージからみるハーフパーホールの定義

 

コース研究家たちに興味を持たすホールとは、パーにおける相対距離に対してゴルファーの先入観が当てはまらないものが多いものです。 例えば距離のあるロングパー3のように従来の許容範囲を超えたレングスは、挑戦欲の高いスクラッチゴルファーにとって魅力的なオプションを提供します。彼らが245 ヤードのパー 3 285 ヤードのパー 4 を「パー3 1/2 ホール」と呼ぶことがあります。

距離のあるロングパー3でボギーを叩いてもそれにうなずき自らを納得させるのに対し、距離の短いショートパー4ではパーで上がっても満足せず首を横に振り次のティーに向かいます。スクラッチゴルファーがいかにパーの定義に拘るかが理解できる光景です。

しかしアベレージゴルファーが自らの飛距離や技術を謙虚に捉え、攻略ルートを整えられるホールであるならば、グリーン上でドローに持ち込める可能性は十分にあるはずです。これがハーフパーホールにおける設計の定義です。つまりこの場合のハーフ(Half)は引き分けることを意味します。

カリフォルニアの名門Cypress Point GC16番、クリフ超えのロングパー3は、グリーンセンターまでが230ヤード、クリフ超えには205ヤードのキャリーが必要です。 スクラッチゴルファーはその日の風によりその攻略法を変えますが、アベレージゴルファーの大半はキャディからグリーン左側のフェアウェイに向け160から175 ヤードのショットを打つ事を奨められます。つまり2オン1パットの「オールドマンパー」の精神を持った攻略ルートです。

このホールなどアベレージゴルファーがスクラッチゴルファーに勝てる可能性を持たせようとした設計家側からの戦略性とプレーヤーの攻略法が見事に一致したハーフパーホールと言えるでしょう。

 

* Cypress Point GC #16 Long PAR3の攻略ルート

 

 古典的リンクスにはタフなグリーンを持つパー 4 があります。

  例えば 皆さま方も全英オープンでよくご存知のSt Andrews Old コースの17Road 470495ヤード、Prestwick GC13Sea Hardrig 458ヤード, Royal Dornoch14Foxy 445ヤード、Westward Ho! (Royal North Devon)9Dell 451ヤードなどは開設当時パー5としてボギースコアカードで表示されていた時代からのホールです。ここで是非注意して頂きたい点はPARというゴルフ用語は、5世紀以上にわたる長いゴルフ史から見た場合、ゲームが進化していく中、比較的新しく追加された用語であることです。 古典的なスコットランドのリンクスはプレーヤーにストローク数のゼロを定義する数字PARを課すことを目的として造られた舞台ではありません。事実、マッチプレーがゴルフゲームの形式とされ、20 世紀はじめにゲームがストローク制に経るまではボギースコアカードが一般的に使用されていました。コースも6から9, 12ホールと拡張され、そして18 ホール構成が主流の時代へと繋がっていきます。Prestwickや内陸のSwinley Forestでは現在でもボギーカードが存在しています。

  その歴史的観点から攻略ルートはパーオンを考えず、ピンへの花道となるアプローチエリアにレイアップし、3オン1パットのルートを選択するのが賢者の道と言われています。これは距離ではなく、グリーンの形状と配置バランス、表面のコントゥーア(Contour)がボギーに相応しいよう厳密に設計されているからです。距離が出るスクラッチゴルファーでさえこの賢者の道を選択するでしょう。そして2打目にレイアップできる箇所がはっきりと分かるように設計、コースセッテイングされているのがポイントです。これなどまさにハーフパーホールの戦略的名ホール達です。

 

* St.Andrews Old #17 Road Hole     Photo credit by R&A

 

ここでSedge Valleyの設計者であるTom Doakにハーフパーホールの設計について尋ねてみました。すると以下のような答えが返ってきました。

 

* Tom Doak  Cabot Highlands Scotland  photo credit by Rick Young

 

「私にとってハーフパーホールは225ヤードから300ヤード、または450ヤードから500ヤード間の領域に存在します。マッチプレーでは距離を伸ばし、ストロークが1/2パーになる可能性はそれほど重要ではありません。 これらの長さによりスクラッチゴルファーに対して、バーディを獲るか、ボギーを避けなければならないというプレッシャーが大きくなるはずです。もちろん、ショートパー 4 やショートパー 5 でそれを行うことができますが、ロングパー 3 やロングパー 4 でもそれを行うことはできるはずです。 2 度のグッドショットを要求すればすべてのホールでパーを達成できる可能性を示します。これらのようなホールには、アプローチでグリーンの手前、40 ヤードから 60 ヤード地点にバンカーを持つのが良いと考えます。 バンカーはショートヒッターにグリーンに近づくべきか、それとも後ろに下がってサードショットでグリーンを狙うべきかを考えさせます。そしてグリーン及びその手前をターゲットにしたローハンデキャップゴルファーには、ミスをした場合、彼らが直面する最も難しいショットとなるロングバンカーショットの罰が提供できます。ハーフパーホールの風潮は何も新しいことではありません。 かつてAlister Mackenzieは常にそれらを一番考案し、18ホールにいくつも組み込ませていました。Pete Dye も同様でした。 私たち設計者側はそれらについて一つ学んだ事があります。 現在のゴルフコースレイター(評議者)達は昔の方たちに比べ、ゴルフの腕前が全員良いとは限りません。つまりコース研究家、史家たち、彼らには時間の自由と資金力を持つ年齢層が多く含まれているからです。彼らの中にロングヒッターは何パーセントいるでしょうか? かつてはスクラッチクラスのゴルファーがどこがタフなのか?と眉をひそめていたようなホールを、今では戦略的と高く評価している為、ハーフパーホールの存在は改めて注目されているのでしょう。私のクライアントも同様です。たとえば現在造成中のパインハースト#10コースでは、すべてのリゾート客が満足できるようにロングパー3を戦略的なショートパー4に変更するよう私に依頼してきた事もありました。」

さてここで私が以前日本の週刊ゴルフダイジェストやチョイス誌のマスターズ特集でも解説したAugusta National のドラマを生む18ホールの流れとその構成についてハーフパーホールの定義をベースに再度説明したいと思います。

私は解説のテーマをホールごとに異なるバーディ、パー、ボギーの価値観をStatsから紹介しました。例えばマスターズでパーのスコアがパーに相応しいとされるホールはいくつあるでしょうか? バーディは奪ったがその価値がパーに等しいとされるホールは? その逆にボギーは出したがそれはパーと同じ価値があるとポジティブに捉えるべきホールはいくつあるでしょうか? それらの中にはまさにハーフパーホールの定義と重なるものがあります。バック913番と15番の2ショットでグリーンを捉える事が可能なパー5などはその例の一つでしょう。優勝を競うプレーヤーはトーナメントの流れから果敢に攻め、イーグルに挑戦し、最低でもバーディをマストとする日もあれば、2打目をレイアップする3ショットルートを選択し、確実にバーディを狙いに行く日もあります。果敢に攻めてウォーターハザードに捕まれば、ボギー以上に最悪な結果を招く厳しいグリーンのコントゥーアが待ち構えています。リスクと報酬の頂点を極めたホールといえるでしょう。これをアマチュアの世界に例え、ロングヒッターのスクラッチゴルファーと距離は出なくとも確実性を持ったステディなゴルファーが対する舞台と考えてみてください。両者はまさにイーブンの条件となるハーフパーホールです。逆にフロント92番と8番のパー5は攻めきる事が絶対条件のホールで、そこでのパーはボギーに等しい結果となるホールだけにハーフパーホールの論理からはやや外れるホールとなります。

これまでの解説でご理解頂けたでしょうか?

 

* Augusta National #13 PAR5    Photo credit by Larry Lambrecht

 

ヤーデージの長さによるハーフパーホールの表示

 

ハーフパーホールのPAR表示はそのヤーデージによって示されます。例えば今年全英が開催されるRoyal Troon GC Old8番は僅か123ヤードのショートパー3です。距離は短くとも全英のRotaコースで最も小さなグリーンは、風が吹けば打球はバンカーに転がり落ちボギーも余儀なくされる事から「ポステージスタンプ」の名が付けられた名物ホールです。距離はなくともそのグリーンのサイズからアベレージゴルファーにも時に勝てるチャンスを与えてくれるハーフパーホールです。又、C.B.Macdonaldがクラシック設計のテンプレートホールの一つに定義した名称「Short」のパー3は、距離は135ヤードでグリーンのサイズもクラシック時代の作品では比較的大きいが、グリーン面(サーフェイス)のセンターにThumbprint(母印)と呼ばれる親指で押しつぶしたような円形の歪みを持ち、グリーンに乗って当たり前、問題はパッティングにおける技術を唱えたパー3理論です。これもスクラッチゴルファーとイーブンに持ち込めるホールです。これらのPAR3は距離の短さから2.5と表記され、Cypress Point16番のように距離が長く2オン+1パット=パーセーブの攻略理論を持ったパー33.5と表記されます。

この表記はパー4では距離が短いショートパー43.5, St Andrews Oldコースの17番ロードホールのようなロングパー4ならば4.5と記されます。

パー5では短いショートパー54.5と表記されますが、長いからと5.5と表記されるのはPAR6ホールが稀にしかない事から、Muirfield9(560ヤード)のようにタフでスクラッチゴルファーを苦しめるハザードの配置がないホール以外は使えないでしょう。Augusta National13,15番のようにイーグルからダブルボギーまで想定できるPAR5のハーフパーホールが存在している事がそれを意味しています。

 

Royal Troon Old #8  “Postage Stamp”         Photo by R&A

 

今回のハーフパーホールの解説、ご理解頂けたでしょうか? 難しい内容ですが、ホールの価値、そのコースの価値を知る上で大変重要な用語であります。

さて今年もGOLF Atmosphereは雑学から見識分野まで知識の宝庫として連載を続けていく所存です。

本年度もどうぞ宜しくお願い申し上げます。

 

Text by Masa Nishijima

Photo by Masa Nishijima, Larry Lambrecht, Rick Young, Wiscon Golf, GCA, R&A.