GOLF Atmosphere No.58 GOLF World誌 欧州大陸TOP100コースを発表 !! (2019/20年度)
隔年ごとにアナウンスされるゴルフワールド誌の欧州大陸TOP100コース。
今年は何と19もの新顔がそのランキングリストに載り話題となっています。
今世紀に入り、西欧だけでなく、旧東欧諸国のゴルフ場開発には目を見張るものがありました。特にバルト三国とロシアの開発はその規模の大きさから将来、PGAツアー開催コースとしてのローテーションに入ってくることは間違いないでしょう。ここではランキングを10位ごとに分けて解説して参りたいと思います。
欧州大陸TOP100コース
※Monte Rei ジャック・ニクラウスのシグネチャーコース(自身がレイアウト構想から18ホールの図面を書く)として、幾度の改良を重ね、遂に欧州ランキング4位にRanked Upされた。
TOP10コース
1. Morfontaine フランス
2. Utrechtse GC De Pan オランダ
3. Valderrama スペイン (+1)
4. Monte Rei ポルトガル(+9)
5. Fontainebleau フランス(+1)
6. PGA Catalunya スペイン(+1)
7. Les Bordes フランス(-4)
8. Troia ポルトガル(+9)
9. Noordwijkse オランダ(+3)
10. Bro Hof Slott スウェーデン(+10)
※ Golf de Morfontaine Ranked #1 パリ郊外、ソンリスの森にひっそりと佇む欧州ナンバー1のプライベートクラブ。 才人トム・シンプソンの傑作である。ゴルフマガジン世界TOP100コースの上位に君臨する。
欧州のコースランキングが始まって以来、トップにあり続けるフランスのモルフォンテーヌ(Morfontaine)は、ゴルフマガジン誌の世界TOP100コースでも、常にTOP50内に君臨する名門です。才人トム・シンプソンが設計したこのクラシックコースは、7年前にカイル・フィリップスがコースをレストレーションし、その伝統美に更に磨きがかかりました。ここ数年2位に入っているオランダのユトレヒトセGC デ・パンは、19世紀からの歴史を誇るオランダ最古のクラブで、1920年代に現在のユトレヒト郊外に移転した際、名称ハリー・コルトと彼のパートナーだったC.H.アリソンが設計をしました。アリソンは皆様もアリソンバンカーでよくご存知の事でしょう。彼らはオランダ、フランスを中心に欧州大陸でも数多くの名作を残しています。注目はポルトガルのトロイヤ( Troia)がTOP10入りを果たしたことです。70年代前半にリスボン郊外の週末のリゾート地として開発されたこの砂丘の一帯は、18kmに渡る美しいビーチが広がり、そこにこのコースはあります。ロバート・トレント・ジョーンズSrが欧州大陸で残した名作の一つで、森から海岸線を行き来するそのルーティングの素晴らしさはまさにゴルファーにオアシスを感じさせてくれます。トロイアへは、リスボンからは車で小一時間ほどのセトゥーバルの港まで行き、そこからフェリーで行くのでベストです。
※ Troia GC Ranked #8 ロバート・トレント・ジョーンズSrが残した欧州大陸の名作中の名作。けして広いとは言えないその用地だが、森から海岸線へ繋がる砂丘地帯のルートを2ループで描く巧みなルーティングは誰もが感銘する。欧州の至宝コースである。
TOP11〜20コース
11. Kennemer オランダ(-3)
12. Terre Blanche(Chateau) フランス( +3)
13. Royal Hague(KoninKlijke Haagsche) オランダ(-8)
14. Royal Zoute ベルギー(-4)
15. Chantilly(Vineuil) フランス(-4)
16. Hamburger Falkenstein ドイツ
17. West Cliffs ポルトガル(+8)
18. Raevo G& CC ※ ロシア
19. Golf de Medoc(Chateau) フランス(-5)
20. Le Touquet (La Mer) フランス(+11)
11~20位ではやはり昔からの名門が名を連ねています。ケネマー、ロイヤルハーグ、ファルケンシュタイン、ル・トゥーケはハリー・コルト、アリソン、モリソンの設計チームによるクラシック作品で、近年、コルト研究家の第一人者フランク・ポントがコースをレストレーションしました。17位のWest Cliffsは数年前にピート・ダイの姪シンシア・ダイ・マクガリーが設計した作品で、隣接してやはりポルトガルのTOP10コース、プレイア・デル・レイがあります。世界遺産オビドスの観光も兼ねて訪問してほしいコースです。18位のラーバ(Raevo)は2017年にオープンしたジャック・ニクラウス設計チームの作品です。
※ West Cliffs Ranked # 17 ポルトガル、世界遺産の村オビドスの海岸線にピート・ダイの姪シンシア・ダイ・マクガリーが設計した新設。年々評価を上げている。
※ Raevo Golf & CC Ranked #18 ロシアではTseleevo Golf & Polo Club(2008), Skolkovo GC(2014)についで2017年に完成したジャック・ニクラウスの新作。この3コースはどれもモスクワ近郊にある。
TOP21〜30コース
21. Falsterbo スウェーデン(-3)
22. Le National(Albatros) フランス(+10)
23. El Saler スペイン(-14)
24. Hilversumche オランダ(-1)
25. Puerta de Hierro(Arriba) スペイン(+25)
26. Golf de St.Germain フランス(-7)
27. Eindhoven GC オランダ
28. The Scandinavian(New) デンマーク(+7)
29. Quinta do Lago(South) ポルトガル(+27)
30. Parnu Bay エストニア(+15)
21~30位で注目して頂きたいのはスペイン、マドリッドに1904年からの歴史を誇る名門プエルタ・デ・イエロで、近年カイル・フィリップスによるコースリノベーションでその評価は50位から一気にRanked #25アップを果たしました。
フランスのル・ナショナーレは昨年ライダーカップが開催され話題となりましたね。26位のサン・ジェルマンはハリー・コルトの設計で彼のプロトタイプグリーンの12のモデルがあることからも有名です。30位にはエストニアからのパルノベイがランキングを一気に上げてきました。
※ Real Club de la Puerta de Hierro Ranked # 25 マドリッド郊外に1904年設立された由緒高き名門クラブ。トム・シンプソンのオリジナルを名匠ハリー・コルトが改良し、最近カイル・フィリップスがリノベーションし、一気にランキングを上げてきた。
※ Parnu Bay Golf Links Ranked # 30 バルト三国エストニアのリガ湾に面するコーストラインに完成されたエストニアのベストコース。
TOP31〜40コース
31. Palmares GC ポルトガル(-5)
32. Budersand GC ドイツ(-10)
33. Lubker (Sky & Sand) デンマーク
34. Tbilisi Hills※ ジョージア(グルジア)
35. Royal Bled スロベニア(+13)
36. Golf & Yacht Club Pestovo GC※ ロシア
37. Sotogrande(Old) スペイン
38. The Scandinavian(Old) デンマーク(-1)
39. Hardelot (Les Pins) フランス(-15)
40. Finca Cortesin スペイン(+2)
31~40位のランキングで注目したいのは、北ドイツ、デンマークとの国境にあるジルト(Sylt)島にあるモダンリンクス、ブダーザントの大幅なランキングダウン、やはりマンメイドリンクスの限界だろうか。ジョージア(グルジア)初の18ホールコース、トビリシヒルズが高い評価で初登場を果たした。またゴージャスなクラブハウスで知られるロシアのペストボォも100選入りを果たしました。モスクワ運河に面し、ここはヨットクラブの方がむしろ有名でした。
フランス、カレー港からも近いアーデロはトム・シンプソンの名作の一つですが、ランクを15も落とすとはここ数年の異常気象から何かメインテナンスに問題でもあったのだろうか。
※ Royal Bled Ranked #35スロベニアの景勝地ブレッド湖畔、ユルリアンアルプスを望むプライベートリゾートコース。
※Tbilisi Hills Ranked #34 栃ノ心の母国ジョージア(グルジア)に初めて誕生した18ホールコース。
TOP41〜50コース
41. Great Northern※ デンマーク
42. Carya GC トルコ(-13)
43. Royal Limburg ベルギー(-3)
44. Praia D’el Rey ポルトガル(-14)
45. Sevilla GC スペイン(-1)
46. Lofoten Links ノルウェー(+19)
47. Son Gual スペイン(-1)
48. Villa D’Este イタリア(-10)
49. Visby GC スウェーデン(+42)
50. Sporting Club Berlin (Faldo) ドイツ
41~50位で注目したいのは北欧の2コースである。46位と大幅にランクアップしたルーフーテンリンクス(Lofoten Links)は北極圏にあることから初秋にはオーロラが観測できる秘境コースとして世界中のコースマニアたちから注目されている。スウェーデンのベースベイ(Visby)はバルト海の島ゴトランドに1958年に開設されたコース。1990, 2007,2009年にコースはリノベーションをされ、今回91位から49位へと大幅にランクドアップされた。
※ Lofoten Links Ranked #46 神秘のロフォーテン諸島に2015年に完成されたコース。夜の時間帯が5時間を過ぎる初秋からはゴルフコースまたはロッジからオーロラ観測もできる。今、世界中のゴルファーたちから注目されている。
TOP51〜60コース
51. Rosendaelsche GC オランダ(-23)
52. Kongsvinger GC ノルウェー(+1)
53. Neguri GC スペイン(+1)
54. Domaine Imperial スイス(+15)
55. Oslo GC※ ノルウェー
56. Oitavos Dunes ポルトガル(-35)
57. Ravenstein(Old) Royal Belgique ベルギー(-8)
58. Winston(Championship) ドイツ(+21)
59. Verdura(East) イタリア・シシリー(+2)
60. Royal Park I Roveri イタリア(-13)
51~60位ではオスロGCが遂に100選入りを果たしました。1924年クラブ設立、オスロ郊外の牧歌的コースでしたが、2009年にスティーブ・フォレストによって大幅に改造され、今回の評価に繋がったようです。5月から10月の短いゴルフシーズンでありながら、昨年は年間31,000ラウンド数を記録、ノルウェーで最も忙しいコースとなっています。オランダの名門ローゼンダールシュが大幅にランクダウンしたのが気がかりです。
※ Oslo GC Ranked #55 ボーグスタ湖に面したランドスケープの素晴らしいコース。
TOP61〜70コース
61. Las Brisas GC スペイン(+2)
62. Santander GC スペイン(+9)
63. Las Colinas GC スペイン(-8)
64. Royal Waterloo ベルギー(+30)
65. Thracian Cliffs ブルガリア(+27)
66. Golf de Sperone フランス・コルシカ -9
67. Tseleevo GC & Polo Club※ ロシア
68. Esbjerg(Marbaek) デンマーク(+4)
69. Antalya(PGA Sultan) トルコ(-1)
70. Halmstad (North) スウェーデン(-6)
ワーテルローのライオン像の丘からも近いロイヤル・ワーテルローは1923年からの歴史を誇るベルギーの名門。45ホールを誇り、戦後は英国のコース設計家ダイナスティ、ホウトリー家によってコースは改善されてきた。今回もラ・マラシュコースがマーティン・ホウトリーにより大幅にリノベーションされ、ランキングを94位からなんと64位と大幅に上げてきた。
※ Royal Waterloo GC Ranked #64位、コースからは戦場跡を記念したライオン像の丘を望むことができる。
TOP71〜80コース
71. La Reserva de Sotogrande スペイン(+5)
72. El Prat (Rosa) スペイン(-14)
73. Sand GC スウェーデン(-14)
74. Crans-sur-Sierre スイス(+14)
75. Golf de Medoc( Vignes) フランス(-23)
76. Linna Golf フィンランド(+20)
77. G&CC Zurich ※ スイス
78. Sand Valley ポーランド(+4)
79. Penati (Heritage) スロバキア(-5)
80. Penha Longa(Atlantico) ポルトガル(-41)
71~80位で注目したいのはフィンランドのリンナゴルフ。フィンランドの湖水地方の玄関口ハンメリンナからも近い湖のほとりにある。2005年開設時からその評価は高い。意外だったのはゴルフ&カントリークラブチューリッヒが初入選したことだ。スイスのクラシックコースではジユネーブ, ローザンヌの名門が有名だが、それを押しのけて初の100選入りを果たした。チューリッヒの中心部からも路面電車を乗り継いで行ける市内を一望する丘の上にある。
スペインのエル・プラートはかつて海岸線に面したハビエル・アラーナのり名作の一つであったが、新空港建設予定地に入った為、内陸に移動、その後の評価は年々ダウン傾向にある。
※ Linna Golf Or Ranked # 76 フィンランドのベストコースとしてその評価は開設時から高い。
※Zurich G&CC Ranked # 77 チューリッヒ市内を望む丘にある自然に溢れたフォレストコース
TOP81〜90コース
81. Adamstal Franz Wittman ※ オーストリア
82. Vilamoura (Old) ポルトガル(-41)
83. Ullna GC ※ スウェーデン
84. GC Biella Le Betulle イタリア(-14)
85. Barseback(Masters) スウェーデン(-18)
86. San Lorenzo ポルトガル(-52)
87. Fontana GC オーストリア(-9)
88. Quinta do Lago(Laranjal) ※ ポルトガル
89. Holsterbo GC(Forest) デンマーク(-3)
90. Anfi Tauro ※ スペイン・カナリア諸島
81~90位のランキングで驚くのはヴィラモウラとサン・ロレンツォのポルトガルを代表した二つのコースの急激なランキングダウンです。
ヴィラモウラはPGA Europeanツアーの開催コースでもありましたし、後半3ホールの盛り上がりはホール構成として素晴らしいものがあります。但し、パー3のコレクションにアクセントがないのが難点で今回のダウンはその辺りを厳しく評価されたのかもしれません。サン・ロレンツォに関しては後半の特にフィニッシングの2ホールの水際に頼る戦略性に疑問は持たれていました。かつては世界TOP100コースにも入ったモダンコースも時代の進化についていっていないようです。スウェーデンのウルナの100選入りはニクラウスの欧州設計チームのリノベーションによる功績が大きいでしょう。湖に面して元々素晴らしいランドスケープを描いていたコースですが、レイアウトはそのままにグリーンコンプレックス、バンカリングなどを大幅に改良されました。
※ ポルトガルのゴルフ銀座、アルガルベ地方を代表するヴィラモウラオールドコース。
※Ullna GC Ranked # 83 ストックホルムから北にわずか20kmの距離にある。
TOP91〜100コース
91. GC Brautarholt ※ アイスランド
92. Verdura (West) ※ イタリア・シシリー
93. Halmstad (South) ※ スウェーデン
94. Alcanada GC ※ スペイン・マヨルカ
95. The National トルコ
96. Albatross GC ※ チェコ
97. Quinta do Lago(North) ポルトガル(-4)
98. Penati Resort ( Legend) ※ スロバキア
99. Dreamland GC ※ アゼルバイジャン
100. Pirin Golf &CC ※ ブルガリア
91位にアイスランドのブレイタルホルトが入ったのは驚きでした。それはこのコースが12ホールコースだからです。Par 5が2ホール, Par 4が6, Par 3が4ホールの構成から成っています。元々は9ホールからスタートし、17年に3ホールが追加されました。アイスランドのコースは7割が9ホールコースです。火の国アイスランドの土地は溶岩地帯が多く、18ホールのレイアウトは厳しい条件が多かったのです。アイスランドのヴィスタマン諸島には1938年に開設された溶岩リンクス、ヴェストマンナGCがあり、こちらもブレイタルホルト同様の秘境コースとしてコースマニアの中では有名です。
91~100位には8つのコースが新顔です。なんとアゼルバイジャンにもコースができる時代になりました。その一つ、ドリームランドGCはダイデザインスの設計です。
※ GC Brautarholt アイスランドの秘境コースは12ホールコース、しかしどのホールもコースマニアたちを満足させる内容にあります。
以上が欧州大陸TOP100コースの解説です。
米国、英国だけでなく、欧州大陸のコースにちょっと方向を変えてみるのもゴルフの旅の愉しみ方ではないでしょうか。
Text by Masa Nishijima
Photo Credit by Masa Nishijima, GOLF World, GOLF.com, 各クラブ広報。