連載 Golf Atmosphere No. 97/米国の異常な人件費の高騰、物価高はゴルフ場も直撃している。
全米オープンの開催コースでもあるPebble Beachのグリーンフィがカートを入れて$680ドル、シングルキャディーを付けるならばプラス$155, ペブルビーチのティータイムは宿泊者が優先されるだけに結局は泊まることになる。これがニューヨークのプラザホテル並みの料金だから、今日の円安社会では大手新入社員の初任給がペブルビーチでの一日で飛んでしまうことになる。
ラスベガスのナンバー1コース、Shadow Creekが遂にグリーンフィ$1,000ドルの壁を超えました。かつては超プライベートクラブだったがリーマンを期にMGM系リゾートの宿泊者にはプレーの権利が与えられます。カジノタウンであることから宿泊代が安い事で知られたラスベガスもコンベンション期間ともなれば、$500位は常識となっています。
そんな中、南部のゴルフリゾートのメッカ、Pinehurst Resortは西海岸のPebble Beach同様に全米オープンの開催コースとなっていますが、プレー&宿泊のパッケージで申し込むと比較的ルーズナブルな価格となっているようです。
2泊3ラウンド(#2, #4, #6コース)のバッケージ料金は、2名1室で一人当たり$1588~、これには朝食と3コースディナーが含まれているのでお得感はあるでしょう。
第5のメジャーとも言われるプレイヤーズチャンピオンシップが開催されるフロリダのTPC Sawgrassも比較的リーズナブルな料金を出しています。
スタジアムコースのグリーンフィだけならば$450~$600ドルですが、Sawgrass Marriott Golf Resortに1泊(朝食込み)し、スタジアムコースでのプレーがついたパッケージ料金は$866からあります。
それにしてもハイクラスなデーリーフィコースにおけるここ数年のグリーンフィの高騰には驚かされるばかりです。
ウクライナ問題から肥料の高騰は続くばかりで、すべてのゴルフ場の管理コストは悲しいかな上昇の一途です。
プライベートクラブの入会金、年会費の高騰。
コロナ渦の中、欧州大陸では野外で広大な大地の森で遊ぶゴルフは比較的感染率の低いとされ一躍ブームとなりました。プレーする為には入会金にプラス年会費を納める必要があることからクラブハウスには連日入会を求める人々が列をなしました。
物価高に管理コストの高騰などが重なり、ビジターへのグリーンフィはどこも大幅に上げざるを得ない状態が続いているようです。コロナが去り、せっかくゴルフ人口が増えたかに見えましたが、プレー費の値上げはゴルフを控え、もっと安く遊べるテニスなど他のスポーツに移る可能性があります。
またプライベートクラブのメンバーになったゴルファーたちは、自分たちのホームコース以外のゴルフ場には行かなくなる傾向が強くなる傾向が予測されます。欧州大陸のプライベートクラブの大半は英国、アイルランド同様に、平日の3~4日間はビジターに開放しているクラブが多い事から、クラブステータスを大事にメンバー数に制限を持つ名門コースでは、諸外国からのリッチなゴルファー達、つまりゴルフツーリズムに期待を寄せるところも多いはずです。これは豪州や南アでも同じ事が言えるのではないでしょうか。
さて米国ではコロナ渦以前からプライベートクラブの年間費は毎年3%~5%ずつ上がっているのが通例のようです。
これは主に高騰する光熱費や人件費に対処するもので、コースやクラブハウスの修繕費には当たるものではありません。それらクラブ委員会の承認を持って行われた修繕費などを含め、年度末決算で出た赤字分はメンバーが分割で補填する仕組みになっています。
クラブハウスの修繕、コース修復や改造などが行われたクラブでは過去2年で9~15%程度年会費が上がっていったのに等しい名門クラブもあります。
ノースカロライナ州のプライベートクラブでは入会金が従来の$25,000ドルから$80,000ドルと3倍以上になったクラブもありました。ゴルフだけでなく、テニスコートやスウィミングプール、または乗馬+ポロクラブなどの複合施設を持つカントリークラブでは、ゴルフとは分けた入会制度、家族会員制度を持つようになったクラブも多く、年会費もその規模により様々なものになっています。
カントリークラブの場合、クラブハウスがパーティや結婚披露宴などに使用されるなど様々なイベントで収益が得られることから、年会費はメンバーが300人程度に限られたゴルフクラブのような高騰はないようです。
今週はマスターズウィークです。
今週4月6日から9日までは待ちに待ったThe Mastersの開催です。
昨今、物価上昇のあおりを受ける世界中のプライベートクラブの中で、どれだけ光熱費や人件費が上がろうがクラブ年会費を上げないで済んでいるクラブはAugusta National GCだけかもしれません。
かつてマスターズ用に広大なレンジを設けた時、その費用は新会員の入会金で賄ったという噂が流れた事がありましたが、The Mastersの開催で莫大な収益を得るAugusta Nationalが、数名の新メンバーの入会金でそれを賄うなんて、そんなケチな発想は持たないでしょう。事実、バークマンズ通りを隔てた森に囲まれる100世帯の住宅地を$2億ドルで買収し、マスターズ用の駐車場にしたのですから。
さてここ数年Augusta Nationalは樹木の伐採、植栽以外は大きなコース改善は行われてきませんでしたが、数年前に隣接するAugusta Country Clubの一部用地を買収したことにより、#13番AzaleaHoleのティーインググランドを35ヤード後方に下げ、510ヤードから545ヤードのドッグレッグPAR5にしました。
傾斜地であることからティは手前より8フィート高い位置になりました。これが攻略ポイントの一つになるかもしれません。
20数年前まではドッグレッグポイントからドローでクリーク沿いに果敢に攻めていくイーグルトライの攻略ルートがありましたが、その最大リスクと報酬のルートは復活するのでしょうか。左サイドには樹木も植えられその視界の狭さに、トッププロたちの攻略ルートは樹木帯の上を高弾道で攻めていき右から左へ流れるスロープを活用しランを稼ぐルートの選択をするのでしょうか。いずれにせよ、The Mastersで勝つためにはPAR5のホールはバーディがマストな条件であり、パーはボギーに等しい結果ともなります。
世界中がベースボールで沸いたWBCが閉幕したばかりですが、また眠れない日々が続きそうです。
Text by Masa Nishijima
Photo Credit by Shadow Creek(John Henebry), Golf.com, ANGC