今回は米国ゴルフダイジェスト誌が隔年で発表する米国のゴルフコースを除く世界TOP100コースをご紹介しましょう。

2004年にスタートし、その後は選考委員会を英国の提携誌 GOLF World 誌に委託し、現在は Planet GOLF として Digest 本体が行っています。発足当時、世界にディストリビューターを持つ GOLF Digest が各国の支部に Rater たる評価委員を任せたことから、そのコースランキングは疑問との酷評を受けた事から一時廃止され、2017年に選考システムを変えて再出発されました。

タイガー人気から PGA ツアーはスポンサーを集め繁栄する中、リーマンショックの流れから多くのゴルフコースが閉鎖に追い込まれた2010年代前半、紙媒体もネットのパワーに押されも危機的状況にありました。

GOLF Digest は60年代からの歴史を誇るゴルフコース選定を残す為に、全米の各州に点在する1,000人を超えるパネリストたちの他に、彼らから推薦を受けたパネリスト数千人から会費を取り、コースランキングの運営を保持してきました。海外のディストリビューターが推薦したパネリストたちの扱いは定かではありませんが、ワールドランキングに関して世界のゴルフコースマニアたちの間では某コースは過大評価ではないか?、などまだまだ物議を交わしているようです。

それではTOP10からご紹介していきましょう。

TOP 10

1. Royal County Down N.Ireland

2. Tara iti New Zealand

3. Royal Dornoch Scotland

4. Royal Melbourne (West) Australia

5. Morfontaine France

6. Hirono Japan

7. Muirfield Scotland

8. Royal Portrush (Dunluce) N.Ireland

9. St. Andrews(Old) Scotland

10. Cabot Cliffs Canada

* Royal County Down(上)、 Tara Iti (中)、 Royal Dornoch(下)

 

米国のゴルフコースを除くこのワールドランキングがスタートしてから今日まで常にナンバー 1に君臨しているのは北アイルランドの Royal County Down です。

驚くのはスコットランドの名門 Royal Dornoch を退け、堂々の2位にニュージーランドでの Tom Doak の新設 Tara Iti がランクされていることです。

更に The Open の会場でも知られる名門 Muirfield、Royal Portrush、聖地 St. Andrews Old Course より上に日本の広野が高く評価されています。Martin Ebert率いる設計チームが戦前の広野への復元をテーマにリノベーションしましたが、果たしてその結果がこの6位の評価に繋がったのでしょうか? これは多くのゴルフコースマニアたちに疑問を抱かせている事でしょう。

更にフランスの Morfontaine がその広野の上の5位にランクされています。これも筆者的にはやや不思議です。

TOP 25

11. Kingston Heath Australia

12. Cape Wickham Links Australia

13. Trump Turnberry (Ailsa) Scotland

14. New South Wales Australia

15. Sunningdale (Old) England

16. Barnbougle Dunes Australia

17. Royal Birkdale England

18. Ballybunion (Old) Ireland

19. Royal Melbourne (East) Australia

20. Casa de Campo (Teeth of the Dog) Dominica Republic

21. Cape Kidnappers New Zealand

22. The National GC of Canada Canada

23. North Berwick Scotland

24. Carnoustie (Championship) Scotland

25. Swinley Forest England


* Casa de Campo Teeth of Dog(上)、 National GC of Canada(中)、 Kingston Heath(下)

 

このランキングカテゴリーで誰もが驚いたのは22位にランクされていたカナダの The National Golf Club of Canada でしょう。

トロント近郊の美しい丘陵地に高低差37mの地形を活かした George & Tom Fazio の名作で、イン後半のルーティングがユニークな事でも知られています。1973年に開発が始まり、2年かけて完成されたコースです。まだ Tom Fazio が叔父 George の下で設計の修行をされていた頃の作品で近年、Tom 自身がコースを修繕しました。

しかしこのコースは他のランキングサイトではカナダの TOP 10 にも入っていなかった Tom Fazio 自身の初期作品であり、何故突然ここに登場してきたのか疑問です。

コースランキングの趣向はモダンコース時代に戻ろうとしているのでしょうか。他のコースの評価は順当なところでしょうか。

TOP 50

26. Kauri Cliffs New Zealand

27. Monte Rei G& CC Portugal

28. Fancourt (Links) S.Africa

29. Valderrama Spain

30. Royal St. George’s England

31. The Club at Nine Bridges S.Korea

32. St. George’s G & CC Canada

33. Mid Ocean Club Bermuda

34. Yas Links Abu Dhabi UAE

35. Naruo GC Japan

36. Bro Hof Slott (Stadium) Sweden

37. Barnbougle Lost Farm Australia

38. Shanqin Bay China

39. Cabot Links Canada

40. Utrechtse GC De Pan Netherlands

41. Lahinch (Old) Ireland

42. Kawana (Fuji) Japan

43. Sunningdale (New) England

44. Lofoten Links Norway

45. Royal Porthcawl Wales

46. Kingsbarns Scotland

47. Leopard Creek S.Africa

48. Royal Lytham & St. Annes England

49. Punta Espada Dominican Republic

50. Diamante (Dunes) Mexico

* Kawana Fuji(上)、 Lofoten Links(中)、 Monte Rei Golf Resort(下)

 

ここでは日本から鳴尾(35位)、 川奈(42位)がランクされています。ゴルフマガジンでは川奈は TOP 100 に入っておりますが、鳴尾は次点となっています。

27位の Monte Rei Golf Resort はポルトガルで TOP 3 に常に紹介されている Jack Nicklaus 設計チームのシグネチャーコースです。

36位にスウェーデンから Bro Hof Slott のスタジアムコースが入っておりますが、スウェーデンには古くから Falsterbo や Stockholms GC など落ち着いたクラシックコースが数多く点在しておりますが、ここでは城館の広大な敷地に出来たモダン設計のトーナメントコースが高く評価されているようです。

44位の Lofoten Links はノルウェーの北極圏にある秘境コースで、夜の時間が5時間を超える8月末からの秋シーズンにかけてゴルフとオーロラ観測が同時に楽しめます。北欧の冬は天候が不安定な日が多いことからオーロラ観測は難しいと言われますが、8月末から10月初旬までは天候も落ち着く日が多く、オーロラ観測には向いています。

47位の南アフリカのLeopard Creek は Gary Player 設計チームの母国ナンバー1のコースで、Kruger National Park に隣接して建設されたゴルフリゾートだけに早朝、夕方になるとキリンや鹿など動物たちがコース内に入ってきてサファリパークのような光景になります。アルフレッドダンヒルカップの開催コースです。

TOP 75

51. Cruden Bay Scotland

52. Hamilton G & CC (West/South) Canada

53. Royal Troon Scotland

54. Rye (Old) England

55. Sentosa GC (Serapong) Singapore

56. Loch Lomond Scotland

57. Victoria GC Australia

58. Metropolitan GC Australia

59. Royal Aberdeen (Balgownie) Scotland

60. Waterville Ireland

61. Tokyo GC Japan

T-62. Portmarnock (Championship) Ireland

T-62. Jack’s Point New Zealand

64. Machrihanish Scotland

65. The Bluffs Ho Tram Strip Vietnam

66. Kinloch GC New Zealand

T-67. Woodhall Spa (Hotchkin) England

T-67. Trump International G Links Scotland

69. St. George’s Hill GC England

70. Royal Adelaide Australia

71. Ganton GC England

72. Castle Stuart GC Scotland

73. Querencia CC Mexico

74. Sheshan International China

75. Fairmont Jasper Park Lodge Canada

* The Bluffs Ho Tram Strip(上)、 Querencia CC(中)、 Cruden Bay(下)

 

英国の名門 Royal Troon や Cruden Bay、Portmarnock、Rye など、GOLF Magazine ではTOP 100のリンクスコースがこのクラスに甘んじているのにやや疑問を持ちますが、TOP 51 から100 まではアジアからの作品が登場してきます。

LIV GOLF の運営にすっかり忙しくなったグレッグ ノーマンは設計チームを立ち上げた時、そのビジネスターゲットは豪州の次にインドネシアのリゾート、そして広大な砂丘地帯を持つベトナムでした。

DaNang GC の設計と共に別荘地開発の総合プロジェクトで成功を収めた後、カナダのディベロッパーから提供された用地は高低差 50 m近くにもなる広大なホーチャム(Ho Tram)の砂丘地帯でした。

The Bluffs Ho Tram Strip はベトナムで最初にワールドランキングに登場したモダンリンクスで、インの4番とアウトの15番の2つのPAR 3におけるレイアウト、ルーティングの流れに疑問を持たれるだけで、それさえ修正できるならば GOLF Magazine でも間違いなく世界 TOP 100 に相応しい作品と評価されるでしょう。DaNang GC と共に、いつかここでLIV GOLFが開催されるのでしょうか。その時はサウジのオイルマネーに代わり、華僑のファンドマネーが一斉にアジア経済を動かす時かも知れません。

73 位の Querencia はメキシコ、バハのコーストラインを望む丘陵地にゴルフ場付き別荘地開発として売り出された Tom Fazio の作品です。開設当初はあまり注目されませんでしたが、ここ数年 Digest では高い評価を得ています。

TOP 76-100

76. Capilano G &CC Canada

T-77. Spring City Golf & Lake Resort (Lake) China

T-77. Royal Liverpool England

T-77. Anyang CC S.Korea

80. The National GC (Moonah) Australia

81. Royal Cinque Port England

82. St. Enodoc ( Church) England

83. Le Club de golf Memphrémagog Canada

84. Jack Nicklaus GC Korea S.Korea

85. Old Head of Kinsale Ireland

86. Le Golf National (Albatros) France

87. Quivira GC Mexico

88. Banff Spring (Thompson) Canada

89. Prestwick Scotland

90. Tobiano G Cse Canada

91. County Sligo GC at Rosses Point(Colt) Ireland

92. Siam CC (Old) Thailand

93. The European Club Ireland

94. Cape Breton Highlands Canada

95. Emirates GC (Majlis) Dubai UAE

96. Toronto GC Canada

97. The Durban CC S.Africa

98. Western Gailes GC Scotland

99. BRG DaNang GC (Norman) Vietnam

100. Gleneagles (King’s) Scotland.


* Quivira GC(上)、 Banff Springs(中)、 Toronto GC Colt Course(下)

 

このカテゴリーで注目したのは83位の Le Club de Golf Memphremagog です。メンバー数僅か 60 名弱、2007年に設立されたこの超プライベートクラブはケベック州モントリオールの東、車で2時間ほどの景勝地 Magog の湖を望む丘陵地にあります。

設計は Tom MacBroom、 彼のカナダのポートフォリオは傑出した作品が数多く見られます。カナダの超セレブ達が中心となって立ち上げ、メンバー全員が VIP、いや CEO 扱いかのようです。気になる入会金、年会費等、お聞きしたところで答えてくれる世界ではありません、ゲストへの対応もメンバーの誇りを汚すことは一切許されない。

このクラブ組織によく似たもので 38 位にランクされる中国海南島の Shanqin Bay があります。Shanqin Bayはフォーブスの長者番付に名を連ねる投資家たち 16 名のメンバーでスタートしたクラブで、ひょっとしたら先に開設された Memphrémagog を参考にしたのかも知れません。

筆者自身、コース写真はスマホで数枚撮影しただけで特別な理由が無い限り公表は一切禁止となっています。もちろん一般の方が閲覧できる HP すら存在せず、メンバーには毎月メールでの報告が届くだけのようです。その隠された名門クラブが突然 US GOLF Digest の米国を除く世界 TOP 100コースにランクされたのですから驚きです。一体何人のパネリストが訪問されたのでしょうか。

カナダからは 10 位の Cabot Cliffs から 96 位の Toronto GC まで何と12コースがランクアップされています。カナダはクラシック時代の名作から今日のモダンコースまで世界レベルの素晴らしい作品が犇めいているのは事実です。

尚、Shanqin Bay は習 近平が行なったゴルフ場開発の汚職問題の一掃から一時その存在すら危ぶまれましたが、フォーブスのソサイティクラブとして閉ざしていたそのメンバー数を100名近くにし、ビジターへの公共性を強調しています。

日本からは戦前に開設された広野、鳴尾、川奈、東京のみ、1960年以降 2,000 ものコースが誕生してきたのに淋しさを感じます。

コース設計の理論がその第一担当者や業者によりビジネス的に歪められてきた結果ではないでしょうか。これからの日本、ゴルフコース改革は大事なテーマの一つでしょう。それにはクラブのメンバー一人一人がコースに関心を持ち、見識を深めていく事が大事です。

* Shanqin Bay GC

 

次回注目すべきコース

GOLF Digest は開設して2年以上経たクラブをノミネートリストにしていますので、GOLF Magazine ですでに TOP 100 入りしているフランスの Le Bordes New Course や、アイルランドの St.Patrick Links などは次回の対象コースになっています。

ここでの最大の注目コースは Cabot Saint Lucia のゴルフ場開発です。Coore & Crenshaw の設計で現在も造成中です。ニュージーランドの Te Arai Links も彼らの作品で、建設中の第二コースは Tom Doak の設計になります。

Cabot Saint Lucia(Point Hardy GC) Saint Lucia

 

Navarino Hills at Costa Navarino( Hills & International Olympic Academy Cse) Greece

Cabot Revelstoke (Cabot Pacific) Canada

Les Bordes GC (New) France

Fasano Las Piedras Urguay

St. Patrick’s Links Ireland

Seven Mile Beach Tasmania

Ballyshear Golf Links at Ban Rakat Club Thailand

Te Arai Links (South) New Zealand

US GOLF Digest が紹介した日本の TOP 15コース
この国別ランキングは日本人パネリストたちの評価結果であるだろうことがこの選出された15コースから判断できます。ここ数年北海道クラシックの評価は高く、茨木CC東コースを再評価している点に注目します。

1. Hirono G.C. Hyogo ★

2. Naruo G.C. Hyogo ★

3. Kawana Hotel (Fiji) Shizuoka ★

4. Tokyo G.C Saitama ★

5. Phoenix C.C. Miyazaki

6. Hokkaido Classic G.C. Hokkaido

7. Yokahama C.C. (West) Kanawaga

8. Kasumigaseki C.C. (East) Saitama

9. Kasumigaseki C.C. (West) Saitama

10. Ibaraki C.C. (West) Osaka

11. Taiheiyo C. (Gotemba) Shizuoka

12. Osaka G.C. Osaka

13. Narita G.C. Chiba

14. Ibaraki C.C. (East) Osaka

15. Kawana Hotel (Oshima) Shizuoka

Text by Masa Nishijima

Photo credit by Masa Nishijima, Larry Lambrecht, Gary Lisbon,

Joann Dost, Brian Morgan, Frank Pont, Toronto GC, NGCC,