No. 23 ゴルフ史を飾るWESTWARD HO ! EASTWARD HO !のホール名称。
![Royal North Devon GC (Westward Ho !)](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/Royal-North-Devon-GC-Westward-Ho-.jpg)
Royal North Devon GC (Westward Ho !)
Westward Ho!(西へ向かえ!)は、チャールズ・キングスレイの海洋冒険小説のタイトルで、その舞台となった村が、村興しとして村名にしました。その海岸線にあるリンクスがRoyal North Devon GCで、その地名にならって通称Westward Ho!と呼ばれています。ちなみに、「!」のような感嘆符がついた町村は、イングランドではここだけでしょう。
米国ボストン郊外、プリマスはイギリスから清教徒たちを乗せたメイフラワー号が着岸したところで知られていますが、この近郊の丘陵地帯に1922年設立されたゴルフクラブが、英国のRoyal North Devonに敬意を表して、Eastward Ho!(東に向かえ!)の名称を付けています。歴史を重んじるゴルファーズジェントルメンたちの友情の証でしょうか。
![Eastward Ho GC](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/Eastward-Ho-GC.jpg)
Eastward Ho GC
2017年度現在、どちらも両国でのTOP100コースにランクされる名コースです。
英国の名門リンクスや米国のアーリーアメリカン時代のクラシックコースには、ホールごとに名称、つまりそのホールの特徴を表すニックネームを付けていますが、真西に向かうホールにWestward Ho! 真東に向かうホールにEastward Ho!のニックネームをつけるコースも少なくありません。
又、日本でも戦前に、JGAの発起人メンバーの一人として、ルールの父とも称され、東京GCや川奈大島コース、大箱根、名古屋和合などを設計された大谷光明氏が、ホールにニックネームをつけるのを得意としました。川奈大島コースのSOSやGood-Byeは有名ですが、最もユニークなのは、打ち下ろしのドライバブル4(1オン可能なPAR4)に、シーザーがゼラの戦いでの勝利をローマの元老院に伝えたVeni Vidi Vici(我、來り、観たり、勝利したり。古典ライン語)の名言を付けたことでしょう。シーザーのこの名言、実は大手煙草メーカー、フィリップモリス社のエンブレムにも使われています。つまりゴルファーにとって、そのホール名だけでもメモラビリティー(印象度)は高くなります。
![川奈 大島コース #13 Par 4 “Veni Vidi Vici”](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/b4056ffe0e27f79175ea5cf85f681ea3.jpg)
川奈 大島コース #13 Par 4 “Veni Vidi Vici”
![川奈 大島コース # 6 PAR 3 “S.O.S”](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/0d329b48ff9aa64e6145e6c4663dfc43.jpg)
川奈 大島コース # 6 PAR 3 “S.O.S”
![フィリップモリス社のエンブレム](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/8e05417488619ad14a9c8eae179c16ab.png)
フィリップモリス社のエンブレム
東京クラシックにもWestward Ho! とEastward Ho!はある。
東京クラシックの16番は西に向かい、17番は逆に東に向かいます。そしてこの二つのホールのグリーンは、バッグ9を飾るに相応しい内容にあります。
まず16番グリーンは、僅か455平米足らずの小さなサイズに、センター手前に2%の勾配度を超えるスウェール(溝)がグリーンフロント手前のスロープに流れていることから、一見、二段グリーンかのようにも見えますが、浅いダブルプラトーグリーン(Double Plateau Green)の形状になっています。
グリーンの左右両端に立つと、センターのスウェールは我々に錯覚を与えます。例えば右サイドに立つと、二段グリーンかのように見えますが、左サイドに立つと、スウェールにより、実際はふたこぶラクダのような形状にあることがわかります。
![東京クラシック 16番G](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/ea92a8a59246799fb42e9e00e46729ee.jpg)
東京クラシック 16番G
トッププロは、ピンが立てられるどちらかのサイドに、デッドに攻めていけることから、バーディマストのホールになるでしょう。しかしもし逆サイドに打球が流たり、スウェールにはまり、グリーン手前に打球が流れ落ちるならば、その勾配度の強さからボギーを覚悟しなくてはならないケースも生まれるでしょう。東京クラシックのWestward Ho!は、セントアンドリューズオールドコース18番グリーンと同じように、陣地手前に「罪の谷間」Valley of Sinを設けているかのようです。
![North Berwick Double Plateau Green](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/North-Berwick-Double-Plateau-Green.jpg)
North Berwick Double Plateau Green
![National Golf Links of America Double Plateau Green](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/National-Golf-Links-of-America-Double-Plateau-Green.jpg)
National Golf Links of America Double Plateau Green
次に東に向かう17番のグリーンは、18ホールの中で最も大きなサイズでしょう。
グリーンセンターからの緩やかなスロープはフロント左手前のハロー部分に流れていき、センターから左右奥への複雑なスロープは、右奥へ急激に落ちていく、フォールアウェイの形状になっています。
![東京クラシック 17番グリーン](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/8c8aeaae5edfd8323fc9f4d79492daa0.jpg)
東京クラシック 17番グリーン
センター付近がさらに盛り上がった形状になると、ピンを切れる箇所は極端に少なくなりますが、Royal Dornochの14番グリーンをオリジナルとし、ドナルド・ロスが丹精込めて作り上げたPinehurst#2の14番に代表されるCrowned Green(戴冠式にかぶる王冠に似たグリーンの形状)になり、トッププロたちを悩ませるグリーンとして、トーナメントでは最高の舞台を演出するでしょう。
ニクラウスは、東京クラシックがプライベートクラブであることから、少しタフさを抑えたのかも知れませんが、ホールロケーションを縦のラインで計った時、手前から攻める基本パターンと後方から攻める逆パターンの二つの攻略法を伝えています。最後のカップインまでEastward Ho!で攻めるか、それとも西日に向かってWestward Ho!を選択するか、大人のゴルファーを愉しませるユニークなグリーンです。
![Pinehurst #2 Crowned Green](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/Pinehurst-2-Crowned-Green.jpg)
Pinehurst #2 Crowned Green
![Royal Dornoch Crowned Green](http://tokyo-classic.jp/wp/wp-content/uploads/2017/03/Royal-Dornoch-Crowned-Green.jpg)
Royal Dornoch Crowned Green
MASA NISHIJIMA