Royal North Devon GC (Westward Ho !)

Royal North Devon GC (Westward Ho !)

Westward Ho!(西へ向かえ!)は、チャールズ・キングスレイの海洋冒険小説のタイトルで、その舞台となった村が、村興しとして村名にしました。その海岸線にあるリンクスがRoyal North Devon GCで、その地名にならって通称Westward Ho!と呼ばれています。ちなみに、「!」のような感嘆符がついた町村は、イングランドではここだけでしょう。

米国ボストン郊外、プリマスはイギリスから清教徒たちを乗せたメイフラワー号が着岸したところで知られていますが、この近郊の丘陵地帯に1922年設立されたゴルフクラブが、英国のRoyal North Devonに敬意を表して、Eastward Ho!(東に向かえ!)の名称を付けています。歴史を重んじるゴルファーズジェントルメンたちの友情の証でしょうか。

Eastward Ho GC

Eastward Ho GC

2017年度現在、どちらも両国でのTOP100コースにランクされる名コースです。

英国の名門リンクスや米国のアーリーアメリカン時代のクラシックコースには、ホールごとに名称、つまりそのホールの特徴を表すニックネームを付けていますが、真西に向かうホールにWestward Ho! 真東に向かうホールにEastward Ho!のニックネームをつけるコースも少なくありません。

又、日本でも戦前に、JGAの発起人メンバーの一人として、ルールの父とも称され、東京GCや川奈大島コース、大箱根、名古屋和合などを設計された大谷光明氏が、ホールにニックネームをつけるのを得意としました。川奈大島コースのSOSGood-Byeは有名ですが、最もユニークなのは、打ち下ろしのドライバブル4(1オン可能なPAR4)に、シーザーがゼラの戦いでの勝利をローマの元老院に伝えたVeni Vidi Vici(我、來り、観たり、勝利したり。古典ライン語)の名言を付けたことでしょう。シーザーのこの名言、実は大手煙草メーカー、フィリップモリス社のエンブレムにも使われています。つまりゴルファーにとって、そのホール名だけでもメモラビリティー(印象度)は高くなります。

川奈 大島コース #13 Par 4 “Veni Vidi Vici”

川奈 大島コース #13 Par 4 “Veni Vidi Vici”

川奈 大島コース # 6 PAR 3 “S.O.S”

川奈 大島コース # 6 PAR 3 “S.O.S”

フィリップモリス社のエンブレム

フィリップモリス社のエンブレム

 

東京クラシックにもWestward Ho! Eastward Ho!はある。

 

東京クラシックの16番は西に向かい、17番は逆に東に向かいます。そしてこの二つのホールのグリーンは、バッグ9を飾るに相応しい内容にあります。

まず16番グリーンは、僅か455平米足らずの小さなサイズに、センター手前に2%の勾配度を超えるスウェール()がグリーンフロント手前のスロープに流れていることから、一見、二段グリーンかのようにも見えますが、浅いダブルプラトーグリーン(Double Plateau Green)の形状になっています。

グリーンの左右両端に立つと、センターのスウェールは我々に錯覚を与えます。例えば右サイドに立つと、二段グリーンかのように見えますが、左サイドに立つと、スウェールにより、実際はふたこぶラクダのような形状にあることがわかります。

東京クラシック 16番G

東京クラシック 16番G

トッププロは、ピンが立てられるどちらかのサイドに、デッドに攻めていけることから、バーディマストのホールになるでしょう。しかしもし逆サイドに打球が流たり、スウェールにはまり、グリーン手前に打球が流れ落ちるならば、その勾配度の強さからボギーを覚悟しなくてはならないケースも生まれるでしょう。東京クラシックのWestward Ho!は、セントアンドリューズオールドコース18番グリーンと同じように、陣地手前に「罪の谷間」Valley of Sinを設けているかのようです。

North Berwick Double Plateau Green

North Berwick Double Plateau Green

National Golf Links of America Double Plateau Green

National Golf Links of America Double Plateau Green

次に東に向かう17番のグリーンは、18ホールの中で最も大きなサイズでしょう。

グリーンセンターからの緩やかなスロープはフロント左手前のハロー部分に流れていき、センターから左右奥への複雑なスロープは、右奥へ急激に落ちていく、フォールアウェイの形状になっています。

東京クラシック 17番グリーン

東京クラシック 17番グリーン

センター付近がさらに盛り上がった形状になると、ピンを切れる箇所は極端に少なくなりますが、Royal Dornoch14番グリーンをオリジナルとし、ドナルド・ロスが丹精込めて作り上げたPinehurst#214番に代表されるCrowned Green(戴冠式にかぶる王冠に似たグリーンの形状)になり、トッププロたちを悩ませるグリーンとして、トーナメントでは最高の舞台を演出するでしょう。

ニクラウスは、東京クラシックがプライベートクラブであることから、少しタフさを抑えたのかも知れませんが、ホールロケーションを縦のラインで計った時、手前から攻める基本パターンと後方から攻める逆パターンの二つの攻略法を伝えています。最後のカップインまでEastward Ho!で攻めるか、それとも西日に向かってWestward Ho!を選択するか、大人のゴルファーを愉しませるユニークなグリーンです。

Pinehurst #2 Crowned Green

Pinehurst #2 Crowned Green

Royal Dornoch Crowned Green

Royal Dornoch Crowned Green

 

MASA NISHIJIMA