nicklaus 12 holes

サブプライム、リーマンショック以降の相次ぐゴルフコースの閉鎖、そしてゴルフ人口の減少、第2期オバマ政権の時代に好景気を戻し、失業率を3~4%に下げたにも関わらず、コースの閉鎖は続くし、ゴルフ人口は僅かにしか戻ってこない。何故だろうか・・それを考えた時、思い出すのが2011年のGCSAAやPGA Showの大会で、帝王ニクラウスが考案した18ホールコースを12ホールにする構想を思い出す。当時は市営のコースですら運営に悲鳴をあげ、閉鎖したコースもあったほどだった。ゴルフ人口の多いサンフランシスコの市営コースシャープパークでさえそんな噂は絶えなかった。(絶滅危惧種のカエルが生息していたこともあったが)
ニクラウス氏が述べた12ホール構想の内容で興味を持ったのは、ゴルフというスポーツが、若者たちに与える時間の拘束である。
彼は2時間半が限界ではないか? ならば管理コストも押さえる意味でも、市営及びパブリックコースは12ホール構想を考えたらどうだろうか?
36ホールの大会は3日間かけてやればいいだけだ、とも述べておられた。
実際、彼は数年後のレイバーズディに、ホームコース、ミュアフィールドヴィレッジで、12ホールトーナメントを開催している。
ゴルフ創世記、スコットランドリンクスは、ホール数などまちまちであった。5ホールのところもあれば、7ホールのところもあった。それがトーナメントを行うようになり、まず7ホールで3ラウンドの計21ホールが基準となったが、その後、セントアンドリューズオールドコースと西の名門プレストウィックが当時12ホールコースであったことから、3ラウンド計36ホールがトーナメントの基準となった。1860年第一回ジ・オープンが開催されたプレストウィックでは、3ラウンド計36ホールにおけるストロークプレーで行われた。
結果はマッセルバラ所属のウィリーパークとプレスウィック所属のトムモリスの一騎打ちになり、パークが174ストロークで優勝を果たした。
ジ・オープンはその後、11回大会までプレストウィックを会場とした。
このようにニクラウス氏が語る12ホールでの3ラウンドのフォーマットは、トーナメントの起源であることをもう一度認識すべきではないだろうか。

prestwick.12 holes jpg

何故にオリムピックのフォーマットに活用されなかったのか・・ 

リオでの五輪ゴルフの競技フォーマット、18ホール4日間のストロークプレーは、明らかにオリムピックの競技にそぐわないものだった。ゴルフをあまり知らない者にとって、メダリストが決まるまでこれほど退屈な競技はないと感じただろう。
ニクラウス氏がもし12ホールのフォーマットを、IGF, IOCに意見して下さったのならば、オリムピックゴルフのイメージは大きく変わっていたと思う。
そして今、このニクラウス氏が提言された12ホール論は、米国本土だけでなく、豪州などでも浸透し始めている。彼自身もユタ州レッドリッジスの2ndコースとして、12ホールのPAR3コースを設計し、誰もが楽しめるゴルフパークとして、大人から子供まで、好きな時間に来て楽しんでいる。
ゴルフ先進国である日本であるのに、パブリックコースの数は10%にも満たない。しかしメンバーよりもビジターを優先するような所謂「ナンちゃってメンバーコース」が数多くを占める今日、これらのクラブはパブリックを堂々と公表し、将来的に12ホールコースの構成も考慮するならば、ニクラウス氏が望むゴルフ人口の減少を押さえる一役を成してくれるはずだ。

相対して、真のプライベートコースのあり方についてちょっと語りたい。
欧米の名門では、メンバーたちは自由気ままに好きな時間にやってきては、いつの間にか家路へと向かう。18ホールを3時間ちょっと回り、クラブハウスで夕方近くまで寛いでいるメンバーもいれば、仕事帰りに数ホールをプレーしては家路につく人など様々である。日本の大半のメンバーコースは、定められた時間に来て、18ホールをプレーし、ゴルフに丸一日の時間を費やしている。確かに”メンバーコース”に違いないが、私がこれまで唱えてきた”プライベートコース”の世界、つまり心落ちつけるAtmosphereの空間を感じ取ることはできない。昨年末、メディアへのグランドオープニングを迎えるにあたり、コース解説をするために久しぶりに東京クラシックにお邪魔した。私が到着した11時の段階で、何人かのメンバーたちがすでにホールアウトし、帰路に向かう光景を目にした。驚いた。支配人に尋ねた。「彼らは9ホールだけプレーされたのですか?」 支配人は胸を張って答えた。「いえ、18ホールをプレーされています。」それは私が日本で見たかった真のクラブライフの光景だった。
東京クラシックは一般で言うメンバーコースではない、だがプライベートコースである。東京クラシックのメンバーは、コース設計されたニクラウス氏が唱えた12ホール論を理解出来る数少ないゴルファーたちかも知れない。

MASA NISHIJIMA