Koharu ©︎Tokyo Classic

小春(こはる)が東京クラシックで産まれてから2ヶ月。早くも、馬主クラブのアイドル?!となった彼女の存在は、記事用にとお送り頂いたお写真を見れば、一目瞭然。ただそこに立って居るだけでも、寝ているだけも、可愛らしいのです。

©︎Tokyo Classic

東京クラシックには、その開設当初から馬が共存してきました。ただ、その馬たちの多くはブリティッシュやウェスタンなどの馬術競技を専門とした競技馬か、競馬を引退した元競走馬でした。

その中で産まれた木曽馬の小春。もちろん、いずれも馬であることに間違いありませんが、その暮らしぶりは随分異なります。

例えば、先の馬たちが厩舎で飼養されているのに対し、小春は昼夜を通して広大な放牧地で暮らしています。

また、厩舎で飼養される馬たちが、人の手からホースフィードや乾草を食べるのに対し、小春は笹や自生する草を主食としています。

こうして文字に表すと、厩舎で飼われることを「狭くて窮屈」だと思われるかも知れません。反対に、放牧場で雨に濡れる小春の姿を想像すれば「かわいそう」だと感じられるかも知れません。

「馬は動物だから、自然のままが良い」というのもまた異なります。競技馬や競走馬は、産まれる前から人が介在しています。そのため、人と共存することに長け、厩舎暮らしも厭わず、スポーツに適した身体を健康に保つためには、ホースフィードも欠かせません。

毛色が違えば暮らしも異なるのが馬。さらに、人が馬に求める「役割」もまた異なります。競技馬や競走馬が、人を乗せ、人を楽しませてくれるのに対し、小春は「人と共に働く馬」として、この世に生を享けたのです。

©︎Tokyo Classic

東京クラシックのゴルフコースの周囲には、まだまだ未開拓の森が残っています。そして、この森の整備に率先して取り組んできたのが、馬主クラブ・マネージャーの三成拓也氏でした。

馬道を作り、外乗を楽しむも良し、馬場を作り颯爽と走るのも良し、はたまた馬たちがリフレッシュできる放牧場があれば尚良し。ただし、重機で切り崩すのでは無く、森の自然環境を壊さない程度に共生すること。それが三成氏のこだわりでもありました。

ところが、人の手だけでは遅々として進まないのが現実。そこで目をつけたのが、馬車や馬搬、馬耕といった「馬の力」でした。そして、三成氏の熱い思いに賛同したのが馬搬振興会の岩間隆敬氏。両氏は2018年夏の初対面以来、熟考を重ね、2020年2月1日、ついに3頭の「働く馬」たちが東京クラシックにやってきたのです。

彼らが森に入り、踏み均すことで道ができ、繁茂する笹を食べることで、森に光や風が通りやすくなります。鬱蒼とした森を相手に、人の力だけでは途方も無い作業も馬の力を借りれば効率的かつ効果的に捗り、目下、開拓の一番手として活躍しています。

©︎Tokyo Classic

そして、その中の一頭、琴姫こそが、後に産まれる小春の母馬でした。出産の約2ヶ月前ですから、既にお腹はパンパン。さらに、迎え入れる東京クラシックでは初めての出産。しかも希少な木曽馬の仔とあって、小春は産まれる前から周囲の注目を集めていたのです。

ただ、出産については放牧場での超自然分娩。4月21日の夜、三成氏がこっそりと様子を見に行くと、産まれた直後がらしっかりと立ち上がり、琴姫の母乳を飲んでいたのだそうです。

その後は、人のみならず、オトナ馬たちもすっかり小春ペース。小春が走ればそれを追いかけ、小春が眠れば静かにそれを見守る。今、小春は溢れんばかりの愛情を一身に受け、健やかに成長しています。

「小春には、東京クラシックの”象徴”になって欲しいですね」と話すのは、父親代わりが板についてきた三成氏。馬からも人からも、大切に大切に育てられている小春が、真のカントリークラブ・東京クラシックの顔となる日はそう遠く無いことでしょう。

その日を心待ちにしながら、まずはあどけない小春の姿を一目見たい!という思いが募るばかりです。

Koharu & Takuya Minari ©︎Tokyo Classic

 

 

MILKY KORA

馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。