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時代は下り、文明が発達し、文化が成熟すると共に、人と馬との絆も新たな局面を迎えます。

中でも、馬への価値を決定づけたのが、戦力への登用でした。隣国の土地を侵略し、統治するためには、馬が必要不可欠。言い換えれば、優れた馬を有する国だけが、広大な領土の支配を可能にしたのです。

特に、大陸では馬こそ国力の証。列国が挙って駿馬の生産に乗り出し、またその血を求めて侵略と支配を繰り返しました。

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現在、優に200を超える馬の品種には、土地の名前が数多くみられます。もちろん、品種として区分され、制定されたのはずっと後になってからのことですが、その土地が豊かな土壌を有し、国を支える馬産地として古くから栄えてきたことは言うまでもありません。

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然し乍ら、馬産だけで駿馬を語れないこともまた、人と馬との『特別な絆』。馬に最も求められてきた能力とは、実は人への忠誠心なのです。

他馬に勝るスピードも、長く走るスタミナも、敵地に深く攻め込む勇気も重要ですが、戦地で何より試されるのは人と馬との信頼関係。臨戦体勢においても、乗り手に忠誠を誓う馬こそが駿馬と讃えられたのです。

反対に、馬も人に相応の能力を求めます。当然、手綱を取るのは人ですから、乗り手が優秀で無ければ、馬もおちおち命を預けられません。そして、冷静かつ正確に、優れた手綱捌きを発揮するために、乗り手は鍛錬を重ね、腕を磨くことで、彼らの信頼に応えてきたのです。

まさに、命を懸けた人馬一体。

近世では、荷役としても戦力としても、その役割を終えた馬。それでも、スポーツや娯楽に形を変え、今なお世界中で多くの人々が馬との『特別な絆』を楽しんでます。

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MILKY KORA

馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。