GOLF Atmosphere No.91/US GOLF Digest 誌発表 2022-23年度 米国を除くワールドゴルフコースランキング
今回は米国ゴルフダイジェスト誌が隔年で発表する米国のゴルフコースを除く世界TOP100コースをご紹介しましょう。
2004年にスタートし、その後は選考委員会を英国の提携誌 GOLF World 誌に委託し、現在は Planet GOLF として Digest 本体が行っています。発足当時、世界にディストリビューターを持つ GOLF Digest が各国の支部に Rater たる評価委員を任せたことから、そのコースランキングは疑問との酷評を受けた事から一時廃止され、2017年に選考システムを変えて再出発されました。
タイガー人気から PGA ツアーはスポンサーを集め繁栄する中、リーマンショックの流れから多くのゴルフコースが閉鎖に追い込まれた2010年代前半、紙媒体もネットのパワーに押されも危機的状況にありました。
GOLF Digest は60年代からの歴史を誇るゴルフコース選定を残す為に、全米の各州に点在する1,000人を超えるパネリストたちの他に、彼らから推薦を受けたパネリスト数千人から会費を取り、コースランキングの運営を保持してきました。海外のディストリビューターが推薦したパネリストたちの扱いは定かではありませんが、ワールドランキングに関して世界のゴルフコースマニアたちの間では某コースは過大評価ではないか?、などまだまだ物議を交わしているようです。
それではTOP10からご紹介していきましょう。
TOP 10
1. Royal County Down N.Ireland
2. Tara iti New Zealand
3. Royal Dornoch Scotland
4. Royal Melbourne (West) Australia
5. Morfontaine France
6. Hirono Japan
7. Muirfield Scotland
8. Royal Portrush (Dunluce) N.Ireland
9. St. Andrews(Old) Scotland
10. Cabot Cliffs Canada
米国のゴルフコースを除くこのワールドランキングがスタートしてから今日まで常にナンバー 1に君臨しているのは北アイルランドの Royal County Down です。
驚くのはスコットランドの名門 Royal Dornoch を退け、堂々の2位にニュージーランドでの Tom Doak の新設 Tara Iti がランクされていることです。
更に The Open の会場でも知られる名門 Muirfield、Royal Portrush、聖地 St. Andrews Old Course より上に日本の広野が高く評価されています。Martin Ebert率いる設計チームが戦前の広野への復元をテーマにリノベーションしましたが、果たしてその結果がこの6位の評価に繋がったのでしょうか? これは多くのゴルフコースマニアたちに疑問を抱かせている事でしょう。
更にフランスの Morfontaine がその広野の上の5位にランクされています。これも筆者的にはやや不思議です。
TOP 25
11. Kingston Heath Australia
12. Cape Wickham Links Australia
13. Trump Turnberry (Ailsa) Scotland
14. New South Wales Australia
15. Sunningdale (Old) England
16. Barnbougle Dunes Australia
17. Royal Birkdale England
18. Ballybunion (Old) Ireland
19. Royal Melbourne (East) Australia
20. Casa de Campo (Teeth of the Dog) Dominica Republic
21. Cape Kidnappers New Zealand
22. The National GC of Canada Canada
23. North Berwick Scotland
24. Carnoustie (Championship) Scotland
25. Swinley Forest England
このランキングカテゴリーで誰もが驚いたのは22位にランクされていたカナダの The National Golf Club of Canada でしょう。
トロント近郊の美しい丘陵地に高低差37mの地形を活かした George & Tom Fazio の名作で、イン後半のルーティングがユニークな事でも知られています。1973年に開発が始まり、2年かけて完成されたコースです。まだ Tom Fazio が叔父 George の下で設計の修行をされていた頃の作品で近年、Tom 自身がコースを修繕しました。
しかしこのコースは他のランキングサイトではカナダの TOP 10 にも入っていなかった Tom Fazio 自身の初期作品であり、何故突然ここに登場してきたのか疑問です。
コースランキングの趣向はモダンコース時代に戻ろうとしているのでしょうか。他のコースの評価は順当なところでしょうか。
TOP 50
26. Kauri Cliffs New Zealand
27. Monte Rei G& CC Portugal
28. Fancourt (Links) S.Africa
29. Valderrama Spain
30. Royal St. George’s England
31. The Club at Nine Bridges S.Korea
32. St. George’s G & CC Canada
33. Mid Ocean Club Bermuda
34. Yas Links Abu Dhabi UAE
35. Naruo GC Japan
36. Bro Hof Slott (Stadium) Sweden
37. Barnbougle Lost Farm Australia
38. Shanqin Bay China
39. Cabot Links Canada
40. Utrechtse GC De Pan Netherlands
41. Lahinch (Old) Ireland
42. Kawana (Fuji) Japan
43. Sunningdale (New) England
44. Lofoten Links Norway
45. Royal Porthcawl Wales
46. Kingsbarns Scotland
47. Leopard Creek S.Africa
48. Royal Lytham & St. Annes England
49. Punta Espada Dominican Republic
50. Diamante (Dunes) Mexico
ここでは日本から鳴尾(35位)、 川奈(42位)がランクされています。ゴルフマガジンでは川奈は TOP 100 に入っておりますが、鳴尾は次点となっています。
27位の Monte Rei Golf Resort はポルトガルで TOP 3 に常に紹介されている Jack Nicklaus 設計チームのシグネチャーコースです。
36位にスウェーデンから Bro Hof Slott のスタジアムコースが入っておりますが、スウェーデンには古くから Falsterbo や Stockholms GC など落ち着いたクラシックコースが数多く点在しておりますが、ここでは城館の広大な敷地に出来たモダン設計のトーナメントコースが高く評価されているようです。
44位の Lofoten Links はノルウェーの北極圏にある秘境コースで、夜の時間が5時間を超える8月末からの秋シーズンにかけてゴルフとオーロラ観測が同時に楽しめます。北欧の冬は天候が不安定な日が多いことからオーロラ観測は難しいと言われますが、8月末から10月初旬までは天候も落ち着く日が多く、オーロラ観測には向いています。
47位の南アフリカのLeopard Creek は Gary Player 設計チームの母国ナンバー1のコースで、Kruger National Park に隣接して建設されたゴルフリゾートだけに早朝、夕方になるとキリンや鹿など動物たちがコース内に入ってきてサファリパークのような光景になります。アルフレッドダンヒルカップの開催コースです。
TOP 75
51. Cruden Bay Scotland
52. Hamilton G & CC (West/South) Canada
53. Royal Troon Scotland
54. Rye (Old) England
55. Sentosa GC (Serapong) Singapore
56. Loch Lomond Scotland
57. Victoria GC Australia
58. Metropolitan GC Australia
59. Royal Aberdeen (Balgownie) Scotland
60. Waterville Ireland
61. Tokyo GC Japan
T-62. Portmarnock (Championship) Ireland
T-62. Jack’s Point New Zealand
64. Machrihanish Scotland
65. The Bluffs Ho Tram Strip Vietnam
66. Kinloch GC New Zealand
T-67. Woodhall Spa (Hotchkin) England
T-67. Trump International G Links Scotland
69. St. George’s Hill GC England
70. Royal Adelaide Australia
71. Ganton GC England
72. Castle Stuart GC Scotland
73. Querencia CC Mexico
74. Sheshan International China
75. Fairmont Jasper Park Lodge Canada
英国の名門 Royal Troon や Cruden Bay、Portmarnock、Rye など、GOLF Magazine ではTOP 100のリンクスコースがこのクラスに甘んじているのにやや疑問を持ちますが、TOP 51 から100 まではアジアからの作品が登場してきます。
LIV GOLF の運営にすっかり忙しくなったグレッグ ノーマンは設計チームを立ち上げた時、そのビジネスターゲットは豪州の次にインドネシアのリゾート、そして広大な砂丘地帯を持つベトナムでした。
DaNang GC の設計と共に別荘地開発の総合プロジェクトで成功を収めた後、カナダのディベロッパーから提供された用地は高低差 50 m近くにもなる広大なホーチャム(Ho Tram)の砂丘地帯でした。
The Bluffs Ho Tram Strip はベトナムで最初にワールドランキングに登場したモダンリンクスで、インの4番とアウトの15番の2つのPAR 3におけるレイアウト、ルーティングの流れに疑問を持たれるだけで、それさえ修正できるならば GOLF Magazine でも間違いなく世界 TOP 100 に相応しい作品と評価されるでしょう。DaNang GC と共に、いつかここでLIV GOLFが開催されるのでしょうか。その時はサウジのオイルマネーに代わり、華僑のファンドマネーが一斉にアジア経済を動かす時かも知れません。
73 位の Querencia はメキシコ、バハのコーストラインを望む丘陵地にゴルフ場付き別荘地開発として売り出された Tom Fazio の作品です。開設当初はあまり注目されませんでしたが、ここ数年 Digest では高い評価を得ています。
TOP 76-100
76. Capilano G &CC Canada
T-77. Spring City Golf & Lake Resort (Lake) China
T-77. Royal Liverpool England
T-77. Anyang CC S.Korea
80. The National GC (Moonah) Australia
81. Royal Cinque Port England
82. St. Enodoc ( Church) England
83. Le Club de golf Memphrémagog Canada
84. Jack Nicklaus GC Korea S.Korea
85. Old Head of Kinsale Ireland
86. Le Golf National (Albatros) France
87. Quivira GC Mexico
88. Banff Spring (Thompson) Canada
89. Prestwick Scotland
90. Tobiano G Cse Canada
91. County Sligo GC at Rosses Point(Colt) Ireland
92. Siam CC (Old) Thailand
93. The European Club Ireland
94. Cape Breton Highlands Canada
95. Emirates GC (Majlis) Dubai UAE
96. Toronto GC Canada
97. The Durban CC S.Africa
98. Western Gailes GC Scotland
99. BRG DaNang GC (Norman) Vietnam
100. Gleneagles (King’s) Scotland.
このカテゴリーで注目したのは83位の Le Club de Golf Memphremagog です。メンバー数僅か 60 名弱、2007年に設立されたこの超プライベートクラブはケベック州モントリオールの東、車で2時間ほどの景勝地 Magog の湖を望む丘陵地にあります。
設計は Tom MacBroom、 彼のカナダのポートフォリオは傑出した作品が数多く見られます。カナダの超セレブ達が中心となって立ち上げ、メンバー全員が VIP、いや CEO 扱いかのようです。気になる入会金、年会費等、お聞きしたところで答えてくれる世界ではありません、ゲストへの対応もメンバーの誇りを汚すことは一切許されない。
このクラブ組織によく似たもので 38 位にランクされる中国海南島の Shanqin Bay があります。Shanqin Bayはフォーブスの長者番付に名を連ねる投資家たち 16 名のメンバーでスタートしたクラブで、ひょっとしたら先に開設された Memphrémagog を参考にしたのかも知れません。
筆者自身、コース写真はスマホで数枚撮影しただけで特別な理由が無い限り公表は一切禁止となっています。もちろん一般の方が閲覧できる HP すら存在せず、メンバーには毎月メールでの報告が届くだけのようです。その隠された名門クラブが突然 US GOLF Digest の米国を除く世界 TOP 100コースにランクされたのですから驚きです。一体何人のパネリストが訪問されたのでしょうか。
カナダからは 10 位の Cabot Cliffs から 96 位の Toronto GC まで何と12コースがランクアップされています。カナダはクラシック時代の名作から今日のモダンコースまで世界レベルの素晴らしい作品が犇めいているのは事実です。
尚、Shanqin Bay は習 近平が行なったゴルフ場開発の汚職問題の一掃から一時その存在すら危ぶまれましたが、フォーブスのソサイティクラブとして閉ざしていたそのメンバー数を100名近くにし、ビジターへの公共性を強調しています。
日本からは戦前に開設された広野、鳴尾、川奈、東京のみ、1960年以降 2,000 ものコースが誕生してきたのに淋しさを感じます。
コース設計の理論がその第一担当者や業者によりビジネス的に歪められてきた結果ではないでしょうか。これからの日本、ゴルフコース改革は大事なテーマの一つでしょう。それにはクラブのメンバー一人一人がコースに関心を持ち、見識を深めていく事が大事です。
次回注目すべきコース
GOLF Digest は開設して2年以上経たクラブをノミネートリストにしていますので、GOLF Magazine ですでに TOP 100 入りしているフランスの Le Bordes New Course や、アイルランドの St.Patrick Links などは次回の対象コースになっています。
ここでの最大の注目コースは Cabot Saint Lucia のゴルフ場開発です。Coore & Crenshaw の設計で現在も造成中です。ニュージーランドの Te Arai Links も彼らの作品で、建設中の第二コースは Tom Doak の設計になります。
Cabot Saint Lucia(Point Hardy GC) Saint Lucia
Navarino Hills at Costa Navarino( Hills & International Olympic Academy Cse) Greece
Cabot Revelstoke (Cabot Pacific) Canada
Les Bordes GC (New) France
Fasano Las Piedras Urguay
St. Patrick’s Links Ireland
Seven Mile Beach Tasmania
Ballyshear Golf Links at Ban Rakat Club Thailand
Te Arai Links (South) New Zealand
US GOLF Digest が紹介した日本の TOP 15コース
この国別ランキングは日本人パネリストたちの評価結果であるだろうことがこの選出された15コースから判断できます。ここ数年北海道クラシックの評価は高く、茨木CC東コースを再評価している点に注目します。
1. Hirono G.C. Hyogo ★
2. Naruo G.C. Hyogo ★
3. Kawana Hotel (Fiji) Shizuoka ★
4. Tokyo G.C Saitama ★
5. Phoenix C.C. Miyazaki
6. Hokkaido Classic G.C. Hokkaido
7. Yokahama C.C. (West) Kanawaga
8. Kasumigaseki C.C. (East) Saitama
9. Kasumigaseki C.C. (West) Saitama
10. Ibaraki C.C. (West) Osaka
11. Taiheiyo C. (Gotemba) Shizuoka
12. Osaka G.C. Osaka
13. Narita G.C. Chiba
14. Ibaraki C.C. (East) Osaka
15. Kawana Hotel (Oshima) Shizuoka
Text by Masa Nishijima
Photo credit by Masa Nishijima, Larry Lambrecht, Gary Lisbon,
Joann Dost, Brian Morgan, Frank Pont, Toronto GC, NGCC,