GOLF Magazineでは昨年世界TOP100コースを発表する際、英国 & アイルンラド、欧州 & アフリカ、豪州オセアニアなど各地域別でのコースランキングを行う計画が持ち上がり、この度その第一回目として、米国人ゴルファー達が最も憧れるリンクス巡礼の旅、更に昨今話題の新作コースが多かった英国 & アイルランドにフォーカスをあて、コースランキングに挑戦致しました。

1. St. Andrews (Old) Scotland

2. Royal County Down N. Ireland

3. Royal Dornoch Scotland

4. Muirfield Scotland

5. Royal Portrush (Dunluce) N.Ireland

6. Trump Turnberry (Ailsa) Scotland

7. Sunningdale (Old) England

8. Royal St. George’s England

9. Ballybunion (Old) Ireland

10. North Berwick (West) Scotland

Top 3コース St.Andrews Old(上)、Royal County Down(中)、Royal Dornoch(下)

TOP 3 コースは St. Andrews Old Course、北アイルランドの Royal County Down、 そして20世紀初頭コース設計家としてアメリカンドリームを成した Donald Ross の故郷でもある Royal Dornoch です。

今世紀に入り、リンクスコースの評価にはそのコースが歴史上どれだけコース設計分野に影響を与えたかが高く評価される要因の一つにもなりました。

例えば St. Andrews Old Course の攻略の愉しさは、人の手が入った19世紀のリンクス時代から設計家たちにはバイブルかのように崇められてきました。オーガスタナショナルを設計した Alister Mackenzie は著「The Spilit of St.Andrews」でも書かれているように生涯オールドコースのグリーンを探求し、Man-made の世界でそれを造り上げようと試みました。

また米国ゴルフ界の父と称えられ、クラシック設計の定義となるテンプレートホールを完成させた B. Macdonald もそのテンプレートホールの半数は、オールドコースの攻略理論を伝えるものでした。

Royal County Down は世界コースランキングが始まった83年から2019/20年まで常に TOP 10 内に君臨していましたが、前回初めて12位にランクを落としました。しかしながら GOLF Digest 誌の米国を除くワールドコースランキングでは St. Andrews Old Course を押え1位の座に君臨しています。つまりリンクスでありながら、自身が描く攻略法さえしっかりと整えれば良い結果に結びつくフェアなコースと捉えられているのでしょう。

同等の評価にあるアイルランドの名門 Ballybunion のリンクスとは対照的なイメージです。キング・オブ・リンクスと評されている Muirfield も同様で、GOLF Magazine では83年のランキング 1位から始まり、19/20年までTOP 10を外すことはありませんでした。しかし前回は惜しくも11位に甘んじています。

Muirfield は世界最古のゴルフソサイティクラブ、The Honourable Company of Edinburgh Golfers が最後に辿り着き、メンズオンリーのクラブ組織を形成してきた名門ですが、昨今のジェンダー社会の風潮、その流れから R&A との協議の結果、2017年に女性にもメンバーへの門を開放しました。その影響からか、今年は初めて AIG 全英女子オープンが開催され話題を呼びました。

しかしパネリストやリンクスマニア達にはここ数年における Muirfield のコースセッティングの甘さ、多分これはフェスキューのラフラインの出し方を指摘されていると思われますが、コースにもあったメンズクラブ時代の厳格さを惜しむ意見もあるようです。

注目すべきは Muirfield の隣町にある North Berwick GC West Course が年々高い評価を得ていることです。

世界中で最もインスパイアされたテンプレートホール、Redan(15番)やDouble Plateau(16番)の元祖があることでも知られていますが、かつてはメインテナンスが行き届かないスコットランドの枯れたリンクスであり、マニア達からはオールドコースへの巡礼街道の拠点かのように崇められていました。

それがビッグバンから10年経た辺りからの経済の成長と共に米国ファンドがスコットランドにも入るようになり、名門リンクスにおける管理コストは大幅に増し、メインテナンスの状況は一変しました。

North Berwick もその一例で、2007年に世界 TOP 100コース入りを果たすと年々ランキングを上げ、前回は遂に35位にまでなりました。ここでも堂々のTOP 10入りです。スコットランドリンクスへの評価基準を大きく変える一例です。

TOP 11 – 25 コース

11. Lahinch Ireland

12. Carnoustie (Championship) Scotland

13. St. Patrick’s Links Ireland

14. Royal Birkdale England

15. Swinley Forest England

16. Woodhall Spa(Hotchkin) England

17. Portmarnock(Old) Ireland

18. Royal Lytham & St.Annes England

19. Prestwick Scotland

20. Cruden Bay(Championship) Scotland

21. Royal Troon (Old) Scotland

22. St. George’s Hill (Red & Blue) England

23. Sunningdale (New) England

24. Rye England

25. Ardfin Scotland

このクラスで注目したいのは1世紀前後の歴史を誇る名門が犇めく中、二つの新設、アイルランドの Rosapenna Golf Resort の第3コース、St. Patrick’s Links とスコットランドのジュラ島に開発された Ardfin がそれぞれ13位、25位にランクされたことです。

St. Patrick’s は名匠 Tom Doak の新作で、砂丘の特徴を生かした18ホールのルーティングプランが絶賛されています。カナダのゴルフディベロッパーで Bandon Dunes の開発者 Mike Keiser 氏をバックに成長を続ける Cabot Group が、スコットランドの Castle Stuart GC の買収と隣接する420エーカーの土地の借地権を得て、そこを Cabot  Highlands Resort として Tom Doak に第2コースを設計させる計画がスタートしています。2024年にプレオープンを予定し、長く停まっていたビッラの建設計画も予定されています。

大自然のジュラ島に2017年にグランドオープンした ArdfinはThe Estate Resort を目的とした総合開発で、Jura, The Quads の二つのラグジュアリーホテルを備えています。コース設計は長く Greg Norman の設計チームでアソシエイトを務めた Bob Harrison で、前回の世界コースランキングで一躍74位に登場し脚光を浴びました。Norman チームの作品では、The National Moonah、 Ellerston、 Nirwana Bali(閉鎖中)などは彼が設計のリーダーとして活躍した時の作品でした。

* St. Patrick’s Links(上) Ardfin The Estate(下)

TOP 26 – 50 コース

26. Kingsbarns Scotland

27. Royal Liverpool England

28. Machrihanish Scotland

29. Royal Cinque Ports England

30. Cabot Highland (Castle Stuart) England

31. St.Enodoc(Church) England

32. Walton Heath(Old) England

33. Royal Porthcawl Wales

34. Ganton England

35. Royal Aberdeen(Balgownie) Scotland

36. Askernish Scotland

37.Trump International Scotland Scotland

38. Royal West Norfolk England

39. Waterville Ireland

40. Notts England

41.West Sussex England

42. Silloth on Solway England

43. Royal Worlington & Newmarket England

44. Gleneagles(King’s) Scotland

45. Western Gailes Scotland

46. Woking England

47. Loch Lomond Scotland

48. Alwoodley England

49. Gullane(#1) Scotland

50. County Louth Ireland

ここで注目してほしいのは、世界 TOP 100 に選出されずともそれに等しい評価を受けていたコースがランクドアップしていることです。

例えば前回のワールドランキングで77位だった Cabot Highland Castle Stuart Course が101~150位の Royal Cinque Port より低く評価されています。また、31位の St.Enodoc GC Church Course が、ここではかつて世界 TOP 100の常連だった Walton Heath Old Course やウェールズの Royal Porthcawl より高い評価にあります。しかしリンクスマニアにとってこの評価結果は嬉しい報せかも知れません。

世界 TOP 100の常連であった北イングランドの名門 Ganton GCは、Vardon, Ray、 Braid, Taylor、 Willie Dunn、 Harry Colt 等、20世紀初頭から著名な名手、設計家たちによって改造を繰り返してきた歴史があるコースで、これまで Ryder Cup、Curtis Cup、Walker Cup の会場にもなりました。しかしながら2017年の89位を最後に世界ランキングから姿を消しています。名匠 Harry Colt のサークルグリーンやバンカーのダイアゴナルな対角線の配列などその戦略性が随所に見られる名コースです。ですがリンクスの砂丘ではないインランドの条件にあるクラシックなトーナメントコースであるだけに、コース評価の視点が変わると厳しい採点を出すスクラッチクラスの腕前のパネリスト達もいたことでしょう。

今回ここで Ganton は34位にランクアップされていますが、コース設計論をゴルフ文化として伝えるならば常に上位にランクしてほしいクラブの一つです。

スコットランドのサウスウイスト島(South Uist)の秘境コース、Askernish GC は Old Tom Morris 設計の隠れた名コースと言われ続けていましたが、Bandon Dunes のオーナー、Mike Keiser や著名設計家たちが発起人となってコースのリノベーションファンドを立ち上げ、ここ数年一気に注目されるリンクスになりました。

実はスコットランドではリンクスマニアの米国人投資家たちによるファンドでコースが再生されたケースは少なくありません。また彼らは著名設計家を用いて本場リンクスの大地に新設コースを建設しようとしています。

* Royal Cinque Port(上)、 St. Enodoc(中)、 Askernish GC(下)

昨今高騰し続けるスコットランドリンクスのグリーンフィですが、その発端となったのは93年米国アリゾナのディベロッパーによってローモンド湖の畔に開設された Loch Lomond GC でしょう。

設計はかつて Nicklaus 設計チームのエースとして活躍した Jay Morrish(1936 – 2015)で、彼は90年代に入ると Tom Weiskopf (1942-2022) とのコンビで、アリゾナを拠点に名作を次々と発表していきます。95年には世界 TOP 100の44位に突然登場したほどの評価でしたが、地元スコットランドではその話題はコースよりも高額なビジターのグリーンフィにありました。まだ St.Andrews Old Course のグリーンフィがまだ £ 50~75 ポンドだった時代に Loch Lomond は乗用カート付きでなんと £ 250 ポンドもの高額グリーンフィで、地元民には何の特典、還元もなく、彼らのターゲットはセレブなメンバーと米国からやってくるゴルファーたちでした。$ 換算すれと当事の Pebble Beach のグリーンフィとほぼ同額でした。

リーマンショックの影響から£ 13200万ポンドもの負債を抱え、一度 Bankrapt になりますが、Nigel Rudd 卿を議長に、投資家 Scott Murdoch を含む9人のメンバーの有志たちによって再生されました。

* Loch Lomond GC。スコットランド突然登場したアメリカンタイプのモダンコース。

TOP 51 – 75 コース

51. Addington England

52. Formby England

53. County Sligo Ireland

54. Enniscrone(Dunes) Ireland

55. Royal North Devon England

56. The Island Ireland

57. Nairn(Championship) Scotland

58. Burnham & Berrow(Championship) England

59. Saunton(East) England

60. The Berkshire(Red) England

61. Pennard Wales

62. St.Andrews(New) Scotland

63. Brora Scotland

64. Trump International GL Doonbeg Ireland

65. Tralee Ireland

66. Carne(Wild Atlantic) Ireland

67. Huntercombe England

68. Adare Manor Ireland

69. Royal Ashdown Forest England

70. Southport & Ainsdale England

71. Hillside England

72. Stoneham England

73. Portstewart(Strand) N.Ireland

74. Wentworth(West) England

75. Hunt Stanton England

51 ~ 75位では1984年開設の Tralee、95年の Adare Manor、 2002年開設の Doonbeg 以外はどれもリンクスマニア達からの票を集めそうな名門及び隠れた宝石リンクスが名を連ねています。

74位にロンドン近郊の Wentworth West Course がランクされていますが、1922年クラブ設立、ヒースランド地帯における Harry Colt の名作と称えられ、青木 功が勝利した世界マッチプレーの会場でもあります。85年に世界 100コースランキングがスタートした時から、イングランドでは Sunningdale、Woodhall Spa と並んで常にランクアップされるヒースランドの名コースでした。

それが2007年を最後にTOP 100から姿を消します。その主な原因はクラブ側が国際トーナメントを意識するが為に、95年辺りからプレーにアンフェアを生むとの理由で始められた美しいヒースの伐採でした。トドメは2004年ファッション界の起業家 Richard Caring により買収された後、それを機にクラブ側は Wentworth に別荘を構える Ernie Els の設計チームにコースの改造を依頼、ヒースランド地帯に似合わない人工的クリークが流れるなど、ウェストコースは Harry Colt のテイストを100%失いました。このウェントワースの敷地には現在3つの18ホールコースと9ホールのPAR3コース、そして別荘地 Wentworth Estate がコースの周りに点在しています。2014年には Red Bull の開発者 Dr. Chanchai 率いる北京の Reignwood Investments に£ 13,500万ポンドで売却されました。

新しいオーナーによる年会費の吊り上げなど地元の有識者メンバーたちとの様々なトラブルが言い伝えられていますが、現在はトーナメント以外の情報はメディアに流れてきません。従ってここを訪問するパネリスト達も少人数なのかと思います。

アイルランドでは敷地内にゴルフコースを所有する城館も多くあります。最近では18世紀の城館 Adare Manor がそれで、1995年に R. T. Jones Sr. によって18ホールが設計されました。その後、城館はアイルランドの起業家で馬主としても知られる J. P. McManus に売却され、2016年に£ 3000万ポンドの総予算を持って城館の客室からコースに至るまでの施設を全て大幅に改良しました。コースは同じアイルランドの Waterville のリノベーションで成功を収めた名匠 Tom Fazio に依頼しました。2026年の Ryder Cup はここで開催されます。

* Wentworth West Course かつて世界TOP100の常連だった頃のヒースランドテイストの光景。

* Brora GC ハイランドの牧歌的リンクス

* County Sligo 1920年の改造では主に C. H. Alison が出掛けた。

* Stoneham GC Willie Park Jr 設計の隠れた名コース

* Adare Manor 18世紀の城館の広大な敷地は 2026年には Ryder Cup 会場となる。

TOP 76 – 100コース

76. Hankley Common England

77. Renaissance Club Scotland

78. Broadstone England

79. The European Club Ireland

80. The Golf House Club(Elie) Scotland

81. Walton Heath(New) England

82. Aberdovey Wales

83. Old Head Ireland

84. Royal St. David’s Wales

85. The Berkshire(Blue) England

86. New Zealand England

87. Machrie Scotland

88. Rosapenna(Sandy Hills) Ireland

89. Moortown England

90. Machrihanish Dunes Scotland

91. Skibo Castle(Carnegie) Scotland

92. Worplesdon England

93. Dumbarnie Links Scotland

94. Cleeve Cloud England

95. Liphook England

96. Delamere Forest England

97. Fraserburgh Scotland

98. Prince’s England

99. Ballyliffin(Old) Ireland

100. Littlestone(Championship) England

この76 ~ 100位のランキングで注目して頂きたいのは79位の European Club、 83位の Old Head Golf Links です。

どちらもアイルランドで1990年以降に開設された作品ですが、European Club は2003~17年,  Old Head は1999年にそれぞれ世界TOP 100コースに選出されています。

80 ~ 90年代、アイルランドでは環境保全の為、新設コースが誕生する条件にはなかった事から、どちらのコースも注目度は高いものでした。Old Head は灯台と廃墟の城がある220エーカーの岬にレイアウトされた眺望の素晴らしいロケーションにあるコースです。しかしリンクスとは言え、海に突き出た岬ですから岩盤層が強くけして高低差のある砂丘地帯と呼べるものではありません。造成にも厳しい条件が付けられていたと想像します。18ホールのルーティング、戦略性に単調な部分が感じられたパネリストも多くいたはずです。その結果が99年度以降、TOP 100には名前を出しておりません。岩層の土壌の条件から高低差のあまりない川奈と Old Head を表現された方もいました。

European Club は1992年に開設されたクラブですが、TOP 100入りするまで10年以上の歳月を要しているクラブです。これまで多くのアイリッシュリンクスコースのリノベーションをされてきたアイルランド人設計家 Pat Ruddy の作品ですが、開設当初は Ballybunion や Lahinch、Portmarnock 等、名門アイリッシュリンクスと比較され、マイナスポイントから取り上げられていた事でしょう。それを補ったのはヨーロヒアンツアーなどトッププロのトーナメント開催だったでしょう。彼らのプレーによってコースの側面を発見された方も多くいたはず。そして度重なる改修の繰り返しでコースは2003年に見事世界TOP 100入りを果たしました。再びTOP 100への復活を期待したいものです。

* European Club(1992) Ireland

* Old Head Golf Links(1999) Ireland

海外旅行も徐々にですがスタートしています。すでにキャディバックを持ったゴルファーたちが空港にもちらちらと見え始めてきました。

このコースランキング、皆様の旅の計画の参考資料にされて下さい。

Text by Masa Nishijima

Photo by Masa Nishijima, Larry Lambrecht, Brian Morgan, GOLF.com,

The European Club , Old Head Golf Links, Adare Manor, RGD,

Askernish, St.Enodoc, Ardfin Estate, Society of Golf Historian.