今回はContour、欧米ではコントゥーアに近い発音ですが日本ではコンターと読まれています。

欧米のトーナメントでプレーヤー達がキャディとグリーン上でラインを読むシーンの時、「Contourが右グリーンサイドのマウンドから流れている・・」等、彼らの会話を集音マイクが拾うことがあります。

では彼らが言うContourとは何を意味する用語なのでしょうか。

専門的には地形(Topography)の輪郭が描く等高線のことを指します。

上の図のような輪郭が入った土地の図面をご覧になられた方も多いかと思います。

これがゴルフコースの設計になると下の図のように、その土地の等高線に沿って18ホールのルーティングが描かれ、ホールレイアウトが形成されます。

この図はTom Doakの処女作であったHigh Pointe GCのレイアウト図ですが、自然の等高線、所謂Contour Lineがフェアウェイ、及びグリーンの配置箇所にも見られます。

自然のランドスケープを生かした素晴らしい作品とは、このラインをどれだけ活かし、設計に取り入れているかにあります。例えばグリーンですが、最初の見出しページの写真を再度ご覧下さい。

グリーンのセンターに縦の起伏があります。よく見るとその起伏のラインはグリーン手前から右傾斜方面に流れているのがわかります。つまりこれが自然のContourを活かしたグリーンの設計手法なのです。

プロたちがキャディとグリーン上で語るContourとはこの起伏の事で、グリーンに人工的に引かれたアンジュレーションの輪郭とは違うのです。従って彼らが指すグリーン上のContourとは何本も存在するわけではありません。 次に下の写真をご覧下さい。

オランダでHarry Coltと日本でもお馴染みのC.H.Alisonが1936年に全面改造したKoninklijke Haagsche G&CC (Royal Hague)の10番ホールです。

フェアウェイは波がうねるかのようにUp and Downを繰り返しています。建設当時まだブルドーザーなど重機が入らなかった時代、フェアウェイはフラットに整地出来ず、ホールによってはこのような波打ったフェアウェイは当たり前に存在していました。つまり自然のContourで、横に何本もの輪郭のラインが高さを変えながらグリーンへと繋がっています。

グリーンにも横のContour lineが起伏として存在し、それがグリーンフロントに厳しい傾斜をつけているのがこの写真からもおわかりになるでしょう。

その起伏の先はダウンスロープとなって後方に向かい、奥の高い位置からのスロープと後部で交わっていることが視界だけでも想像はできます。
わかりますか??

次に紹介するのはフランスのGolf de St. Germainの7番PAR3です。

1922年、やはりHarry ColtとC.H.Alisonによって設計された作品で、スケールは小さいながらも8つのColtのモデルグリーンが存在している名門です。

ここもホールを何本かのContourが横切っているのがわかります。一つは手前のバンカーを造成した箇所の起伏と、もう一つはグリーンコンプレックスを形成している箇所です。

Coltはその輪郭の高さを活用し、バンカーとグリーンを配置しました。砲台状に見えるグリーンは盛土をしているでしょうが右サイドを見れば高い起伏が横のラインで存在し、それを生かして設計造成されていた事がわかります。

このようなクラシック時代の作品は当時はまだ大まかだった等高線が入った地形図から現場で起伏や歪みを探し出しレイアウトに活かしていったのです。
この時代の作品のバンカーやグリーンが自然の地形に溶け込んで見えるのはそれが一つの理由でもあります。

次に全英オープン特集でもご紹介したRoyal St.George’sを見てみましょう。

リンクスにおけるContourが作り出した砂丘の起伏です。

リンクスにおける起伏は海に向かい波と同じように連なっています。けして海に対し縦のラインが何本も連なる事はないでしょう。リンクスコースの地形図を見ると等高線の存在はユニークです。

輪郭上に高さを変えながらも本線は海に向かい横一線に連なっています。
下の図はコーストラインにレイアウトされたRoyal St. George’sの13番PAR4です。よく見ると何本もの起伏が海に対し平行に連なっているのがわかります。

まずフェアウェイをご覧ください。

グリーンに向かって太い起伏が存在しています。海に対し平行であっても、プレールートからは縦の起伏ラインになります。同様にグリーンにもそのラインが二本存在しています。アプローチ側からは縦の起伏ラインが左右に見られることになります。

プロたちはこのグリーン上の二つの起伏に対しても右のContour、左のContourと呼び、プロたちが最も注意を払う縦のContour Lineの攻め方を読み、そこからアンジュレーションの数値に従ってターゲットに攻めていくでしょう。

例えば間違って起伏の外側に打球が行けばグリーンから外に転がり落ちていく危険もあるわけです。

まさにフェアウェイからグリーンまで自然の砂丘の流れを活かした設計であることがこの図からもわかります。

上の地形図は同じくRoyal St.George’sでアプローチからコーストラインに沿ってレイアウトされた5番PAR4です。

ティショットはフェアウェイを横切る巨大な砂丘に向かって打っていきますが、砂丘の起伏ラインが海に平行しているのがお分かりになるでしょう。従ってこのグリーンもアプローチからは縦の起伏ラインがグリーンのアンジュレーションを形成しています。

下の図は中国海南島で、Tom DoakとNicklaus設計チームとの36ホール計画にあったMulan Bay Golf Resortの等高線の入った図面です。しかしこの計画は習近平の対ゴルフ場政策のもと開発許可は下りず中止となりました。

 

アリスター・マッケンジーの発想。

上の写真は北イングランド、1913年リーズ市の南50kmほどのシェフィルード市郊外に完成されたAlister Mackenzieの初期の作品であるSitwell Park GCです。

この二つのホールはアップスロープの傾斜を活用し、そこにグランドレベルグリーンを貼り付けたようにするMackenzieならではの設計手法です。

バンカーの造成で掘削して出た土を壁に使い、その高さからのスロープをグリーン面に存在する自然のContour lineと結びつけ起伏を造ります。この起伏によってダウンスロープにおけるパッティングで球を止める効果が生まれます。

つまりこの起伏がなければ球は傾斜でグリーンの外へと転がってしまうでしょう。Mackenzieはその傾斜角に応じて起伏の高さを調整していたことがこの写真からもお分かりになるでしょう。

Mackenzieのこの手法は砂丘の起伏が創り上げたSt.Andrews Oldコースのグリーンを自分の手で設計してみたい想いから発案されたもので、内陸の土地ではリンクスの固い土壌でないことから球の転がりが楽しめず、そこでこの写真のグリーンのようにスロープを活用することを思いついたのです。

これをスローピンググリーンと呼びます。

彼のこのアイデアは高低差55メートルもあるオーガスタナショナルの大地に遭遇した時、更に進化していくものとなります。

次回はMackenzieのそのスローピンググリーンにおけるContourと起伏の関係から現代のモダングリーンにおけるマッピングに至るまで詳しく解説したいと思います。

Text by Masa Nishijima

Photo & Map by Ron Farris, Frank Pont, Masa Nishijima, Renaissance Golf Design, Royal St. George’s GC, SAGCA