グリーンのサイズは、一体どの程度がゴルフコースに相応しいのか。ショットバリュー(ショットの価値)を高めるには、もちろん小さくなくてはならない等、専門家からは様々な意見が飛び交う。日本では一般的にその大きさは2グリーンの場合、450平米前後、1グリーンの場合は650~700平米と言われている。中には無駄とも思える程の大きなグリーンを持つコースもあるが、1グリーンの場合、管理上芝へのダメージを考慮してか、欧米に比べ、大きめに造られているケースが多い。しかしグリーンの大きさにはそのアプローチの距離から図る一様の定義がある。これは現在のツアープロを対象にしたものではありませんが、まず1ショットホールとしてアプローチの基本となるパー3から解説します。ミドルアイアン以下の距離にあるホールのグリーンは小さい方が望ましい。またショットの価値を持たせるならば、周辺には厳しいハザードを設ける事も一案でしょう。ここではまず方向性よりもその距離を正確に打たせるというコンセプトから横長グリーンの形状なども考えられる。またミドル以上180ヤード以上の距離にあるホールには、その地形に合わせ多種にわたるグリーンの形状が必要になる。当然ミドル以下のグリーンより大きめのサイズが望ましく、ロングアイアンかそれ以上の距離がある場合は、方向性と距離を重視し、更にある程度の打球のランを考慮した縦長グリーン等のアイデアもその地形によっては必要でしょう。方向性も良く完璧なショットを打ったが、そのランによってグリーン奥へ零れてしまっては、それがショットの価値観を高めるホールとは必ずしも言い切れません。やはりグリーン面をある程度受け状にしてまずは方向性の正しい打球に対しての様々なアイデアが成されなくてはならないはずです

このパー3における理論をもとに、パー4,パー5のホールもそのアプローチからの距離によって、グリーンの大きさ、形状、周辺のハザードを考えて見る必要があります。

長いパー4と短いパー4で、アプローチショットに同じ価値観を求めるならば、短い方のグリーンは小さくあるべきで、またパー5ならば、2オンも可能な距離にあるホールとて、あくまで3打でパーオンというパー5の基本を守らねばならないはずです。つまり3打目の短いアプローチを想定した小さなグリーンが他のパー5と同じショットの価値観を生むものとなります。それで2オンに成功した時、それこそがスーパーショットと呼ぶに相応しいのです。

左 ドナルド・ロス 右 ロバート・トレント・ジョーンズSr

左 ドナルド・ロス 右 ロバート・トレント・ジョーンズS

 

 

モダン設計におけるグリーンのサイズ。

 

戦後、重機が活用され造られるモダンコース時代において、用具の進化と共に、ロバート・トレント・ジョーンズSr(1906-2000)は、アプローチにおける距離によって、そのショットバリュー(ショットの価値)をグリーンサイズの定義として設けた設計界の巨匠でした。

ロバート・トレント・ジョーンズSrの距離と形状の設計定義

  1. 距離の短い場合、グリーンは小さく、ピンデッドに価値を持たす。

 無題1

Pete Dye設計のTPCソウグラスのアイランドグリーンは、137ヤードの短い距離ながらグリーンのサイズは島全体でも450平米に満たない。 Photo by Larry Lambrecht.

Pete Dye設計のTPCソウグラスのアイランドグリーンは、137ヤードの短い距離ながらグリーンのサイズは島全体でも450平米に満たない。 Photo by Larry Lambrecht.

  1. 中間の距離にある場合、ショットに対し、グリーンへの方向性を重視する。


無題3

 

  1. ロングな距離にある場合、方向性以上に距離出すことを重視した。

ウッド又はロングアイアンでスピンがかけられないことからグリーンは縦長に設定される。

 無題2

 

ロングパー3の極め付け、ビアリッツグリーン。縦長の中央に大きなスウェールの歪みを持つ。

ロングパー3の極め付け、ビアリッツグリーン。縦長の中央に大きなスウェールの歪みを持つ。

 

前項で述べたように、これらはパー3における距離への設計定義として、パー4やパー5のホールにおいてもアプローチの距離によって活用されるようになります。

ジョーンズSrのこの理論は、グリーン面が整地、アプローチエリアが整地された条件の中から計られた理論であり、ぺブルビーチの小さなグリーンを例にして、とのホールもグリーンが小さければアプローチへのショットバリューは高くなるという理論とは異なるものです。ちなみにジャック・ニクラウスは、ペブルビーチのスモールグリーンこそ、ショットの価値を表現出来るフェアなサイズはないと述べます。

 

ペブルビーチ 9番  Photo credit by Larry Lambrecht.

ペブルビーチ 9番  Photo credit by Larry Lambrecht.

 

しかし90年代に入るとグリーン面へのショットバリューというのは決してサイズではなく、グリーンの形状、コンター&アンジュレーションによって、ショットの価値は大きく変化すると唱える専門家たちが多く登場し、そこにクラシック理論への回帰が唱えられるようになったのです。

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 Text by Masa Nishijima