No.29 「ショート」ホールのクラシック理論
本場リンクスの攻略理論から米国クラシック設計理論を定義したC.B.マクドナルド。その理論の中に「ショート」の名称を持つ設計理論があります。
日本でショートホールと言えばすべてのパー3に使われています。しかし著「ゴルフコース好奇心」でも解説させて頂きましたように、英米ではロングのパー3,ショートのパー3などその距離や特徴を示すのが正しいとされています。ではマクドナルドの「ショート」ホールのクラシック理論を説明しましょう。
そのオリジナルは英国のロイヤルウェストノーフォークGCの4番(旧5番)にあり、130ヤードに満たないレングスです。マクドナルドは、距離は短いが厳しいハザードで囲まれ、正しい飛距離と方向性を必要とするこのホールの特徴に感銘を受け、後にシカゴGC、ナショナルゴルフリンクスなど自らの作品の中で距離が最も短いホールを「ショート」と名称し、グリーンはグランドレベルより1.5mほど高く盛土し、周りをバンカー群で囲みました。
最大の特徴はたとえグリーンを捉えても起伏によって3パットも有りえる形状をその定義としたことです。ただ距離が短いからサービスホールというのではなく、ショットの精度をグリーン面で表したのです。マクドナルドはその理論の中で、グリーンの大きさは1千平米の広さを持っても良いとしています。
戦後になり、この「ショート」の理論を復活させた設計家が皆様もよくご存じのピート・ダイです。彼は自らのコースにマクドナルドの「ショート」の理論を設けました。そしてそれは後に、TPCソウグラスの17番でも有名なリカバリーの効かないオールオアナッシングのアイランドグリーンへと進化していきます。
現代のコース設計界の巨匠トム・ドォークはマクドナルドの理論を集約させたオールドマクドナルドGLの5番に「ショート」の正しい理論を伝えました。グリーンの面積は何と2千平米近くにもなる広大なものですが、ひとつ間違えると3パットの危険が絡む起伏に富んだグリーンです。
Text by Masa Nishijima
Photo by Larry Lambrecht