ベトナム不動産市場の最大手といえば、ダナン市の海岸線を一躍アジアの高級リゾートに変えたビングループが有名だが、ハノイに本社を置き、中間層をターゲットに不動産、アドバタイジング、ビジネスコンサルティング、資源開発、運輸、ホテルなど、10以上もの事業を多角的に運営するFLCグループが、遂にゴルフリゾート事業に乗り出した。しかも向こう7~8年の間に、ベトナムの海岸線の広大な砂丘地帯に、20ものゴルフコースを建設する計画で、すでに二つのコースは完成、更に二つのコースが造成中にある。完成されているタインホワ市郊外のSam Son(サムソン)とベトナム中部の都市Quy Nhon(クイニョン)のコースは、ベトナムではハノイのレジェンドヒルに続く、ニクラウスデザインチームの作品で、サムソンは今年の2月、クイニョンは今年11月にグランドオープニングを迎える。砂質豊かなその土地の素材から、どちらも工期は14ヶ月で完成に至っている。写真をご覧になればお分かりのように、そこがベトナムであるとは想像もできないリンクスランドです。

 

現在造成中の二つのコースは、一つはニクラウスに続く、クイニョンの第二コース(マウンティンコース)で、もう一つが何と世界遺産でも知られるハロン湾を眺望する丘の上に建設中である。どちらもブライン・カーリー(Brian Curley)の設計で、彼は中国のミッションヒルズの開発で、22コースもの設計及び造成を担当し、世界遺産の奇岩地帯シーリン(石林)の中に、54ホールのコースを設計したことでも有名だ。中国だけでその作品の数は44にも及び、その数の多さから中国のドナルド・ロス(Donald Ross 米国設計界の巨匠1872-1948)とも称される人物だ。
現在、中国では政府の方針で、新設のゴルフ場開発は全面ストップである。それどころか、農地を利用して造られたコースは撤去、又は運営中止に追い込まれている。ニクラウスの北京での作品の一つがその犠牲になっている。
これらの事から、中国や韓国で活躍した米国、オースラリアの設計家たちが、挙って、ベトナムに押し寄せている。ベトナムはゴルフ場の建設ラッシュに沸いている。その政治的背景から、戦前に作られたコースは、わずかに一つ、最期の皇帝バオダイが海外からのゲストを迎え入れるために造ったダラットパレスGC(旧Ville de Dallat)がそれで、以降、ベトナム戦争が終わり、1980年代後半に入るまでは一つのコースも造られてこなかった。現在42コースが誕生しているが、その大半は2000年以降に誕生した作品である。5年後にはその数は100を超えるだろうと予想される。

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MASA NISHIJIMA

ゴルフコースコメンテーター&コースアドバイザー。東京生まれ。
明治大学卒業後、米国留学。
ドン・ロッシーの元でゴルフコースのクラシック理論を学ぶ。
現在まで世界56カ国2300コース以上を視察。
1989年より、米ゴルフマガジン誌世界トップ100コース選考委員会に所属。
1991年から2015年までは同委員会の国際委員長を務める。
「ゴルフコース好奇心」,「ゴルフコース博物誌」「The Confidential Guide 」などの著書もある