By MASA NISHIJIMA

さて、「GOLF Atmosphere」シリーズも、ここからゴルフコースについて、専門的分野に入っていきたいと考えます。皆様方の中には、解説の意味がよく解らないとおっしゃられる方は当然おられるでしょうが、ご自身がこれまで学ばれただろう「日本のゴルフコースの常識」を、一度白紙に戻し、私の解説に耳を傾けて頂ければ幸いです。そして解説の舞台たるコースを想像して見てください。今回の舞台を、皆様たちの東京クラシックに置き換えて、聴いて頂いても結構です。

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12674687_1000337883384376_978286913_nゴルフコースを評価する項目にランドスケープがあります。訳せば、景観性造園学となりますが、ゴルフコースの場合は、自然の等高線をどれだけ残し、設計上、ホールのレイアウト、ルーティング(全体のホールの流れ方)に活かしているかが重要なポイントであり、これがコースの骨骼となります。骨骼、つまりそれはコース全体のフレームでありますが、その一つ一つを見た場合、無理に戦略性を計ろうとすれば、ランドスケープを粗雑に扱ってしまうケースも生まれ、そのスケールポイントのズレを修正する為の策は当然必要となってきます。コースは縦のスケールはいくらでも出せますが、問題は横のスケール幅にどれだけ自然のスロープが残されているかが重要です。

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そしてご自身がカメラマンになったつもりで想像してみて下さい。視界からその両サイドのフレーム枠がどのようになっているのか、例えばそれが樹木帯なのか、リンクスであれば砂丘のマウンドなのか、ヒースランド地帯ならば、地面を這うように伸びるヘザーなのか、ランドスケープを整えるためにも、被写体へのその美観性を追求する必要があるはずです。

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bandontrail1欧米のコースでは、よく木柵を見かけます。例えば他人の用地との境界線にホールが接している場合、木柵でそれを表し、その柵の後ろに、目立たぬようOB杭を打っている例もあります。同じ用地であってもそこが谷間など、危険地帯である場合にも、木柵はさりげなく活用されます。又、ティーインググランドに上がるルートで、管理上、踏みつけられたくない箇所がある場合、木柵でルートを定めることはよく行なわれています。最近の新設コースでは流木を活用した木柵が流行っています。スーパーインテンデントたちのそのセンスの素晴らしさにはただ驚かされます。

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しかしこの木柵、日本ではあまり活用されていません。あっても木は腐るからと疑木が精一杯のようです。しかし疑木ほど近くに寄って、人の心をがっかりとさせるものはありません。ゴルフコースには必要のないアクセサリーです。

今回はヤーデージでも横幅のスケールと自然のランドスケープとの融合性についてお話し致しました。今後、東京クラシックのどこに木柵が必要とされるかを皆さんたちもお考えになってみて下さい。

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Photo Credit by Steve Carr, Masa Nishijima, Yuji Nakamura,etc


masa-nishijima-photo-by-brian-morgan_sq-320x320MASA NISHIJIMA

ゴルフコースコメンテーター&コースアドバイザー。東京生まれ。
明治大学卒業後、米国留学。
ドン・ロッシーの元でゴルフコースのクラシック理論を学ぶ。
現在まで世界56カ国2300コース以上を視察。
1989年より、米ゴルフマガジン誌世界トップ100コース選考委員会に所属。
1991年から2015年までは同委員会の国際委員長を務める。
「ゴルフコース好奇心」,「ゴルフコース博物誌」「The Confidential Guide 」などの著書もある