*Turnberry (Ailsa)

 

リーマンショックが起こった2008年から約2年の間、米国では1,000近くものゴルフコースが倒産及び閉鎖に追い込まれました。しかし経済の立ち直りの兆しが見え始めた2011年辺りからメジャートーナメントを控える名門ゴルフクラブのリノベーションやレストレーション(オリジナルへの復元作業)をキッカケに、また新設コースの建設ラッシュが始まります。丁度その頃、米国の富裕層たちの間ではゴルフの聖地への「リンクス巡礼の旅」がブームとなり、ゴルフマガジン誌やダイジェスト誌などメディアが情報としてアナウンスするゴルフコースランキングが大きく注目されるようになります。それらは名コースをプレーし、その旅の情報をSNSに投稿し共有するのがトレンドとなっていきます。

イギリス・アイルランド及び欧州大陸の名門クラブは米国とは違い、メンバーコースであっても大半のクラブが一般に開放している事から、所属クラブと自身のHCを証明すれば、ビジターとして受け付けてくれます。

英国もパンデミックで一時はプレーのすべてがストップし、閉鎖に追い込まれたクラブもありましたが、それ以降は景気の回復と共に、海外からのインバウンドゴルファーの需要の伸びで潤い続けるゴルフクラブも少なくありません。

物価及び人件費の高騰から、10年以上前から兆候があったグリーンフィのアップ率はパンデミック以降、インフレ上昇率(2.8%)を遥かに超えるもので、トップ100コースレベルに限り、グリーンフィーの上昇率はその4倍を示しています。

それはクラブメンバーの年会費が僅か数%の値上げに対し、ビジターのグリーンフィは大半のクラブが10%近くの高騰を示しています。

ちなみに2025年度のデータでは、英国のトップ100コースの平均グリーンフィーは£237で、前年に比べて平均で10.7%増加しました。これはこのクラスに限って見てもこれまでで最大の増加率です。

2021年 £161

2022年 £174

2023年 £200

2024年 £214

2025年 £237

 

ランキング上位25コースの平均は£352ポンドで、前年の£318ポンドから何と£34ポンドも増加したことになります。

元々英国アイルランドのゴルフクラブはビジターからの収益が運営費に大きく影響していました。実際、それらの収益でゴルフクラブに新しい施設を設け、市内でのタウンミーティングの経費に振り当てているクラブもあるようです。更にメンバーからティタイムの割り当てがビジター優先になり過ぎているとのクレームが出れば、グリーンフィを更に上げ、ビジター数の割合を減らしても同じ収益を確保するクラブも出てきます。ユニークなのは自国のTOP100コースにありながら海外からはさほど注目されていないクラブでも、メンバーたちから「他のクラブのグリーンフィがこれだけ高騰しているのだから、我々も同等に上げ、クラブの歴史、誇りを保つべき」との意見が出て、便乗値上げされているゴルフクラブもあるようです。

例えば、The Openも開催される北アイルランド名門Royal Portrushの近郊に位置するPortstewart GCの今年のハイシーズンのグリーンフィは£345ポンドで、Portrushとは僅か75ポンドの差でしかありません。またその隣のCastle Rock2024年の£160ポンドから昨年度£270ポンドに跳ね上がり、69%も増加しました。ちなみにこの周辺のゴルフコースのハイシーズンの料金は昨年で平均£225ポンドで、40%の上昇を示しています。ちなみにPortstewartCastle RockTOP100コースのリストに名前はありません。

これらのメンバーコースは、世界中のゴルファーが訪れる名リンクスとは違い、インバウンドゴルファーの需要が少なからず多いとは言えませんから、コースメインテナンスには多額の予算は注ぎ込めず、従来からの自然の恵みに委ねる英国ゴルフコースの管理手法を取っているコースも少なくありません。

 

トランプが所有する基本的に運営理念がパブリックリゾートにあるクラブのグリーンフィは、世界の富裕層だけをターゲットにした金額を提示しているようです。

下の表をご覧下さい。例えばトランプが2014年に買収したスコットランドの超名門コース、Turnberry (Ailsa)はなんと£1,000ポンド(宿泊しない場合)の超高額なグリーンフィです。これは現在の為替レート、£1=$1.33に当てはめるとラスベガスのMGM Shadow Creek$1,250ドルを超えて、世界一高額なグリーンフィとなっています。

更にランキング#25位のTrump International(Old)£595ポンド、アイルランドのDoonbeg£550ポンドとなっており、コースランキングNo.1の北アイルランドのRoyal County Down£450ポンドを遥かに上回っています。

 

*Adare Manor    Photo credit by Larry Lambrecht

 

トランプの所有ではありませんが、新設されたパブリックリゾートでは、2027年アイルランドでは初のライダーカップが開催されるAdare Manor£550ポンドの高額グリーンフィを提示しており、宿泊は18世紀のマーナーハウスを改装したもので、米国からのセレブ達で賑わっているようです。ちなみに下記のTOP100ランキング表のコースをすべてプレーするならば、グリーンフィだけで£27,000ポンド以上の予算が必要になります。現在の為替レートで換算すると530万円以上となります。

 

 

それでは次回は、米国のグリーンフィの高騰について詳しく解説したいと思います。

 

 

 

Text by Masa Nishijima

Photo credit by Larry Lambrecht, Golf.com, Golf Course Architecture, UK Golf.