連載 GOLF Atmosphere No.127 / Greatest Golf Courses or Prestigious Clubs (名コース or名門クラブ )

*Yelverton GC Plymouth, Devon England
今回は名コースと名門クラブについて、どういうコース、クラブがそれに相応しいかを検証していきたいと思います。
会員権やイベントの広告に名門ゴルフクラブでプレーなどのキャッチフレーズがよく登場しますが、では名門ゴルフクラブとはどのレベルを指してそれといえるのでしょうか。
1.クラブ設立からの長い歴史を誇る。
2.ゴルフコースが日本でトップクラスに評価され、ナショナルオープンなどの開催コースとしても知られる。
3.会員数が限定され、会員になる為の仕切りが高い。
一般的にはこれら3つの要素を兼ね備えたゴルフクラブが名門ゴルフクラブと呼ばれるに相応しいとされていますが、これらの広告に登場するゴルフ場は名門と呼ぶに相応しいと言えるでしょうか。
例えば会員数が18ホールに対し、欧米では限界とされる800人を遥かに超え、1,000人以上いるクラブを果たして名門と呼べるでしょうか。それらはあくまでプライベートクラブの域であって、名門と呼ぶにはやや疑問に感じます。
メンバーの質も重要です。欧米ではクラブ支配人、コース管理責任者(ヘッドグリーンキーパー)、ヘッドプロに対し、一定のリスペクトを持つことがメンバーの常識とされています。メンバーが彼らに対し、パワハラ、カスハラ的な言動を起こした場合、そのメンバーがクラブから除外、脱会させられるケースは時々耳にもします。
次にゴルフコースについて、名コースと名門コースも識別する必要があるかと思います。例えば名コースとは世界のトップレベルに評価されるコース、それは戦前からの歴史に刻まれたコースもあるでしょうし、ごく最近に完成された新設コースにも当てはまる作品があるはずです。
では名門コースはどうでしょうか? 名門と敬意される以上、クラブは古い歴史を持ち続け、その中でゴルフコースがコース見識者たちによって育まれていったものならば名門コースと呼べるはずです。しかしその歴史の中で、一部のクラブ役員たちの判断で、コースがオリジナルから大きく様変わりし、デザイン性、メインテナンスなど総合的に評価を落としてしまった場合、そのコースを名門コースと呼ぶに相応しいかはやや疑問に感じます。それだけメンバーがコースに深く意見を述べるならば、それに対応できるだけのコース見識者、クラブ史家の継承はクラブにとって大変重要な事項となります。欧米の名門がコースの修復、オリジナル設計への回帰を唱え、そのプロジェクトに成功した例には、それを担当したコース設計家の才能だけでなく、クラブに設計家と向かい合えるコース見識者とクラブ史家の存在があります。
日本の古き名門の中にコース改造、リノベーションで評価を大きく下げたクラブも幾つかお見受けしましたが、そこにコース見識者やクラブ史家の存在はいたでしょうか? また彼らがいたとしてもその知識の価値をしっかりと活用されていたでしょうか。
名門クラブだが、名門コースと言えるかな??の辛口評価を受けてしまう結果ともなりかねません。
言い換えれば、歴史は浅いがコースをクラシック設計の定義をベースにその時代のトレンドに合わせたデザイン性に進化させていけるならば、まだ名門クラブになるには年月が達していないが、名コースから名門コースへの仲間入りはできるはずです。
ゴルフコース。リノベーションへのアイデア。
もう7~8年前になります。
著者はGDOのネット配信で向井康子女史(現 (株)クラシックMarketing & PR Manager)がMCを務めていたゴルフ専門チャンネルに講師として招かれ、名コースの条件についてお話しさせて頂いた事があります。その中でバブル期の日本のコースがどうして高く評価されないのか?について解説を致しました。
その一例として日本の山岳、丘陵地のコースで、役所からの開発許認可が降りないとゼネコン指導で土を大きく動かし、段々畑のようなテラスザホールの造成が多く造られた例があります。これらのコースは自然の等高線、つまりスロープラインを活かさず、斜面を切り土、盛り度でフラットに整地され、プレーヤービリティを謳い文句に設計されています。そしてレイアウトの大事なアクセントとなるパー3の設計が安易に扱われ、段々畑を繋ぐ高低差の縦の地形ラインに極端な打ち下ろしー3に設定されるケースもよく見かけます。下図がその段々畑のようなテラスザホールです。

これらの作品の設計コンセプトはパー72、チャンピオンシップコースのキャッチコピーに相応しいトータルヤーデージを厳守し、高低差のある地形なのにパー3を除いたホールはフラットに造成されています。

上の写真をご覧下さい。高低差30mはある打ち上げのパー4ですが、左右からの自然の地形のスロープラインがホールのランドスケープを創り出しています。これが仮にパー3であれ、パー5であれ、アップスロープに対する設計のアイデアはその土地から名コースを生み出す秘訣である事がお分かりになるでしょう。飛ばす人間だけにアドバンテージを与えるコースに名コースはありません。
トーナメントでトッププロたちを苦しめるのはただ距離が長いだけではなく、アップスロープにおけるスロープラインを活かしたこの写真のようなホールです。コース設計家たちは自然の台地を活用し、彼らにイマジネーション能力を発揮させる舞台を提供します。
オールドマンパーの哲学を持ったホールに名コースが持つゴルフのAtmosphereを感じませんか? コースのリノベーションにはそのようなアイデアも大事です。
US GOLF Digest 国別コースランキングを発表。
戦後、ファストグリーンの開発からゴルフ場開発が急激に伸びた1960年代、ゴルフコースのランキングはゴルフダイジェスト誌が1966年に紹介したのが始まりでした。当時はまだランキングではなく、全米で最もタフなコース200選(GOLF Digest America’s 200 Toughest Courses)を紹介するもので、これが1968年まで続き、1969年にはタフさに戦略性を整えたコース100(America’s 100 most Testing Course) がアナウンスされました。1971年から1983年まで全米トップ100選コースはスタートされますが、当時はまだファースト10, セカンド20などの枠組での紹介で、1~100位までのランキングではありませんでした。ランキングになったのは1985年からで、これはライバル誌のゴルフマガジン誌が1983年に世界TOP50コースをランキングで紹介した事が影響しています。ここからゴルフコース愛好家にとって、全米TOP100コースはゴルフダイジェスト、世界TOP100コースはゴルフマガジンが一つのステータスとなります。ゴルフダイジェストが世界ランキングを始めたのは2007年からで、これはマガジンとは異なる特徴を出すために、米国のゴルフコースを除く世界TOP100コース(100 Best Courses Outside the United State)でした。
ゴルフマガジン誌は世界ランキングに続き、1991年から全米TOP100コースも紹介するようになりますが、2017年度からは世界と全米は一度にではなく、隔年度ごとにアナウンスしています。ゴルフダイジェストもグループ会社のゴルフワールドのネットワークを使い、世界TOP100コースを紹介するようになりますが、両誌の特徴はその選出されたコースからもわかります。
ゴルフマガジンはコースをTOP3,TOP10.TOP25クラスとカテゴリー別で評価し、設計的観点からややコンサバティブに捉える風潮にありますが、ゴルフダイジェストは昔からプレーヤーズサイドの目線で、伝統美、戦略性、ショットバリューなど8つの評価項目からその合計ポイントがコースの評価点となっています。更に大きな違いはパネリストの数です。ゴルフマガジンは僅か132名なのに比べ、マガジンは会員制で1,900名ものパネリストが全米を中心に世界に散りばめています。従って、ゴルフマガジンでは絶対に選ばれないだろう作品もダイジェストでは高く評価される例などがあります。
情報が雑誌からウェブの時代に移行するようになって、個々の愛好家グループがスポンサーを持ってコースランキングを発表するようになりました。
2003年、僅か25名のコース見識者たちが集まり、英国から発信されたTOP100 Golf Courses of the Worldはそのアクセス数の多さから、マガジン、ダイジェストに匹敵するほどの注目度、信頼度を得ています。香港を除き、ゴルフの歴史が40年足らずの中国でもゴルフコースやクラブの格付けランキングは行われるようになり、旅行社とメーカーがコラボして制作しているGolf Travel MagazineではアジアのTOP100コースを中心に名コースを紹介しています。
米国ゴルフダイジェスト誌が10月にアナウンスした日本のTOP15コース。

日本のTOP15
1.Hirono GC
2.Kawana Fuji
3.Naruo GC
4.Tokyo GC
5.Kasumigaseki CC East
6.Yokohama CC West
7.Phoenix CC
8.Tokyo Classic
9.Osaka GC
10.Kasumigaseki CC West
11.Yokohama CC East
12.Taiheiyo Club Gotemba
13.Kawaguchiko CC
14.Abiko GC
15.Narita GC
ゴルフダイジェスト誌は全米コースランキングをされても世界コースランキングをされていなかった90年代から国別トップ15コースなどを紹介されていました。
世界にディストリビューターを持つゴルフダイジェストですから、各国からの協力者も得て、コースの質だけでなく、世界でも珍しいユニークな景観性やクラブの特徴なども含み、ワールドワイドな視点から評価をされているようです。
今年10月には日本のトップ15コースがアナウンスされ、8位にTokyo Classicが登場しているのには驚きでした。
https://www.golfdigest.com/story/japan-best-golf-courses
クラブスタッフの対応、メンバー及びインターナショナルメンバーのゲスト、パネリスト達への対応、海外の名門クラブとの国際交流を図るその姿勢もこのような素晴らしい結果に繋がったのではないでしょうか。もちろん厩舎を持ち、コースの周りが乗馬トレイルになっているのも贅沢な空間を演出しています。かつてGOLF Magazineのパネリストだった男が旗をあげ立ち上げた世界の傑出されたプライベートクラブが集まるPlatinum Clubsをご紹介しましょう。
https://www.platinumclubsoftheworld.com
基本はコースがその国のトップクラスにあり、クラブ組織はその国のトップリーダーたちがメンバーとなって構成されている事などが条件とされている。従って日本が誇る世界TOP100コースの中の広野GCは入会の資格はあれど、パブリックリゾートにある川奈ホテル富士コースはその対象にはなりません。
名門とは何か?を日本のクラブに問うならば、世界のゴルフクラブ情報がグローバルネットの世界で検索される中、日本国内で名門ゴルフクラブと称されても、その名が世界に発信されなければ何の意味もない時代になろうとしています。
Tokyo Classicは開設して直ぐに米国のGOLF CLUB ATLASというコース専門サイトにまず紹介され、そして日本にディストリビューターを持つ米国の財界誌に厩舎を持つゴルフ場として紹介されました。英国発信のウェブサイトTOP100 Golf Courses of the WorldではアジアTOP100コースランキングの上位に顔を出し、世界で最もリスペクトされているコース設計家Tom Doak氏が中心となって出版されたコースアナリスト本「The Confidential Guide」にも登場しました。その後はGOLF Magazine、そして今回のGOLF Digest誌とその存在が紹介されてきました。しかしその間、日本のゴルフ雑誌に紹介されたのは片手で数える程度だったと思います。日本のゴルフメディアは日本オープンなどナショナルイベントがない限り、仕切りの高いプライベートクラブは一般との公平性を考え、ゴルフ史、ゴルフの文化的な内容でない限りは取材対象にはしない傾向にあります。ましてやそれが新設のゴルフクラブならば尚更で、一般がプレー出来ないゴルフコースを紹介しても、読者の関心は引き付けられないと考えているのでしょう。しかしそのコンサバティブな姿勢は、雑誌やウェブサイトからゴルフマーケットを創り出してきた米国とは真逆にも感じられます。Tokyo Classicからお受けしている連載の中だから述べているのではありません。日本のゴルフクラブは世界にその存在を示さなければ何の価値も生まれない時代に突入しています。言葉の表現は悪いですが、日本語の雑誌で称賛されてもそれが世界に伝わらなければ何の意味も価値もない時代に入っています。
Text by Masa Nishijima
Photo and Sketch by Masa Nishijima, Yelverton GC