No. 27 Sidesaddle
Googleで「サイドサドル」と検索すると、トップに表示された記事はなんと「サイドサドル打法」
驚きと同時に、ゴルフとの貴重な共通点?!を発見し、馬のサイドサドルをご紹介します。
「はしたない」という言葉が、まだまだ大切にされていた時代。
女性が馬の背に跨ることは「はしたない」そのもの。
移動ともなれば、女性は馬車のキャリッジに乗るのが当然のことでした。
さらに、中世ヨーロッパの女性のファッションといえば、ロングワンピース。
裾の長さを考えれば、物理的にも困難だったことでしょう。
とは言え、古今東西お転婆娘というのは必ずいるもの。
男勝りで負けず嫌い、その上、馬を手懐けてしまえば、もう誰も彼女たちの思いを止めることはできません。
特に馬が生活を支える時代が長く続いたヨーロッパでは、女性たちの騎乗熱も高まるばかり。そして、開発されたのが「跨らず」「長いスカートのまま」「騎乗できる」サイドサドルだったのです。
馬の片側に足を揃え、座ります。日本語では「腰掛ける」という表現が的確でしょうか。
通常は見えないスカートの足はこのような状態(下図)。
片側に足を揃える代わりに、反対側には少し長めのムチを持ち、馬に指示を送ります。
跨る姿勢と比較すると不安定に思えてなりませんが、このまま障害物も飛んでしまうのですから、馬術たるもの鍛錬あるのみです。
このサイドサドルが開発されたのは中世の頃。
実はそれ以前からも、絵画や彫刻などには女性が馬に腰掛ける姿が残っており、男性の後ろに女性を乗せるためのパッドや、足を乗せるお皿のような物も工夫されていたようですが、実際に女性一人が騎乗し、手綱を取り、馬を制御することまで無かったと考えられています。
その後、時代の変遷と共に、馬が生活に欠かせない存在となり、馬そのものも改良され、皮革技術も進化し、ついに女性も馬に乗る時代がやってきたのです。
そして、ヨーロッパで人気を博したサイドサドルは海を渡ります。
当時のアメリカ大陸はまさにフロンティア。意気揚々、血気盛んに開拓を進める人々にとっては、老若男女関係なし!馬に乗ってより速く、先に進むことができれば事が有利に運んだに違いありません。
また、身に着けるドレスにもスペインやメキシコなどラテン的な風合いを取り入れるなど、ヨーロッパとはまた一味違う発展を遂げ、今でもウェスタン・サイドサドル(=Western Sidesaddle)として親しまれています。
MILKY KORA
馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。