No13. World Equestrian Games
Equestrian(エクエストリアン)とは馬術。
その語源はラテン語のEquester=Horse Rider。
つまりは「馬に乗ること」を重々しく表現したのがEquestrian=馬術。
そのWorld Games=世界大会では、Gamesと複数形の通り、数あるホーススポーツの中でも確立されたルールと競技人口、そして世界的な広がりを遂げた8つの種目が実施されます。
Jumping=ジャンピング、Dressage=ドレッサージュ、Eventing=イベンティングのオリンピック3種目に加え、以前(No4.)にもご紹介したDriving=ドライビング、Vaulting=ヴォルティングと、クォーターホース(No.11)たちの檜舞台Reining=レイニング、そして160kmもの耐久戦Endurance=エンデュランス、さらにパラリンピックの正式種目であるPara-Dressage=パラ・ドレッサージュの全8種目。いずれもFEI=国際馬術連盟の公認種目であり、世界各地の予選を経て、国の代表としてこの世界大会に参戦するのです。
長く読みづらいカタカナ表記ですが、実は日本語訳が存在し、WEGは世界馬術選手権、種目はそれぞれ障害、馬場、総合、馬車、軽乗などと表現されてきました。ただ、実際にWEGを目の当たりにすると、日本と世界とでは多少の差があり、個人的にはカタカナ表記でご紹介しています。
ちなみにWEGは「ウェグ」と発音され、世界共通語です。
実はこのWEG、その歴史はまだ28年。長い歴史をお伝えしてきた馬術としては、些か意外かもしれませんが、それ以前は各種目ごとにワールドチャンピオンシップが行われていたのです。
けれども、馬術が軍事からスポーツへと移り変わり、ビジネスとしての発展が望まれるようになると、競技大会の在り方にも変革が求められるようになりました。それまでの、競技者のための大会から、複数の種目を同時に開催することで、広く支援を募り、多くの観客を受け入れ、馬術競技全体の繁栄を図る大会へ。WEG創設はその大きな柱でもありました。
1964年から1986年の22年間、FEIの会長を務めたHRH Prince Philip, Duke of Edinburgh=フィリップ殿下の下、機会を設けては何度も議論が繰り返されたWEG。ようやく日の目をみたのが殿下の娘であり、英国王室初の女性オリンピアンとなったHRH The Princess Royal=アン王女が会長職にあった1990年のことでした。
その第一回大会は、1912年に初めて馬術競技がオリンピックで実施された記念すべき土地、スウェーデン・ストックホルムで開催され、レイニングとパラ・ドレッサージュを除く6種目で初代ワールドチャンピオンが誕生しました。
その後、回を重ねる毎に参加国を増やし、2002年、第4回のスペイン・ヘレス大会での実施種目にレイニングが加わると、「ヨーロッパの馬術」にアメリカのアイデンティティが注ぎ込まれます。
また、他のスポーツに先駆け、逸早くパラリンピック種目であるパラドレッサージュを公式種目としていたFEIは、WEGでの実施を模索。2010年に史上初めてヨーロッパの地を離れ、アメリカでの開催となったケンタッキー大会で、全公式種目の8種目同時開催を実現させました。
まさに世界一の馬の祭典となったWEG。
4年毎、オリンピックの間の年に行われ、8度目となる今年の大会は9月にアメリカ・ノースカロライナで予定されています。
MILKY KORA
馬ジャーナリスト / Maraque編集長。京都生まれ。
幼い頃から馬術を嗜み、乗馬専門誌の編集を経て馬ジャーナリストとして独立。2010年に世界最高峰のホーススポーツを伝えるEquine Journal Maraqueを、さらに2014年にはより専門性の高いMaraque for Professionalを創刊。現在は日本で唯一のホーススポーツ専門誌として発行を続ける傍ら、ライダーのマネジメントや馬イベントの開催など馬に関する幅広い活動を行っている。