2020年Covid-19の渦中から屋外で感染率が低いとされたゴルフが強い支持を受け、欧州ではゴルフを始める若い層が一気に増えました。欧州の場合、メンバーズコースとて平日はビジターを迎え入れてくれるゴルフクラブも多く、また会員制度はゴルファーのHCに制限を求める古くからの名門クラブもあれば、手頃な入会金+年会費だけでメンバーになれるコースも少なくありません。パリ五輪の会場となったLe Golf Nationalは、1993年に開設されたモダンタイプのスタジアムコースで、フランスゴルフ連盟が運営に関わり、ゴルファー達のスキルアップ、ナショナルチームのホームコースにもなっているパブリックコースです。フレンチオープンの開催コースであり、2018年のライダーカップの会場にもなり、そして今年五輪の会場にもなったわけです。

パリ郊外、ベルサイユからも近いサンカンタン・アン・イブリーヌ(St.Quentin-en-Yvelines)の地の利は、ライダーカップを遥かに超える一日3万人以上のギャラリーを集める結果ともなりました。Le Golf Nationalの素晴らしい点は、一般大衆の誰もがプレーできる五輪開催コースであることです。プライベートクラブとして仕切りの高い東京大会の霞ヶ関CCやLA大会の会場予定となっているRiviera CCとの大きな違いでしょう。

ライダーカップ、五輪会場となった事からLe Golf Nationalは世界的に知られるようになりましたが、実はフランスのゴルフ史は19世紀半ばに南フランスの避寒地ポー(Pau)の街から始まり、20世紀初頭にはパリ周辺の森の大地にいくつものゴルフクラブが誕生していきます。そして当時英国人がフランスゴルフ界の礎を築いた事から、ハリー・コルト& C.Hアリソン、トム・シンプソン等、クラシックコース時代を築いた著名な英国人コース設計家が数多くの作品を残しているのです。

最初にその中からフランスを代表するゴルフクラブとして欧州大陸ナンバー1コースに君臨し続けるモルフォンテーヌGC(Golf de Morfontaine)を紹介しましょう。

 

 

 

*Golf de Morfontaine   Ile de France 設立1927年 設計Tom Simpson

 

パリの玄関口シャルルドゴール空港から僅か北にいったソンリス(Senlis)の村とジャン・ジャック・ルソーが眠るエルメノンヴィル(Ermenonville)の森に繋がる砂質豊かな大地にこのフランスが誇る名門コースはひっそりと佇んでいます。メンバーの半数が欧米のゴルフ界の重鎮たちである事から、メンバー同伴又は紹介がなければプレーは不可能な事から、フランスでは仕切りの高いTOPコースの一つとなっています。設計は才人と称されたトム・シンプソン(Tom Simpson)で、彼はパリ近郊(Ile de France県)だけでも、美しい城館で知られる観光地シャンティにあるGolf de Chantillyや皇帝ナポレオンの愛妻ジョセフィーヌが愛したフォンテーヌブロー城の庭園の先にあるGolf de Fontainebleauのオリジナル設計も手掛けました。このシンプソンの3作品は地形の素晴らしい高低差もあって、フランスのTOP5に評価されています。フォンテーヌブローは1963年にフレッドホウトリー(Fred Hawtree)によって修復拡張され、シャンティは1980年に入り、ドナルド・スティール(Donald Steel)がバンカーリングのリノベーションなどを行なっています。

 

*Golf de Chantilly  設立1909年 設計 Tom Simpson    Chantilly , Il de France

 

*Golf de Fontainebleau, 設立 1909/1920年  設計Tom Simpson  Fontainebleau, Ile de France

 

オランダからフランスそしてスペインに至るまで欧州大陸でも数多くの作品を残したハリー・コルト(Harry. S. Colt), 日本の広野や川奈の設計でもお馴染みのC.H.アリソン(Alison)とJ.F.モリソン(Morrison)の設計チームもパリ近郊だけでも2つの作品があります。一つはパリ郊外サン・クルー(Saint Cloud)にあるGolf de Saint Cloudでコーの全長はほぼ開設当時のままで現在のチャンピオンシップには相応しいとは言えませんが、谷間を巧みに活用したレイアウトはクラシック設計の美学さえ感じさせるものです。またコースからエッフェル塔が眺められる事でも有名です。

もう一つは太陽王ルイ14世が生まれた街サン・ジェルマン・アン・レイ(Saint- Germain-en-Laye)にあるGolf de Saint Germainで、コルトの設計を象徴するかのような8つのモデルグリーンがある事でも知られています。土地は高低差12メートル足らずのフラットな地形ですが、用地は線路によって二つに分割され、#1~3番をプレーすると一度踏切を渡り#4~6番をプレーし、再度踏切を渡りクラブハウス側に戻り、#7~11番をプレーした後、また踏切を渡り#12~16番ホールをプレー、また踏切を渡り、#17,18番をプレーする大変ユニークなルーティングとなっています。コース設計を学ぶ者にとって、ショートホールのミケランジェロと称されたハリー・コルトのグリーンコンプレックスの設計美学を学べる最高の教材コースとも言われています。

かつて同僚だったアリスター・マッケンジーのジブラルタルホールのアイデアを取り入れた7番とクラシックショートのバンカーリングにある11番の二つのPAR3を並列させたレイアウトはこのコースのシグネチャーホールズともなっています。

ベルサイユ郊外の雄大なブリーの丘陵地にあるGolf de la Boulie R.C.Fは1901年パリ近郊で開設された最も古いゴルフクラブで、オリジナル設計はあの名手ウィリーパークJr(Wille Park Jr)が手がけました。戦後36ホールに拡張され、後にあのロバート・トレント・ジョーンズSrがコースの改修をしました。高低差はありますが、昨今バンカーがリノベーションされ、コースは一段と輝きを増しました。このコースもお薦めしたいコースです。

ここに紹介した5つの名門コース、シャンティ、フォンテーヌブロー、サン・クルー、サン・ジェルマン、ブリーは週末以外の平日ならビジターを迎え入れてくれるクラブで、予約の際には所属クラブとHC証明書をコピーし転送する事をお勧めします。

 

   

 

 

*Golf de Saint-Cloud Saint- Cloud, Paris

 

 

*Golf de Saint Germain,  設立1922年 設計H.Colt & C.H.Alison,  Saint-Germain-en-Laye, Ile de France

 

*Golf de La Boulie R.C.F   設立1901年 オリジナル設計 Willie Park Jr/R.T.Jones Sr

 

 

 

Text by Masa Nishijima

Photo by Masa Nishijima, Frank Pont, GOLF.com,