コルシカ島(仏=コルス)は南北に183km、東西83kmに及ぶ島で、2億5千万年前に西側で隆起した花崗岩に5千万年前に東側に堆積岩が押し付けられた岩盤層の地質からなっています。島の中央には2,500メートルを超える高峰が連なり、最高峰はモンテ・ヂントで標高2,710m、地中海の島にあってスキー場が4ヶ所もあるとは意外に思われる方も多いでしょう。

コルシカの玄関口は西のアジャクシオ(Ajaccio)と 東のバスティア(Bastia)の二つの港です。アジャクシオが島の中心都市と栄えてきた理由は港がフランス側を向いているからとも言われていますが、最大の要因はナポレオン1世の生誕地でもあったからでしょう。

 

 

ボナパルト家は、北イタリアから16世紀にこの島に移住し、後に農園を始めます。ナポレオンの父カルロはジェノバからの独立運動に参加しますが、フランスが介入してくるとルイ15世側に味方し、それが理由で貴族の称号が与えられます。1768年コルシカはフランスに売却されます。そして翌年の1769年8月15日にアジャクシオのボナパルト家にナポレオンは誕生します。コルシカが生んだ英雄ナポレオンの像は街の至る所で見かける事ができます。

 

 

アジャクシオの北にある世界遺産のポルト湾は、高さ1,200mにも及ぶ赤い花崗岩の断崖絶壁が続き、切り立った崖の自然の迫力に圧倒されます。奇岩の間を走る街道など火山から流れてきた溶岩が生み出した壮大な景色が楽しめます。

 

 

 

アジャクシオからT40号線を南へ途中ターコイズブルーのビーチで知られるプロプリアーノ(Propriano)を経由して80kmほど行くとコルシカで最も美しいと称される標高330mの中世の村サルテーヌ(Sartene)に着きます。ワイン製造で有名な村です。そしてサルテーヌから更に車で30(20km)ほど南下した所に、今回ご紹介する一つめのコース、ドメーヌ・ド・ミュルトリ・ゴルフリンクス「Domaine de Murtoli Golf Links」があります。

 

*コルシカで最も美しい人口3500人の村サルテーヌ

 

 欧州大陸でも数多くの作品、及び名門コースのレストレーションで知られる名匠Kyle Phillipsがコルシカにやってきたのは2012年の事でした。岩肌の山の裾に広がる2000ヘクタールのドメーヌ・ド・ミュルトリからのリゾートコース設計の依頼でした。しかし岩層の強いヒーリーな地形の条件で、ゴルフコースに適した土地は僅かなものでした。結果、高低差27mの用地に10のグリーンを持つ通常9ホールコースをベースに、二つのグリーンをダブルグリーンとする事によってそれらは4ホールに活用でき、最大計12ホールが構成されるプランです。Kyle Phillipsはそれを第一回全英オープンが開催された当時のPrestwick GCのオリジナル12ホールからアイデアを得ました。ホールの中には前ホールのグリーンの真上を超えてフェアウェイに打っていくクロシッングルートも含まれています。週日は曜日ごとにルーティングを変えた5ルートの9ホールコース、週末が12ホールとなっています。

 

* Murtoli Linksのコースへのゲート

 

*ドライビングレンジのすぐ右にある1番ホール。コースの中で最も高台に位置する事からコーストラインが眺める。

 

リゾートはかつて羊や山羊たちが放牧され、オリーブの木々が茂る牧歌的背景の丘陵地でした。その自然を活かす為に施設は一つに纏めず、丘上のビッラから海岸線のプライベートビーチまで点在型リゾートプランで構成されています。

またコルシカの温泉施設Village de Sainte-Lucie-de-Tallanoまでもごく僅かの距離です。

 

 

 

 

 

Murtoli Golf Links5つのルートプラン

 

月曜日ルーティング

 

 

火曜日ルーティング

 

水曜、金曜日午前ルーティング

 

金曜日午後ルーティング

 

週末 12ホールルーティング

 

さてDomaine de Murtoliを後に旅のルートを東に移動すると南端の港町ボニファシオ(Bonifacio)に到着します。旧市街は石灰岩の海岸崖にまで建てられた家並みがユニークでジェノバ人によって造られた砦が街を囲んでいます。港からはそんな旧市街の驚異的な絶景を楽しむ観光船やイタリア・サルディーニャ島へのフェリーも出ています。

 

*ボニファシオの旧市街を望む

 

ボニファシオから東に7kmほど車を走らすと島の東海岸線の南端に位置するゴルフ・ド・スぺローネ(Golf de Sperone=スペロヌとも発音します)に到着します。

1990年に完成され、コーストラインの岸壁から山間へ登る高低差30mを超える丘陵地にレイアウトされたこのコースはあのロバート・トレント・ジョーンズ・シニア(Robert.T.Jones Sr 1906-2000)最期の傑作と称えられています。コルシカ島にはゴルフ場が6箇所ありますが、島では唯一の18ホールコースです。後半の12~16番ホールはコーストラインに突き出たシグネチャーホールズと評価されています。

 

 

 

 

 

 

さて今回ご紹介したコルシカ島の二つの名コースを巡る旅の纏めとして、フランス本土から航空機で入る場合、島の東の玄関口であるバスティア・ポレッタ空港(Bastia-Poretta Airport)から入り、地中海にありながら冬はスキーリゾートにもなるコルシカ島の特徴を知る上でも、コルシカ鉄道でアジャクシオに入るルートをお薦めします。東から西へコルシカの山岳地を抜ける4時間ほどの鉄道の旅は途中、76もの高架橋を渡ります。その中でも高さ94mのベッキオ橋はパリのエッフェル塔の設計で知られるギュスターブ・エッフェルの作品です。

世界中の鉄道マニア達にとっても、島の中央を2500m級の高峰が連なる中を走るコルシカ鉄道の旅は魅惑の世界へ誘うルートのようです。

 

 

 

ナポレオンの故郷アジャクシオからご紹介した今回のゴルフ旅物語。このルートを列車と車で移動し、私が推薦する2つの名コースをプレーした後にフェリーでイタリア領のサルディーニャ島へ入る旅の行程はいかがでしょうか?

コルシカ島でゴルフだけをする計画の方でも最低3泊はお考えください。ナポレオンが生まれたこの島はゴルフから寄り道したくなる誘惑のルートが山のようにあります。()

 

さて、今年も連載GOLF Atmosphereをご愛読頂きありがとうございました。

素敵なクリスマスホリディー、そして素晴らしき新年をどうぞお迎えください。

2024年度も宜しくお願い申し上げます。

 

 Text by Masa Nishijima

Photo credit by Masa Nishijima, Kyle Phillips, Explore France, Domaine de Murtoli, Golf Club de Sperone, Le Train Corse.